TEXT●塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro)
2006年モデルに搭載されたジャガー製の4.2L V8スーパーチャージャー仕様(同社はスーパーチャージドと呼ぶ)は、低速域から「キュイーン」という独特の音を奏でながら、巨体を感じさせず軽快に加速する。
今までSUVで驚いたのは、初代ポルシェ・カイエン、トゥアレグW12スポーツなど数多いけれど、レンジローバーらしく「いかにもスポーツ系」の味付けを前面に押し出してくるのではなく、奥ゆかしさを感じさせるハンドリングも伴っているのが最大の魅力。ストローク感のある足まわりは上質な乗り心地を示し、山道では大きめのロールを伴いながらも、したたかなロードフォールディングを披露してくれる。英国王室御用達のSUVは、数日乗っただけでも奥深い世界を見せてくれる。今でも憧れの1台。
昔、シトロエン・エグザンティアに乗っている先輩がいて、ハイドロのオイル漏れに遭遇したことがある。それでも、ハイドロニューマティック・アクティブサスペンションを搭載するC6への興味は尽きず、初めてステアリングを握った際の感激は忘れない。
とろけるような乗り心地なのに、高速コーナリングでも意外に粘っこく、箱根の山でも巨体であることを感じさせないハンドリングには、狐につままれたような気分になった。身体を包み込むようなシートも日本車やドイツ車、アメリカ車とは異なるフィーリングで、お金がなかったのでせめてシートだけでも欲しいなぁ、と思った記憶が残っている。
左ハンドルのMTのみというラインナップだったが、確か青いボディカラーの広報車と1週間ほどつき合ってみて離れがたいほどの印象を抱いたのがこちら。2.2Lの直列4気筒エンジンは軽やかに回り、5MTはシフトストロークも短めで、クラッチも軽く扱いやすかった。
FFでもライントレース性は抜群。コーナーをクリアする度に「スポーツ」を名乗る理由が理解できた。ストローク感があり、それなりにロールするのにキビキビ走るのも不思議だった。「スポーツ=速さ」とは限らないことを教えてくれた存在だ。同モデルが出た後、しばらく中古物件をチェックしていたのを思い出す。