REPORT●北秀昭(KITA Hideaki)
■備考:400ccの「Ninja400」と、250ccの「Ninja250」の比較
【Ninja400】
エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列2気筒/DOHC 4バルブ
総排気量:398cc
内径x行程(ボア径×ストローク長):70.0mm×51.8mm
圧縮比:11.5:1
最高出力 35kW(48PS)/10,000rpm
最大トルク:38N・m(3.9kgf・m)/8,000rpm
【Ninja250】
エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列2気筒/DOHC 4バルブ
総排気量:248cc
内径x行程(ボア径×ストローク長):62.0mm×41.2mm
圧縮比:11.6:1
最高出力:27kW(37ps) /12,500rpmm
最大トルク:23N・m(2.3kgf・m)/10,000rpm
エンジンの仕様は、水冷4ストローク並列2気筒/DOHC 4バルブと共通。どちらもエンジンの回転を上げてパワーを稼ぐ傾向の強い、ショートストローク型エンジン(ストローク長よりもボア径が大きい)。ショートストローク比(内径÷工程)は250が1.50、400が1.35で、400の方がショートストローク。
400ccー250cc=150ccという排気量の差はやはり大きく、スペック上のパワーやトルクは400が圧倒的。最高出力はライバル車の「ホンダ CBR400R」の46馬力を凌ぐ、48馬力を発揮する。
重量は250が166kg、400が167kgとわずか1kgの差。軽量コンパクトな車体に、パワフルなエンジンを搭載した400は、図太いトルクを活かした余裕の走りが楽しめる。一方、250は1万回転オーバーの領域まで難なく回る小気味良さを発揮。車検がなく、維持費が安く上がるのも250の大きな魅力だ。
フレーム、外装、足周りが基本的に共通となる250と400の外観は、まるで双子のように瓜二つ。もしも同色ならば、両車の区別は付きにくいはず。両車の外観の違いは、
・カラーリング
・右側にアップしたマフラーが、Ninja400の方が約65mm長い
・Ninja250のタイヤはダンロップ製アローマックスGT601(バイアス)
・Ninja400のタイヤはハイグリップなダンロップ製スポーツマックスGPR300(ラジアル)
・リヤタイヤはNinja 250の140/70-17に対し、Ninja 400は150/60R-17にワイド化
■Ninja ZX-25R
エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列4気筒/DOHC 4バルブ
総排気量:249cc
内径x行程(ボア径×ストローク長):50.0mm×31.8mm
圧縮比:11.5:1
最高出力:33kW(45ps)/15,500rpm
※ラムエア加圧時:34kW(46ps)/15,500rpm
最大トルク:21N・m(2.1kgf・m)/13,000rpm
■Ninja 400
エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列2気筒/DOHC 4バルブ
総排気量:398cc
内径x行程(ボア径×ストローク長):70.0mm×51.8mm
圧縮比:11.5:1
最高出力 35kW(48PS)/10,000rpm
最大トルク:38N・m(3.9kgf・m)/8,000rpm
どちらもレーシーなショートストローク型エンジン(ストローク長よりもボア径が大きい)を採用。ショートストローク比(内径÷工程)はNinja ZX-25Rが1.57、400が1.35でショートストローク比は高い。
250ccクラス最強であるNinja ZX-25Rの最高出力は、400ccクラス最強である48馬力のNinja 400に迫る45馬力(ラムエア加圧時は46馬力)を発揮。この時点でNinja ZX-25Rの凄さが窺い知れる。
Ninja ZX-25Rは超高性能な小排気量4気筒エンジンならではの、超高回転型仕様に味付け。1万5500回転でMAXパワーを出力し、レッドゾーンは1万7000~2万回転というレーシングマシン並みの驚異的な数値を示す。大袈裟ではなく、限りなくレーサーに近いテイストに仕上げられているわけだ(一般公道用のため、もちろんストリートで多用する低中回転域での扱いやすさも吟味されている)。
一方、Ninja 400は1万回転でMAXパワーを発揮し、レッドゾーンは1万2000~1万5000回転。Ninja ZX-25Rよりも、5500rpm低い回転数で48馬力を絞り出すのが特徴。別の言い方をすれば、余裕を持って走行できる万人向けの仕様に設計されている。
超高回転域でMAXパワーを発揮するNinja ZX-25Rは、Ninja 400よりも最大トルクの数値が大幅に低いのが特徴(この点は、小排気量4ストハイパワーモデルの特徴だといえる)。
一般的にこのタイプのバイクを速く走らせるためには、一定のパワーバンド(もっともパワーの出やすい回転数)をキープする必要があるため、適格・適切なミッション操作やスロットルワーク(つまりテクニックや経験)が要求される。具体的な事例として、登り坂が連続するタイトな峠道の走行を想像して欲しい。トルクの薄い(低い)超高回転型エンジンは、パワーバンドから外れる(回転数が下がる)と、たちまち失速。これを防ぐためには、パワーバンドのキープ=最適な(車種によっては神経質な)シフトチェンジが要求される。
その点、パワーがあってトルクも図太いNinja 400のようなタイプは、たとえラフなシフトチェンジで多少エンジン回転数が下がっても、ひとたびヒョイっとスロットルを開けてあげれば、持ち前の深いトルクでグングン登ってくれる。基本的に神経質なシフトチェンジは不要であり、のんびりと走行できるわけだ。
一方のNinja ZX-25Rは、低回転トルクが細くて扱いづらい……ということはなく、小排気量車ながらも扱いやすさを考えて調教されているので、思った以上に普通に街乗りも楽しめる。
超高回転型エンジンならではの上記の性質も意識したのか、Ninja ZX-25Rには、250ccクラス初となる「クイックシフター」を採用。これにより、クラッチ操作なしのシフトアップ&シフトダウンがOK。ライディングに不慣れなビギナーでも、スムーズな加速とクイックでイージーな減速ができ、超高回転エンジンの特性を楽しめるよう工夫されている。
諸元の数値で見た場合、Ninja ZX-25Rは高回転域まで気持ち良くエンジンを回して楽しむタイプ=限りなくレーサーに近い(繰り返すが、下記の試乗インプレでは低中回転域での乗りやすさも吟味されていることを体感済み)。
一方、余裕のパワー&トルクも図太いNinja 400は、高回転を多用するスポーツ走行にも使えるし、低中回転域メインの街乗りでも非常に扱いやすいオールラウンドなタイプ。Ninja ZX-25Rがヤンチャな体育会系の下級生ならば、Ninja 400は文武両道の、やや大人の雰囲気が漂う頼りになる上級生といったところかも。
■Ninja ZX-25R(SE KRT EDITION)
全長x全幅x全高:1,980mm×750mm×1,110mm
軸間距離:1,380mm
最低地上高:125mm
シート高:785mm
キャスター/トレール:24.2°/ 99mm
車両重量:184kg
最小回転半径:2.6m
燃料タンク容量:15L
■Ninja 400
全長x全幅x全高:1,990mm×710mm×1,120mm
軸間距離:1,370mm
最低地上高:140mm
シート高:785mm
キャスター/トレール:24.7°/ 92mm
車両重量:167kg
最小回転半径:2.5m
燃料タンク容量:14L
Ninja 400の外装、フレーム、足周りは、基本的にNinja 250と共通。Ninja 400もNinja ZX-25Rもコンパクトにまとまっており、車体は両車ともほぼ同格といえる。
フルカウルを装備した外観は、どちらもサーキットが良く似合うスポーティなもの。ハンドルとステップのレイアウトは写真で見る限り、Ninja ZX-25Rの方がやや前傾姿勢で戦闘的(ハンドルの位置が低い)。
前後ホイールはどちらも徹底的に肉抜きされた、軽快なイメージの5スポーク型17インチ(ただし前後ともリム幅は異なる。詳しくは下記参照)。軸間距離(ホイールベース)はロングスイングアームを装備したNinja ZX-25Rが10mm長く、全長はNinja ZX-25Rが10mm短いのが特徴。
キャスター/トレールの数値は、両車とも直進安定性と旋回性を吟味した、大型のNinjaシリーズを踏襲したスポーティな設計となっている。
2気筒エンジンを搭載したNinja 400の重量は、400ccながら、4気筒エンジン(エンジンの総面積やエンジンの総部品点数が多くなるため、総じて重量が重くなるのが特徴)を搭載したNinja ZX-25Rよりも、17kg軽量化した167kg。ライバルのホンダCBR400R(2気筒エンジン搭載)が194kg、弟分のNinja 250が166kgだから、いかにNinja 400のエンジンがシェイプアップされているのかが分かる。この軽さは、ストリートでの取り回しはもちろん、サーキットでも強みを発揮するはず。
Ninja 400は、2気筒250cc搭載車並の軽さに加え、軸間距離(ホイールベース)が10mm短く、最小回転半径も0.1m狭いので、Ninja ZX-25Rよりも街中での取り回しは上。また、Ninja 400の全幅は40mm狭く、ハンドル幅も狭いので、渋滞路の走りやすさも、Ninja 400に軍配が上がりそうだ。
■Ninja ZX-25R
フレーム形式:トレリス
フロントフォーク:倒立型 ※インナーチューブ径:37mm
スイングアーム:ホリゾンタルバックリンク
Fホイール:5スポーク 17M/C×MT3.50
Rホイール:5スポーク 17M/C×MT4.50
Fタイヤ:110/70R17M/C 54H(ダンロップ GPR300 / ラジアル)
Rタイヤ:150/60R17M/C 66H(ダンロップ GPR300 / ラジアル)
Fブレーキ:シングルディスク 310mm (外径) +ラジアルマウント式モノブロック型・異径(上側ø32mm / 下側ø30mm)対向4ピストンキャリパー
Rブレーキ:シングルディスク 220mm (外径) + 片押し1ピストンキャリパー
■Ninja 400
フレーム形式:トレリス
フロントフォーク:正立型 ※インナーチューブ径:41mm
スイングアーム:スタンダード
Fホイール:5スポーク 17M/C×MT3.00
Rホイール:5スポーク 17M/C×MT4.00
Fタイヤ:110/70-17M/C 54H(ダンロップ GPR300 / ラジアル)
Rタイヤ:150/60-17M/C 66H(ダンロップ GPR300 / ラジアル)
Fブレーキ:シングルディスク 310mm (外径) + サイドマウント式片押し2ピストンキャリパー
Rブレーキ:シングルディスク 220mm (外径) + 片押し2ピストンキャリパー
両者ともトリレスフレームや17インチホイールを採用。前後のディスクブレーキ径も同サイズだが、ハイパワーなNinja ZX-25Rは
・ショーワのSFF(セパレートファンクションフロントフォーク)とBPF(ビッグピストンフロントフォーク)のコンセプトを組み合わせた、250㏄クラス初採用の倒立型φ37㎜SFF-BP(セパレートファンクションフロントフォーク-ビッグピストン)フロントフォークを採用
・ショックユニットとリンケージをスイングアーム上方に配置し、マフラーに大容量チャンバーの搭載が可能となり、マスの集中化にも貢献する「ホリゾンタルバックリンクリヤサスペンション」を採用。こちらも250㏄クラス初採用
・過酷なブレーキング時にも安定した制動力を確保する、異径対向の4ピストンを備えたモノブロック型キャリパーを採用。また、取り付けはサイドマウント式ではなく、レーシングモデル定番のラジアルマウント式(進行方向にボルト固定したキャリパー)を導入
など、Ninja 400の遥か上を行く、Ninjaシリーズの大型スポーツモデルにも採用のゼイタクな装備を、惜しげもなく導入。前後ホイールは、Ninja 400よりもリム幅を1サイズアップしているが、タイヤは同サイズをチョイス(この点に大きな意味があるのかは不明)。両車ともハイグリップなラジアルタイヤ「ダンロップ GPR300」がチョイスされている。
Ninja ZX-25Rのハンドル位置は、見た目ほど低すぎず、ヒザの曲がりも緩めで見た目以上に楽なポジション。サーキット走行はもちろん、街乗りもOK。785mmのシート高と絞り込まれたスリムな形状により、足着き性も良好。
Ninja 400のシート高は、弟分のNinja250より10mm低い785mm。Ninja ZX-25Rと同じく、乗車部分となるシートやガソリンタンクが中央に向かって絞り込まれており、足着き性もGOOD。
両モデルとも、アナログ式タコメーターを中央に配置したレーシーなコックピット。液晶パネルにギヤポジションを表示、その右側に多機能ディスプレイを配置したレイアウトは、兄貴分のNinja ZX-6Rと共通。