そのブランドのファンや関係者ならずとも、そう憤慨したくなるような日本未導入モデルは、グローバル化がこれだけ進んだ今なお、数え切れないほど存在する。
そんな、日本市場でも売れるorクルマ好きに喜ばれそうなのになぜか日本では正規販売されていないクルマの魅力を紹介し、メーカーに日本導入のラブコールを送る当企画。今回は、現代自動車の高級車ブランド・ジェネシス初のSUV「GV80」を紹介したい。
TEXT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●GENESIS
北米市場を主眼としてラインアップ拡大と技術力・ブランド価値・利益向上を図るべく、高級車専門の独立したブランドを立ち上げたのは、レクサス、インフィニティ、アキュラだけではない。それから約四半世紀後、現代自動車は2015年11月に高級車専門ブランド「ジェネシス」を発足させ、北米や本国の韓国、中東などで順次販売を開始した。
そして最上級サルーンの「G90」を皮切りに、その後「G80」、「G70」へと徐々に高級セダンのラインアップを増やしていったが、2017年4月のニューヨークオートショーに「GV80コンセプトSUV」を参考出品。この時点ですでに、将来的にSUVをジェネシスのラインアップに加える計画があることは自明の理だった。
そしてヒュンダイの高級車ブランド「ジェネシス」初のSUVとなる、後輪駆動のミドルラージSUV「GV80」が、2020年1月に韓国とアメリカでデビューする。
ジェネシス共通のデザイン言語「アスレチック・エレガンス」を初めてSUVに適用することで生まれたその内外装デザインは、かつてフォルクスワーゲングループでアウディ、シュコダ、ランボルギーニ、セアト、ベントレー各車のデザインを手掛け、2016年半ばにヒュンダイへ移籍してヒュンダイデザインセンターの責任者となった、ルク・ドンカーヴォルケ氏が開発を指揮したもの。
なお、現代自動車は2001年より日本市場に参入しているが、輸入車に対し強い個性を求める傾向が強い日本の乗用車市場では、ヒュンダイの高いコストパフォーマンスが武器にならず、参入当初より苦戦。2010年に乗用車の販売を終了したが、アフターサービスおよび大型観光バス「ユニバース」の販売は現在も継続している。
そして2020年に入り、FCV「ネッソ」を燃料電池の展示会「FC EXPO 2020」に参考出品し、DeNAとSOMPOホールディングスの合弁会社DeNA SOMPO Mobilityが運営するカーシェアリングサービス「エニカ」向けにネッソを提供。公式webサイトやtwitterアカウントも立ち上げるなど、乗用車販売の再開を示唆する動きが活発化している。
なお、これらのコミュニケーションでは、「HYUNDAI」(現代)の表記にローマ字・英語読みの「ヒュンダイ」ではなく、韓国語本来の発音に近い「ヒョンデ」を新たに用いるようになった。
つまり、乗用車の日本再上陸が秒読み段階にあるヒュンダイ改めヒョンデは、日本車が得意とするコストパフォーマンスの高さに真っ向勝負を挑むのではなく、個性的な内外装デザインと高い技術力を付加価値とする輸入車として、今後の日本市場で展開される可能性が極めて高い。となれば、高級車ブランドであるジェネシスのモデルが正規販売されることも、荒唐無稽な夢物語ではなくなってくる。
「G90」「G80」「G70」といったセダン系の車種を展開するのは、ドイツ御三家以外が壊滅状態にある現在の日本の高級セダン市場では現実的ではないが、このGV80、そして間もなく発売予定の「GV70」といったSUVであれば、一定の販売ボリュームが期待できる。ネッソの次はぜひGV80の日本導入を!
■ジェネシスGV80プレステージ(F-AWD)*北米仕様
全長×全幅×全高:4945×1975×1715mm
ホイールベース:2955mm
車両重量:2040kg
エンジン形式:V型6気筒DOHCターボ
総排気量:3470cc
最高出力:280kW(380ps)/5800rpm
最大トルク:530Nm/1300-4500rpm
トランスミッション:8速AT
サスペンション形式 前後:マルチリンク
ブレーキ 前後:ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ 前後:P265/40R22
乗車定員:5名
車両価格:7万950ドル(約740万円)