世界最小のV6エンジンを搭載したクルマとして華々しくユーノス・プレッソがジュネーブで登場したのが1991年3月のこと。「新開発の1.8ℓ、24バルブ・V6を搭載。その狙いは、4気筒とは異なるドライブ・フィール。すなわち非常に振動の少ない滑らかな走りを実現することだった。若い人たちに、V6エンジンの世界を味わっていただきたい」というのが当時の説明。まったく新しい小さなこのクーペにふさわしいエンジンを新規設計するという、とてもぜいたくなものだったのである。
(加えて言うと、本車のチーフデザイナーがmfjpでも連載をご担当いただいている荒川 健さんである)
そうしたら同年10月、三菱自動車が4代目ランサーにV6を載せて発表した。排気量は1.6ℓ。世界最小のV6エンジンの称号はわずか7カ月でこちらに移ることとなった(V6仕様のランサー6は翌年2月市販という状況だったが)。「世界のマーケットに投入する量産車種ですから、あらゆる場所であらゆる使われかたを考えなくてはなりません。そのなかには、リッチな感覚も必要になるだろうということで、それなら思い切って騒音・振動の面で有利な6気筒エンジンがあってもいいじゃないか——ということなんです」と、当時のプロジェクトマネージャーはインタビューに答えている。
■ 6A-10
シリンダー配列 V型6気筒
排気量 1567cc
内径×行程 73.0×63.3mm
圧縮比 10.0
最高出力 140PS/7000rpm
最大トルク 15.0kgm/4500rpm
給気方式 自然吸気
カム配置 DOHC
ブロック材 鋳鉄
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 PFI
VVT/VVL ×/×
(MY91 ミラージュ/ランサー)
バンク角はV6常道の60度。ブロック剛性を高めるために両バンクは閉じ構造の一体型としている。材質は鋳鉄。横置き4気筒のスペースに収めるなら幅としてV6は有利な条件にあるためか(都合3気筒分の寸法)、シリンダーはサイアミーズ型ではなく気筒間に冷却水路を持つ設計。
ディープスカート型でベアリングキャップは一体構造のラダー型と、クランクシャフトの暴れを最低限に抑える。対するクランクシャフトは細径ピンとして、剛性と高回転の両立を図っている。確認は取れていないが、等間隔点火のための60度ピンオフセットが設けられているはず。
カムトレーンはベルト駆動、サーペンタイン式の1本の長いベルトで両バンクを駆動する。バルブ駆動はローラーを備えたスイングアームを採用し、低抵抗化を図った。支点には小型化した油圧ラッシュアジャスターを装備している。
燃焼室はペントルーフ型4バルブの中央点火配置。バルブ挾み角は47度50分と、大きめの設計である。バルブ径は吸気28mm/排気24mm。ポート噴射で吸気バルブの下側に噴き蒸散させ、良好な混合気の発生を促している。
■ K8-ZE
シリンダー配列 V型6気筒
排気量 1845cc
内径×行程 75.0×69.6mm
圧縮比 9.2
最高出力 140PS/7000rpm
最大トルク 16.0kgm/5500rpm
給気方式 自然吸気
カム配置 DOHC
ブロック材 アルミ合金
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 直打
燃料噴射方式 PFI
VVT/VVL ×/×
(MY91 プレッソ)
こちらも60度のバンク角。サイアミーズ型シリンダーでボアピッチを詰めている。バンク間はこちらもバルクヘッド構造で一体型。ハーフスカート構造だがロワーブロックを備える作りとし、クランクシャフトの回転暴れを抑えている。そのため、オイルパンが非常に薄く見える。
DOHCながらカムプーリは片方のカムシャフトのみに備わり、もう一方のカムシャフトは斜歯ギヤで反転されて駆動する方式。これにより吸排気カムシャフト間を詰めバルブ挾み角を27度と小さくしている。バルブ径は吸気28.5mm/排気23.1mm。
バルブ駆動は直打式。排気バルブのリフト量を吸気バルブより大きくとり、オーバーラップは小さいカムタイミングとすることで中低速トルクを重視する設計としている。
可変共鳴過給システムを備えているのが特徴で、吸気マニフォールド内にふたつのシャッターバルブを備える構造。これらを運転状況によって開閉させ、都合6ステージの細かい吸気システムを構築している。