「なんでこんないいクルマが日本で普通に買えないんだ!?」




そのブランドのファンや関係者ならずとも、そう憤慨したくなるような日本未導入モデルは、グローバル化がこれだけ進んだ今なお、数え切れないほど存在する。




そんな、日本市場でも売れるorクルマ好きに喜ばれそうなのになぜか日本では正規販売されていないクルマの魅力を紹介し、メーカーに日本導入のラブコールを送る当企画。今回は、トヨタが北米などで販売している3列シートのミッドサイズSUV「ハイランダー」を紹介したい。




TEXT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●トヨタ自動車

トヨタ・クルーガー

「ハイランダー」と言われてもピンと来ないかもしれないが、「クルーガー」という車名を聞いたことのある読者は少なくないだろう。そう、日本でも2000年から2007年の間に販売されていた、初代「ハリアー」の兄弟車である。




だが、海外ではレクサス「RX」を名乗る高級ブランドのクロスオーバーSUVとして作られた初代ハリアーに対し、クルーガーは海外でもトヨタブランドの初代ハイランダーとして販売されたモデル。2003年8月のマイナーチェンジではハリアーにない3列シート車を設定し、2005年3月にはハリアーともども3.3L V6エンジンとE-Fourを組み合わせた「ハイブリッド」を追加したものの、保守的なうえ高級感にも乏しいデザインが不人気で、日本市場ではフルモデルチェンジされることなく姿を消した。




しかしながら、二度のフルモデルチェンジを経て、2018年には北米・中国・豪州・ロシアを中心に約39万台を販売し、また初代からの累計販売台数が約385万台に達するなど、海外では人気モデルに成長している。そして2019年4月のニューヨーク国際オートショーで世界初公開されたのが、現行モデルの四代目ハイランダーだ。

居住性重視のパッケージングが外観からもうかがえるトヨタ・ハイランダーのサイドビュー

北米仕様トヨタRAV4プライム(=PHV)のエクステリア
北米仕様トヨタ・ヴェンザのエクステリア

四代目ハイランダーは、日本では一世代飛び越して復活を果たしたRAV4の現行五代目および、北米では二代目「ヴェンザ」として販売される四代目ハリアーと同じ、TNGA-Kプラットフォームをベースとしている。




が、両車のホイールベースが2690mmなのに対し、ハイランダーは160mm長い2850mm。全長×全幅×全高は4950×1930×1730mmと、RAV4標準仕様の4595×1854×1702mm(いずれも北米仕様の数値)と比べ355×76×28mm大きいボディサイズだ。

トヨタ・ハイランダーの2列目シート。写真は7人乗り仕様のセパレートシート
トヨタ・ハイランダーの1列目シート
3列目まで使用した状態でも荷室容量453Lを確保。3列目格納時は1371L、2列目までたたんだ際は2387Lまで拡大する
トヨタ・ハイランダーの3列目シート。足元は狭いながら背もたれのサイズは大きめ

それでも三列目は緊急用+αというレベルだが、三代目より全長を60mm拡大し、二列目シートのスライド量を30mm増やすことで、実用に耐えうる居住空間を確保している。

トヨタ・ハイランダーの運転席まわり

トヨタRAV4プライムの運転席まわり
トヨタ・ヴェンザの運転席まわり

こうしたパッケージングもさることながら、現行RAV4およびハリアー(ヴェンザ)との性格の違いは、内外装のデザインからも見て取れる。




RAV4はオフロードでの使用も想定したタフな外観に、手袋をしていても扱いやすい操作系、ハリアー(ヴェンザ)は都心のオンロードを主体とした上質かつスッキリした内外装となっている。その中でハイランダーは、両車の中間と言うべき仕立て。走る場所や状況を問わずマルチに使え、人数も荷物もたくさん載せられる、ファミリー向けのSUVに位置付けられるだろう。

3.5L V6 NAエンジン+8速ATを搭載するエンジンルーム

パワートレインの設定も両車とは異なっている。各車とも2.5L直列4気筒ガソリンNAエンジンとハイブリッドの組み合わせを設定するが、ハイランダーにはRAV4とハリアー(ヴェンザ)にない3.5L V6 NAエンジン+8速ATがある。大排気量マルチシリンダーエンジンならではの、ゆとりあるトルクと振動が少なく滑らかな加速フィールを味わえるのも、ハイランダーにしかない魅力の一つではないだろうか。




トヨタは今、下は「ライズ」(さらにその下にダイハツ・タフトのOEM車を設定するか!?)、上は「ランドクルーザー」&レクサス「LX」まで、全く隙のないSUVラインアップを構築しようとしている。




しかしながら日本市場では、3列シートを設定するトヨタのSUVは、本格オフローダーのランドクルーザー&レクサスLXと「ランドクルーザープラド」に限られてしまっている。乗用車ベースの3列シートSUVは、事実上マツダ「CX-8」の寡占市場となっているにも関わらず、だ。




他社では絶滅危惧種となっているミニバンが日本でいまだに健在なトヨタにとって、敢えて乗用車ベースの3列シートSUVを導入する意義は薄いのかもしれない。だが、トヨタがそこに参入すれば、マツダ以外の国産車メーカーを刺激し、市場を活性化させるきっかけになるだろう。そうすれば、我々ユーザーが多彩な選択肢の中から乗用車ベースの3列シートSUVを選べる未来が見えてくる。




だから今こそクルーガー、海外名ハイランダーの日本復活を!

■トヨタ・ハイランダー プラチナム(F-AWD)*北米仕様


全長×全幅×全高:4950×1930×1730mm


ホイールベース:2850mm


車両重量:2018kg


エンジン形式:V型6気筒DOHC


総排気量:1970~1997cc


最高出力:220kW(299ps)/6600rpm


最大トルク:357Nm/4700rpm


トランスミッション:8速AT


サスペンション形式 前/後:マクファーソンストラット/マルチリンク


ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク


タイヤサイズ 前後:P235/55R20M


乗車定員:7名


車両価格:4万8800ドル(約515万円)
トヨタ・ハイランダー

情報提供元: MotorFan
記事名:「 3.5L V6+8速ATも設定! TNGA-Kプラットフォームをベースとした3列シートのミッドサイズSUV