REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
PHOTO●遠藤正賢、本田技研工業
見た目は明らかに違っていても中身がほとんど変わっていないフルモデルチェンジならば枚挙に暇がないものの、見た目はほぼ変わらないのに中身が別物になっているフルモデルチェンジなど、かつてあっただろうか? それは、初代N-ONEの内外装がデザインコンシャスな購入ユーザーからの評価が極めて高かったことへの、自信の表れに他ならないだろう。
そんな、他の自動車メーカーにできない事を平然とやってのけるホンダに思わずあこがれてしまうところだが、ともあれN-ONEは新型の二代目になった。
その概要は、2020年1月の東京オートサロンに参考出品されたプロトタイプ「N-ONEカフェレーサーコンセプト」と、基本的には変わっていない。ことスポーティグレードの「RS」に関しては、細部の加飾を除けば内外装のデザインや装備品、パッケージングさえ同じだ。
なお、9月11日より公開されたティザーサイトでは、「RS」にはDOHCターボエンジンと6速MTが組み合わされると告知されていたが、具体的には64psと104Nmを発するS07B型ターボエンジンに、S660と同じギヤ比・シンクロ機構を持つ6速MTを組み合わせて搭載。
ただし6速MTには、ペダル振動を低減するクラッチダンパーと、急操作した際にペダルの戻りを遅くしてMT本体への衝撃を和らげるピークトルクリミッターを新たに採用している。
またCVTの仕様もあり、こちらにはSレンジの際にアクセル中間開度までを高回転化し、減速時にステップ変速を行う「ブレーキ操作ステップダウンシフト制御」を立ち上がり加速重視(旋回中に高回転をキープ)とするなど、専用の制御が採り入れられた。
新型N-ONEには「RS」以外にも、シンプルな内外装の「オリジナル」に加え、高級感のある内外装を備えた「プレミアム」とそのターボエンジン仕様「プレミアムツアラー」が用意されている。これらグレードには6速MTの設定がないものの、「RS」にはないS07B型NAエンジンや4WDの仕様がある。
ただし、初代デビュー当初の標準ボディは廃止され、立体駐車場に入庫できるよう全高が1545mm(FF車。4WD車は1570mm)に抑えられた「ローダウン」仕様に一本化された。そのしわ寄せは後席の乏しいヘッドクリアランスから見て取れるが、一方で前席はインパネの造形が一新され、助手席クローブボックスの出っ張りが抑えられたため、脚を組めるほどのニークリアランスが確保されている。また、フロントシートがベンチ式からセパレート式に変更され、ホールド性向上が図られたのも、大きな変更点の一つに数えられるだろう。
ボディ・シャシー、そしてN-ONEとしては初採用となるADAS「ホンダセンシング」に関しては、最もサイズ・構造が近い現行二代目N-WGNと技術的共通点が非常に多い。ただし「RS」6速MT車の「ホンダセンシング」には、誤発進抑制機能こそないものの、高速巡航時の疲労軽減に役立つACC(アダプティブクルーズコントロール。CVT車は渋滞追従機能付き)とLKAS(車線維持支援システム)が、軽自動車の6速MT車として初めて実装されている。
【グレード構成・価格】
オリジナル(NA、CVT、FF/4WD)…159万9400円/173万2500円
プレミアム(NA、CVT、FF/4WD)…177万9800円/191万2900円
プレミアムツアラー(ターボ、CVT、FF/4WD)…188万9800円/202万2900円
RS(ターボ、6MT/CVT、FF)…199万9800円/199万9800円
■ホンダN-ONE RS(FF)
全長×全幅×全高:3395×1475×1545mm
ホイールベース:2520mm
車両重量:860kg
エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ
総排気量:658cc
最高出力:47kW(64ps)/6000rpm
最大トルク:104Nm/2600rpm
トランスミッション:6速MT
サスペンション形式 前/後:マクファーソンストラット/トーションビーム
ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ:165/55R15 75V
乗車定員:4名
WLTCモード燃費:21.8km/L
市街地モード燃費:17.6km/L
郊外モード燃費:23.2km/L
高速道路モード燃費:23.3km/L
車両価格:199万9800円