TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)
ここでお届けするリリースを発表したのはコンチネンタル本社である。2019年9月にコンチネンタルより分社化・独立したVitesco Technologies社が、世界初の技術を開発したという。Vitesco Technologies社の母体となったのはコンチネンタルのパワートレイン部門であり、革新的かつ効率的な電動化技術を開発することを目的に設立された。ハイブリッドとEV用48ボルトの電動化ソリューション、電気駆動装置、それにパワーエレクトロニクスを開発しており、製品としては、電子制御、センサー、アクチュエーター、排出ガス後処理関連ソリューションがあげられる。
さて、今回発表された新たなトランスミッション制御システムとは、オーバーモールディングにより量産される電子制御部品である。従来のコントロールユニットと比較して約45%もの軽量化と堅牢性の向上、それに製造段階の大幅な削減を実現する。これにより明確なコスト上のメリットが得られる。
従来の設計では、電子制御ユニットの電子機器はハウジング内に配置される。対照的にオーバーモールド電子制御ユニットでは、プリント回路基板上に配置された電子部品は完全にプラスチックに埋め込まれている。新たに開発した高精度な射出成形プロセスと、特に耐久性の高い新しいプラスチック素材により、このタイプの自動車向け電子制御ユニットの世界的な大量生産が初めて可能となった。
オーバーモールド製造プロセスには幾つかの利点がある。第一に、コンポーネントが非常に堅牢である。繊細なハイテクコンポーネントは完全にプラスチックで囲まれているため、強い振動にも耐えることができる。第二に、オーバーモールディングコンポーネントは、ハウジングを備えた従来品よりも軽いだけでなく、遥かに薄くできる。Vitesco Technologies社が開発したトランスミッション制御ユニットは、現在の市場で最も薄く、その厚さはわずか7mmである(従来品は15mm)。ご存知の通り電子制御ユニットはトランスミッションに直接ねじ込まれ、設置スペースは限られている。そのため、この薄さは有利に働く。また、既存製品と比較してかなり少ない生産工程で製造できるのも利点である。コストメリットが大きい。
この新たなオーバーモールド電子制御ユニットは、既に2020年春からニュルンベルクで生産が開始されており、ドイツの自動車メーカーによって、後輪駆動+ATを備えた様々な車種で使用されている。2021年初からはハンガリーのデブレツェンに完成した新工場で生産する予定であり、この最先端生産技術をグローバルに展開して行くという。