TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
後席の広さをウリにする軽自動車には何度も乗り込んでおり、外からイメージする以上に室内が広いのは承知しているつもりだ。それでも、「なにこの広さ!」と感嘆するほど、ルークスの後席は広い。スライドを最後端にした状態で後席に座ると、足が組めるほど前方に余裕がある。スライドを最前にすると足の置き場もないほど窮屈になるが、荷室スペースを優先する場合の限定的な使い方だろう。後席左側を最前、右側をもっとも後ろにした状態の写真で様子を確認していただきたい。
新型ルークスはバックドアの構造を工夫したことによって、最初から最後まで軽い力で閉じるようにした。従来は構造上、途中で重くなったのだ。新型ルークスを開発する際、開発陣はスーパーマーケートやショッピングセンターに出向き、軽自動車の使われ方を調査した。すると、買い物した荷物を荷室ではなく、後席足元に置くユーザーが多いのがわかったという。とくに女性ユーザーにとって、バックドアの開閉は重くて面倒というのが使わない理由だった。
こうした背景から、新型ルークスはバックドアが軽々と閉じるように改良した。どれどれと閉めてみると、なるほどいわれたとおり軽々と閉まる。もう一度開けて荷室を確認してみたが、後席がもっとも後ろにある状態だと、わざわざバックドアを開けて荷物を積み込もうと思うほどのスペースは残っていない。後席シートを最前にスライドすると、広大なスペースが生まれる。
「使う人のことをよく考えているな」と感心したのは、荷室からのシートスライド操作だ。シートの外側にリクライニングレバー、内側にスライドレバーがついている。どちらも、片手で楽に操作できる。つまり、片方の手が買い物袋などでふさがっていても、空いた手で楽に操作できるということだ(試してみた)。リクライニングレバーを操作すると、後席のシートバックは直立した状態まで立てることができるので、後席が最後端にあっても使えるスペースが増す。
試しにルークスに乗っていつものスーパーマーケットに行き、1週間分の食材を買った。大きめのエコバッグがふたつである。両手がふさがっていたので、「バックドアを開けるのはおっくうだな」と思ったし、「そうだ、あれがあるじゃないか」と思った。
「ハンズフリーオートスライドドア」である。前後ドアの境目あたりでクルマの下に足を出し入れすると、足の動きをセンサーが感知してスライドドアが開く機能だ。ここぞとばかりに足を出し入れしたが反応しない。何度か繰り返して諦め、最後は手で開けた。
「メインスイッチがオフになってる?」と思い、確かめたが、スイッチはオンになっている。スイッチの絵文字を見ると、あたかも左側のドアが反応するように描いてあり、「そうか、ハンズフリーで開くのは左側のみか」と早合点して左側ドアで試してみたが、やはり反応しなかった(何度空振りしたことか)。
後でわかったことだが、開け方にはコツがあり、膝から下をシンプルに前後に振るだけでいい。反応しないからといって、まさぐるような動きは禁物だ。そして、左側だけでなく右側スライドドアもハンズフリーで開く。ルークスの購入者は納車時に販売店でレクチャーを受けることと思うが、デキル人の例を参考にコツをつかんでおいたほうがいいだろう。ハンズフリーオートスライドドアの操作に慣れてしまってからというもの、荷物置きはもっぱら後席足元になった。
新型ルークスは運転席からの見晴らしの良さにもこだわった。日産が公表したデータによると、アイポイントの高さは先代ルークスより61mmも高く、ミニバンのセレナに近い(セレナより少し低い)。主に身長の低い女性をターゲットにした配慮である。身長の高い人はどうなのかと身をもって確かめてみたが、屋上の柵から身を乗り出すような不安感はなく、ただ見晴らしの良さに感心するばかりだ。
スーパーハイト系の軽自動車に共通する傾向ともいえるが、足を投げ出した姿勢ではなく、足を降ろした姿勢になるため足首の角度がきつくなるのが難といえば難である。そのせいで動きの柔軟性に欠け(歳のせい?)、ブレーキとアクセルの踏み替えがおっくうだし、気を遣うし、疲れる。衝突回避をアシストする機能がついているとはいえ、「もしものときにとっさにブレーキ踏めるかな」と不安になる。「これでちょうどいいんだけどな」と感じる位置より1ノッチ後方にシートをずらしたら、だいぶマシになった(そのかわり、ステアリングは遠くなる)。
シートスライドの気遣いは運転席に座っても享受でき、振り返るようにして助手席側面のレバーを操作すると、楽に助手席を前方にスライドさせることができる。後席の冷房効果を高めるため、ルーフ内蔵のシーリングファンを搭載しているのもルークスの特徴だ。運転席から手を伸ばせば届く位置に操作系があるのも気が利いている。
気が利いているといえば、ボタンを押したりダイヤルをひねったりせず、望みの風量にタッチするだけで直接アクセスできるタッチパネル式のオートエアコンは、直感的に操作できる点で気が利いている(デイズから採用)。だが、その上にあるトレイに置いた物(サングラスとかスマホとか)を取ろうとした際に手が触れてしまい、意図せず風量がマックスになったりしたことが何度かあった。以来、試乗期間中はエアコン操作パネル上のトレイに物を置かないことにした。
高速道路を走行しているときにアクセルとブレーキ、ステアリング操作をクルマがアシストしてくれる「プロパイロット」の設定があることも含めて(一度使ったらやめられない)、「ミニバンの使い勝手と軽の運転しやすさを両立した」という謳い文句にうそ偽りはない。プロパイロットどころか、高いクルマの装備のイメージがあるアダプティブLEDヘッドライトシステム(プロパイロットのカメラで周辺車両や対向車を高精度に認識し、24灯LEDを個別に制御してハイビームのエリアを最大化する機能)もグレード別に設定がある。これも、一度効果を味わったら離れがたくなる機能だ。
居住性や使い勝手、先進安全装備は充実しており、なんら不足はない。ルークスにとっては外形寸法の小ささが大きな武器になっている。
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション
全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1780mm
ホイールベース:2495mm
車重:1000kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式
駆動方式:FF
エンジン
形式:直列3気筒DOHCターボ
型式:BR06-SM21
排気量:659cc
ボア×ストローク:62.7mm×71.2 mm
圧縮比:9.2
最高出力:64ps(47kW)/5600pm
最大トルク:100Nm/1750rpm
燃料供給:PFI
燃料:レギュラー
燃料タンク:27ℓ
モーター:交流同期モーター
型式:SM21
最高出力2.0kW/最大トルク40Nm
燃費:WLTCモード 18.8km/ℓ
市街地モード16.7km/ℓ
郊外モード:20.0km/ℓ
高速道路:19.1km/ℓ
トランスミッション:CVT
車両本体価格:193万2700円
試乗車はメーカーオプション10万4500円(アメジストパープル/フローズンバニラパールM2トーン/快適パックB7万1500円 ロールサンシェード、撥水加工シート 3万3000円)
ディーラーオプション 32万8517円(ナビレコパック28万612円etc.)