NTNは、自動車のトランスミッションやデファレンシャル用の「低昇温・低トルク円すいころ軸受」を開発した。新開発の樹脂保持器の採用や軸受内部設計の最適化により、世界最高水準の低昇温性(耐焼付き性)と低トルク性を実現した。

 環境規制を背景とする自動車の省燃費化により、自動車のトランスミッションやデファレンシャルなどの動力伝達装置は小型・軽量化が進んでおり、これらに使用される円すいころ軸受の使用環境は過酷さを増している。NTNは、世界最高水準の軸受定格寿命(長寿命)と許容回転速度の実現をコンセプトとした「自動車用ULTAGE(アルテージ)円すいころ軸受」を2017年に発表するなど、こうした市場ニーズの変化に対応してきた。




 近年、自動車産業がスマートモビリティやCASEに代表されるように大きな変革期を迎える中、電動化やカーシェアリングによる航続距離の延長などを背景に、動力伝達装置の高効率化が加速している。これにより、装置内の潤滑油量の低減や低粘度油への切り替えが進められ、軸受にはこうした過酷な潤滑条件下の対応や、より一層の低トルク化が求められている。開発した「低昇温・低トルク円すいころ軸受」は、こうした新たに浮上した次世代モビリティの市場ニーズに対応する商品だ。

特長

・新型樹脂保持器に付与した凹み形状により、潤滑油不足時にころ端面への給油が可能となり、昇温を抑制(図1-①)


・ころ端面と内輪大つば面間の滑り接触部の潤滑性が向上する設計を適用し、温度上昇を抑制(図1-②)

図1:開発品断面構造図と特長

・新型樹脂保持器が軸受内部への過度な潤滑油流入を抑制し、潤滑油の攪拌抵抗による回転トルクを低減(図1-③)


・「自動車用ULTAGE円すいころ軸受」の“ころ”設計や、軸受内部設計の最適化による長寿命効果で軸受を小型化し、転動体(ころ)と軌道輪(内外輪)の転がり接触長さを減少させることで回転トルクを低減(図1-④、図2-①)


・軸受の小型化により転動体(ころ)のピッチ円径を小さくし、転動体(ころ)と軌道輪(内外輪)


間の周速を低減、転がり抵抗を抑えることで回転トルクを低減(図1-⑤、図2-②)

図2:標準品と開発品の比較(内部設計の最適化)

情報提供元: MotorFan
記事名:「 NTN:「低昇温・低トルク円すいころ軸受」を開発、世界最高水準の低昇温性・低トルク性で次世代モビリティの市場ニーズに対応