TEXT●松田秀士(MATSUDA Hideshi)
新しい物好き!?と言われるかも?だけど、予想を覆すほどよくできていた印象が強い。まず、狭かろう? 閉塞感の塊だろう?と思っていたフリースタイルドアと呼んでいる観音開きドアを開けて潜り込むようなリヤシートだが、意外にも快適な居住空間だったのだ。
もともとこのクルマは窓面積比率が小さくAピラーも近年のクルマにしては立ち気味。それゆえちょっとMINIなどにも匹敵するカワイイ系のエクステリアなんだけど、この小さな窓から見る外界の景色がなんとも不思議な創造力を醸し出す。リヤドアのサイドウィンドウは開かず嵌め殺し。にもかかわらず包まれ感が心地よい。側突があっても守られそうな予感。
窓面積が狭いクルマは直射日光の影響を受けにくいのでエアコンの容量を小さくでき、結果燃費が良くなる。その燃費も24Vのマイルドハイブリッドが発進加速時の一番エネルギーを必要とするシチュエーションでフォローするのでWLTCモード燃費15.1~15.6km/Lは2.0Lエンジンとしてなかなかの数値。
インテリアの質感と新しさ。さらに室内静粛性が高く、ハンドリングもCX-30の流れを汲み直進安定性とホイールトラベルが躍動的。不整地でもコーナリングでも素直に動き、なおかつライントレース性が高い。ADAS(運転支援)もACC+LKAで高速巡行もラクチン。
最近のMAZDAのクルマは一度乗れば「おやっ!」っと思う感動があるが、MX-30の「おやっ!」は最近のMAXだ。
まずドライビングポジションをとるとステアリングの上越しにメーター類(12.3インチのデジタルディスプレー)が構える。コレ、プジョー車に共通するドラポジ。ヘッドアップインストルメントパネルと呼ぶそうだ。
超小径のステアリングは低く胸のあたりにくるので、ステアリングのトップを持っても肘が緩く曲がるくらい。これはコーナリングで強めの横Gを受けても腕を突っ張らずにステアリング操作ができる。
このドライビングポジション、最初は違和感があったけれどもすぐに慣れて、その安全思考のコンセプトに感心する。さらにメーターの確認に視線移動が少なく安全。SUVでありながらNAVI画面以外の操作系がドライバー向けにセットされている。しかし、走り出せばその理由がすぐにわかる。
走り出し、サスペンションはどんな輸入&国産SUVよりも柔らかい。いにしえのあのプジョーが蘇った印象だ。しかし、速度を上げてコーナリングし始めて気付かされる。ロールもそれなりにある。サスがソフトだからね。市街地ではそのソフトさが心地よく、逆に速度を落として走るのが楽しい。
しかし、首都高など、或いは峠などのコーナリング性能に驚く。高速で、コーナリングの体勢に落ち着くまでは速いロール。しかしオーバーシュートもせず、ピタッとロールは止まる。気が付くとロール角はそれほど深くない。そしてアクセルを踏み込めば全く限界知らずでグングン曲がる。それだけではない。例えばS字コーナー。切り返しから次のコーナーへ移る姿勢変化が心地よい。そして速い。修正舵がなく、タイミングよくステアリング操作が一発で決まる。この車高でこのコーナリングは他のSUVでは味わえない。
SUVのスーパーカーですね。手越クンも乗ってるし、予算無制限なら夢のようなSUVにすべし。はっきり言ってバケモノですウルスは。V8ツインターボ650CV 最高速305km/h 0~100km/h加速3.6秒。ローンチコントロールをセットしてフル加速すると、4WDなのに2速に入ってもどれかのタイヤが空転してます。
しかもエクゾーストノイズが超レーシーなので、しっかりステアリングコントロールしていないとアドレナリンが噴出してストレートスピンしそうなくらい。もちろんトラコンを含めたESCをOFFにして男の子と決心してアクセル全開にしたらですよ。
エンジンの発する音楽も凄いんだけど、ポルシェ・カイエンと違ってインテリアもド派手。エクステリアは見ればこれをシックと言う奴はいないだろうけど、インテリアはもっとスゴイ。しかもやはりイタリアンのランボらしく、レザーやアルカンターラの触感も素晴らしいし、フィニッシュが手作り感満載でなおヨロシイ。ベントレーなどとはまた嗜好の異なる仕上げで、作り手の感情がそのまま移入されている感じ。
パフォーマンスも凄いけれども、そのパフォーマンス使わずゆっくり街中を流していても、人に見せびらかすだけでなく、自分自身も楽しめるSUVだね。