新型もスバル&トヨタの共同開発なのは同様。今回の役割分担は定かではないが、スバルのリリースでは『トヨタ自動車株式会社との業務提携で掲げる「もっといいクルマづくりの追求」の取り組みを通じて、共同開発したクルマです』と謳われている。
それでは、ボディサイズをチェックしてみよう。現行型は全長4240mm×全幅1775mm×全高1320mm。新型は全長4270mm×全幅1775mm×全高1310mm。全長がプラス30mm、全幅は同等、全高はマイナス10mmとなっている。(インチ単位でしかサイズが公開されておらず、編集部でmm単位に変換したため、多少数字に差異があるのはご了承いただきたい)
ホイールベースは現行型が2570mmなのに対して、新型は2575mmと5mmほど長くなっている。
スポーツカーに限らず、ほとんどのクルマはモデルチェンジのために肥大化する傾向があるが、BRZのサイズ拡大は最小限にとどめられている。特に嬉しいのが、全幅が広くなっていないこと。コンパクトなFRスポーツカーというBRZのアイデンティティは新型でもしっかりと守られている。
続いて、エンジンを見てみよう。現行型は、FB型をベースにボア×ストロークを86mm×86mmのスクエアに改めるなど新開発されたFA型2リットル4気筒ユニットを搭載。燃料噴射系にポート噴射と筒内噴射を使い分けるトヨタのD-4Sを組み合わさせ、最高出力200ps&最大トルク20.9kgmを達成。その後、吸排気効率の向上などによりMT車の最高出力は7ps、最大トルクは0.7kgmほど高められた。
新型は、2.4リットルの水平対向4気筒エンジンを搭載。北米ではレガシィやアセントに搭載されているFA24型ターボエンジンのNA版だと思われるが、BRZの搭載にあたっては、新たにD-4Sが組み合わされた。
新型の最高出力は228hp。北米仕様なのでhp表記となっているが、これをps表記に換算すると231ps。現行型が207psなので、24psのアップだ。最大トルクは約250Nmで、現行型の212Nm(21.6kgm)から約38Nmアップ。
注目はそれぞれの発生回転数で、最高出力の発生回転数は7000rpmで変化ないが、最大トルクに関しては現行型の6400〜6800rpmから新型は3700rpmとかなり下がっている。最高出力と最大トルクの発生回転数に差があると扱いやすいエンジンになる傾向があると言われているので、新型のエンジンはそうした面もかなり期待できそうだ。
エンジンルームを見てみると、エンジンカバーが復活しているのが分かる。現行型ではマイナーチェンジの際、6MT車にアルミ製インテークマニホールドを採用、そのポート断面を拡大するスペースを稼ぐためにエンジンカバーを廃した経緯があった。
トランスミッションのラインナップは、新旧ともに6速MTと6速AT。現行型の6速ATは、マニュアルモードの変速速度にこだわり、変速時間0.2秒と世界最速(当時)を実現していた。新型の6速ATでは、新しいSPORTモードを採用。自動スロットルブリッピングによる素早いダウンシフトを可能にするのは現行型同様だが、さらにヨーセンサーを利用して、ハードコーナリング時にローギアをキープするようコントロールされるという。
また、新型ではついに運転支援システム「アイサイト」が6速AT車に標準装備されることとなった。プリクラッシュブレーキや全車速追従機能クルーズコントロールも備わるので、日常の移動がより安全に、快適に行えることとなる。が、リリースでは「アイサイト」としか書かれていないので、果たしてどのバージョンのアイサイトなのかは不明である。
現行型のプラットフォームは、BRZのために完全専用設計で作られたもの。スバルがFR車を手がけたのは1954年のP-1以来だったのである。新型のプラットフォームはどうかというと、どうやらキャリーオーバーのようだ。
ただし、スバルグローバルプラットフォームの開発から得たノウハウを取り入れるとともに、新型レヴォーグでも採用されたインナーフレーム構造や構造用接着剤などを導入。シャーシマウントシステムやサブフレーム構造などの接続部も強化されているという。新旧で比べると、フロント横曲げ剛性は約60%、ねじり剛性は約50%と大幅に向上した。
現行型では高い位置に強度の高い鋼板を使って薄肉化を図り、低重心化を実現していた。新型ではルーフ、フード、フロントフェンダーにアルミを採用することで、低重心&軽量化を一層推し進めている。
現行型のボディ重量は、6MT車が1220〜1250kg、6AT車が1240〜1270kg。新型は6MT車が1277〜1286kg、6AT車が1299kg〜1307kgと、やや重くなっている。新型ではエンジン排気量拡大や装備の充実化が行われたことを考慮すると、かなり軽量化には努力したことがうかがえると言えるのではないだろうか。
足元を支えるサスペンションはというと、フロントがストラット、リヤがダブルウィッシュボーンという形式に変更はない。新型のフロントサスは低いボンネットラインを実現しながらもロングストロークを維持しつつ、理想的なハンドリングと乗り心地を実現。リヤサスは優れたバンプ吸収性を発揮し、様々な路面でタイヤのグリップ力を最大限に発揮する、としている。
新型の北米仕様は、標準の「プレミアム」と上級の「リミテッド」という2グレードが用意される。プレミアムは17インチアルミホイールと215/45R17タイヤ、リミテッドは18インチアルミホイールと215/40R18タイヤがそれぞれ組み合わされる。現行型では、「RA」などが16インチ、メインが17インチで、18インチが設定されるのは「STIスポーツ」のみだった。
新型の18インチ車のタイヤはミシュラン・パイロットスポーツ4を採用する。これは18インチを履く現行型のSTIスポーツも同様だ。
では、エクステリアを比較してみよう。新型はフロントのヘキサゴングリルや力強く張り出した前後フェンダーといったBRZらしさを継承しつつ、よりダイナミックさを増した印象だ。
ヘッドライトは、新型では少し大きくなり、角が取れた印象。が、ターンランプを内側に組み込んでいたり、ライト内側と接するバンパーが微妙にえぐられていたり、デイタイムランプがコの字型に光るあたりは、現行型と共通するイメージだ。
新型では、空力性能も大きく進化しているようだ。目を引くのは、フロントフェンダー後方のエアアウトレットだ。
現行型ではフロントフェンダー上部にダクトを模したガーニッシュがあったが、新型のエアアウトレットは単なるデザイン上のアクセントではなく、機能性も備えたもの。ボンネット内やフェンダー内からの空気をここから排出して空気抵抗を低減するとともに、排出された空気はサイドシルスポイラー(これも後端が大きくキックアップしているのが特徴(へと導かれ、高速走行時のダウンフォースを発生させるという。
リヤビューの見所はというと、大きく反り上がった「ダックテール」スポイラー。別体式のスポイラーではなくボディ一体型となっており、より洗練された印象を受ける。
リヤバンパー下部に配置されたリヤフォグとバックランプは、現行型と同様のイメージだ。
インテリアはどうだろうか。
現行型では車両の姿勢変化を感じやすくするため左右対称を基本としたインパネを採用する。新型も同様のコンセプトのようだが、より直線的なデザインとなった。
メーターバイザーも視界確保のため、新型はより低く抑えられているように見える。空調操作用の三つの丸いダイヤル&5つのピアノタッチ式スイッチは、新旧で共通の特徴。シフトレバー近くの位置にあったスタータースイッチは、やや上部に移動している。
新型では、サイドブレーキレバーもしっかりと存在している。BRZといえばジムカーナやドリフトでも活躍する車種だが、そういった競技では、サイドブレーキレバーが欠かせない。普通に街中を走るだけならスイッチ式のパーキングブレーキの方が便利だが、スポーツ走行派にとっては朗報かも!? アイサイトを標準搭載する6AT車はどうなっているのか、気になるところではある。
現行型のメーターは、中央にアナログ回転計、左側にアナログ速度計、右側に4.2インチモニターを配置。それに対して新型は7 インチTFT 液晶パネルと、水温計と燃料計を表示するためのセグメント液晶パネルを組み合わせている。
7インチTFT液晶パネルには、様々な情報を表示可能。回転計は普段は円グラフだが、「TRACK」モードにするとバーグラフに変更される。また、左側には電圧計&油温計のほか、Gメーターも表示できるようだ。
ちなみに回転計は垂直ゼロ指針なのは同様だが、頂点の数字が現行型が7000rpmだったのに対して、新型は6000rpmになっている違いがある。
新型はインフォテイメント面の進化が著しい。中央には8インチのインフォテインメント・タッチスクリーンが設置されており、最新の「スバル・スターリンク・マルチメディアシステム」を搭載。もちろん、今時の車らしく、アップル・カープレイやアンドロイド・オートにも対応している。
新型のシートは、バケットタイプでいかにもホールド性が良さそう。現行型と見比べると、ヘッドレストや座面の形状が異なっている。写真のモデルの表皮はアルカンターラと本革のコンビネーションのようだ。赤いステッチが効果的にあしらわれている。
残念ながら、新型はリヤシートがわかる写真は現段階では公表されていない。が、現行型と同様に折り畳み式となっており、荷室と合わせてタイヤ4本を積むことができるようだ。
新型の生産もスバルの群馬工場で行われる。米国での発売は2021年初秋とのことだ。残念ながら日本での発売時期については今回、アナウンスがなかった。
今回ご紹介した新型BRZの情報は、すべて北米仕様もの。果たして、日本で新型BRZに乗ることができるのはいつになるのか。そして、兄弟車として開発が進んでいるはずのトヨタ86はどんな姿で登場するのか。興味はますます募るばかりだ。