TEXT●島下泰久(SHIMASHITA Yasuhisa)
3位はトヨタ ランドクルーザー。以前、コレに乗って取材に出掛けた時、「今日は疲れてるから、ちょっと乗ったら運転を替わってもらおう」と思っていたのに、あまりに気持ちよく快適で、気づけば目的地まで4〜5時間そのまま走り続けてしまったということがありました。
悪路走破性を究めれば、ボディ剛性は高まり、サスペンションストロークは長く動きは穏やかになり、エンジンもトルキーに躾けられるのが必然。実はこれって普遍的な「良いクルマの条件」なわけです。
そうして出来上がった、まさにその名の通り極上のクルーザー。なんてことない普段の道をのんびり走らせていても、本物とは何かということを濃密に伝えてくる1台です。
2位のNSXは昔のではなく今のです。高回転域まで鋭くパワフルに回る一方、レスポンスを電気モーターで補ったV6ターボエンジンと9速DCTの組み合わせは、完璧と言っていいほどの制御のおかげもあって快感しかないし、前輪のモーターベクタリングでグイグイ曲がるフットワークも爽快。雨の鈴鹿を全開で走りながら、新しい時代の走りを満喫した記憶は今も鮮烈です。
そのフットワークについては違和感を声高に主張する人も少なくなく、特に初期型では荒削りな面があったことも否定はできませんが、一方でそれは新しい時代の運転に適応できるか否かの話だとも、私は考えています。F1などを見ていても、マシンの進化で運転も変わってきてますよね? それと一緒の話です。
その意味ではNSXを操っていると、自分もアップデートされていく。そんな気がするんですよ。今更? いや今こそ真剣に欲しいな、NSX。初期型でいいんで。
そして1位はハチロク。こっちは今のじゃなくて昔のAE86です。今のもホント、いいクルマなので迷いましたけどね。
何しろ1983年デビューのクルマですから、現代の基準で見れば遅いし限界も低いけれど、エンジンはとにかくビンビン回るし、パワーが無いぶん思い切り踏める。シャシーだって簡素な分、すべての動きがダイレクトだから意のまま感は強いし、速く走らせるのは実はそんなに簡単なわけじゃありません。
つまり操っていて、未だにとにかく楽しいのがハチロク。このクルマと出会ったからこそ、私は今の仕事をしているようなものです。
実は後年、買い直したハチロクを私は今も所有し続けていて、ちょくちょくミニサーキットに通ったりもしています。ドリキン土屋圭市さん曰く「下町のスーパーカー」。この分だと付き合いは一生続きそうです。
【近況報告】
最新モデルで言えば、やはりGRヤリスでしょう。これでラリーに出ることが出来たりしたら、将来のマイベスト3に必ず入ってくるでしょうね。チャンスよ来い!
【プロフィール】
モータージャーリスト。先進技術からブランド論まで幅広くカバーする。2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。