世良耕太さんが選んだ「美しすぎるクルマ」、その第1位はフィアット・ムルティプラだ。まるで深海魚のような不思議なフェイスだが、3人掛け×2列の6人乗車を全長4mのコンパクトなボディで実現した、画期的なパッケージングの持ち主でもあった。




TEXT●世良耕太(SERA Kota)

個人的には「美しい」と「カッコイイ」の境界が曖昧だ。「思わず我を忘れて見入ってしまう」という観点で選ぶと、ランボルギーニ・ミウラとフェラーリ512BBとロータス・ヨーロッパの3台になってしまうので、それでは面白くないと思い悩むこと1週間(ウソ)。




他の選者と被らないように...などと悩みつつ選んだのが以下の3台である。

第3位:マツダRX-7(SA22C型)

1978年に登場した初代マツダRX-7(SA22C型)。リトラクタブルヘッドライトの採用により、空気抵抗係数を6%削減することに成功した。

まずはスーパーカーブーム時のジャパニーズからマツダ・サバンナRX-7をチョイス。当時、ミウラや512BBやロータス・ヨーロッパと同列にこのクルマを眺めていたのを思い出す。




見入ってしまうポイントはリトラクタブルヘッドライトだ。「隠しライト」が備わっているだけで、「カッコイイ」いや「美しい」と思ってしまう。何かのおまじないにかかってしまったのだろうか。

第2位:ホンダ・アコード(3代目・CA型)

1985年にデビューした3代目のホンダ・アコード。低いノーズを強調するためのリトラクタブルライトだがユーザーの好き嫌いも多く、2年後には固定式ライトを採用した「アコードCA」も発売された。

説明不要だろう。決め手はリトラクタブルヘッドライトである。1978年にRX-7を目にして以来、隠しライトのおまじないにかかってしまっているので、当然のごとく、モデルチェンジして隠しライトを採用したホンダ・アコードに見入ってしまった。エアロデッキを挙げてもよかったのだが、4ドアセダンにリトラクタブルライトという異色の(?)組み合わせがいい。




1985年に3代目に移行したアコードは、「これが同じモデル?」と疑いたくなるほど、先代とはイメージが変わり、空力を意識したモダンなルックスになった(隠しライトがどれほど貢献したか知らないが)。DOHCを採用したエンジンや4輪ダブルウィッシュボーン式のサスペンションなど、スポーツカー顔負けのスペック(当時は記号性が大事だった)も、リトラのアコードに箔をつけた。




『リトラクタブルヘッドライト車のすべて』(三栄刊)は持ってます。

第1位:ポルシェ911(992型)

8代目にあたる992型のポルシェ911は、2018年に登場。フロントフードに刻まれた2本のプレスラインなど、930型のモチーフを随所に取り入れているという。

規や機能などの面から、リトラクタブルヘッドライトは消えてなくなり、思わず見入ってしまう対象がなくなった。最近、代わりに出てきたのが、左右がつながった横一文字のテールライトである。「なぜ?」と問いただされても困ったもので、見入ってしまうのだから仕方ない。レクサスUXしかり、アウディA8しかりだ。




なかでも白眉は、最新のポルシェ911である。レクサスUXもアウディA8も横一文字のテールライトがバックドアやトランクリッドによって分断されてしまっているが、911のそれは一体物で、美しさのレベルが違う。




そして、グラデーションをともなった赤い照明が、その下にあるクラシカルな書体の「PORSCHE」のロゴを照らして艶やかなムードを醸し出す。その様子を見ていると、古典様式のレトロな建物と現代の建築家が腕をふるったモダンな建物が共存して独特の雰囲気を漂わせるシュトゥットガルトの夜の景色を思い出させる。




酒が飲める眺めですよ、ホントに。

こちらが、世良さんが絶賛した911の艶かしい後ろ姿をとらえた一枚。

992型911のデザインを手掛けたのは、山下周一氏。「911のリヤはデザイナーにとって、もっとも挑戦しがいのある魅力的な部分」であり、「分割線の全くない横一文字のリヤランプは、この911の最大の見せ場」とのこと。

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どんなに走りが楽しくても、どんなに乗り心地が良くても、ブサイクなクルマには乗りたくない。そう、デザインはクルマの命。ということで、これまで出会ったクルマの中からもっとも美しいと思ったベスト3を毎日、自動車評論家・業界関係者に選んでいただきます。明日の更新もお楽しみに。
情報提供元: MotorFan
記事名:「 【美しすぎるクルマ・ベスト3(世良耕太)】日本人がデザインした最新ポルシェ911。その後ろ姿を眺めながら飲む酒は旨い