なぜSC過給だったのか。パワー/トルクを上げる一番の早道は排気量拡大だったが、ミッドシップ車であるMR2のエンジンルームにはこれ以上の大きさのエンジンを収めるのは難しい。ならば採る手段としては過給となる。すると、ターボかSCか。当時のターボチャージャー過給はラグが大きく、さらに日本市場をはじめとするMR2というクルマの使われ方を考えればレスポンスが良く低速トルクが大きなエンジンがふさわしい。有馬主査は「たまたまクラウンのスーパーチャージャー付きが先行して発売されたが、ターボかスーパーチャージャーかの検討や選択は、MR2もほぼ並行して行われていたといっていい」と、当時を振り返っている。
SCはSC-12の型番が振られた製品。2ロータ式のルーツブロワであり、したがって内部圧縮はない。1G-GZEに備わるSCより22mm短く、理論吐出量は1.2ℓ/回転のスペック。ハウジングはアルミ合金製で、クリアランスを極力詰めたいことからロータ側には樹脂コーティングが施されている。
レスポンス重視から、ラグの大きなターボではなくSCを選んだのは先述のとおり。ただしSCはターボとは逆に、エンジン回転が高くなると負荷になってしまう性質を持つ。そこで、過給のOn-Offコントロールのために電磁クラッチを備えるのが常道。4A-GZE型の場合は600rpmからクラッチがつながり、過給圧が高まり過ぎた場合にはエアのバイパスバルブを開いてコントロールしている。なお、このバイパスバルブは600rpm以下の軽負荷領域でも開き、吸気をSCを通さずに吸気流路に直接流す。
これらにより、最高出力は108kW(145ps)/6400、最大トルクは186Nm(19kgf·m)/4400rpmを達成。4A-GELU型が130ps/15.2kgf·mだったから、相当のパフォーマンスアップを果たした格好である(ただしこちらはグロス表記)。
クランクシャフトは燃焼圧力の向上に対応するためにピン径を2mm増やして42mmへ。ピストンも鍛造製品に改められて高温対策とし、ピストンピン径もやはり2mm増した20mmとしている。ヘッドガスケットには水路/油路の一部にゴムリングを配するとともにボアグロメット内側にワイヤリングを施し、シール性と耐久性を高めるとともに、シリンダーブロックはリブの立て直しなどで剛性アップを図った。
エンジンの整備重量はMT用で143kg/AT用で136kgで、そのうちスーパーチャージャーの重さは10.8kg程度。寸法は長さ605mm幅632mm高さ653mm。