TEXT●繁浩太郎(SHIGE Kotaro)
人生最高のクルマとなると長く生きている私はどうしても70年代の若い頃に感動したクルマが思い出される。それは、初代三菱ランサーGSRだ。
見た目のスタイリングは普通の乗用車で、そのエンジンもDOHCでなくSOHC、FRでサスペンションもストラットとリーフリジッド、というようなスペック的には何の変哲もないクルマだった。
しかし、一旦走り出すと車重やボディ剛性のバランスが良かったのか、とにかくずば抜けて高い走行性能で、さらに最高にコントロールしやすかったのだ。後々ラリーカーとして仕上げられて大活躍したのもうなずける。
「三つ子の魂百まで」と言われるが、当時若い私にとってのこの感動はその後もずっと忘れられないものとなり、今回まずこれをあげた。
形式的には、アルファロメオスパイダーやMG-Bなどの焼き直しかもしれないが、能面から発想されたという個性的なスタイリングやミッション直結のシフトフィーリングなど、静動共にライトウェイトスポーツカーと呼べるレベルで運転の楽しさを再認識させてくれたクルマだった。
私にとって唯一の不満点は、エンジンがスカタン(回らない)DOHCだったことだ。しかし、その分「扱いやすく」また結果的に「クルマとしてのバランスが良く」オープンで木漏れ日のワインディングを流すような走りは最高で、当時ぶっ飛ばす時代も終わりかけていたこともあり、結果的に多くのユーザーの支持を得た。
このクルマも「クルマの楽しさはスペックからではわからない」ということを再認識させてくれたクルマだった。
やはり、私にとってこれをとり上げない訳にはいかない。
3代目CR-Xの開発は、クーペとオープンカーの良さを併せ持った新コンセプトにチャレンジしたものだった。ルーフを電動でトランクに畳み込む方式は、ロールバーでの安全性と普段使いの荷室スペースを考え空中でルーフを受け渡しする斬新なものだった。この開発は四輪開発部門だけでなく製作所~ホンダエンジニアリングなど総力をあげて行なわれた。
V-TECの強力なエンジンを踏襲しながら、ルーフシステムで前後のウエイトバランスが良くなり、その走りは手前みそになるがなかなか鋭くまた快適なものだった。
今でも年に一回ユーザーミーティングが開かれるが、若者から年配までデルソルを楽しんでいただいているディープなユーザーは多い。
【近況報告】
「生しらす」って、専門店で食べてもネットリしていて美味しくないと思っていましたが、先日「朝」食べると美味しかったです。数時間で劣化するとわかりました。
【プロフィール】
本田技術研究所に入社し定年まで4輪開発一筋。開発責任者、開発統括として携わったクルマは軽トラからエリシオンまでその数は世界NO1 !? しかし、旧車好きで、愛車にホンダ車は殆どナシ。だいたい、FF嫌い。退職後は、ブランドコンサルタントとモータージャーナリストで会社を立ちあげるも、現実は年金を頼りに生活。
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