トライアンフらしいパワーユニットとして知られているバーチカルツイン。シリンダーを垂直に立てた水冷2気筒エンジンは、いずれも270°クランクの900ccと1,200ccが有り、最も充実したモダン・クラシックのカテゴリーを構築し現在10機種もの展開を誇る。その中でスタイリングも乗り味も異色な存在として侮れない注目を集めたのが、ボンネビル BOBBERである。今回は、さらにマッシブなデザインと、プレミアムなブラックアウト処理が施されたボンネビル BOBBER BLACKに試乗した。




REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO●徳永 茂(TOKUNAGA Shigeru)


取材協力●トライアンフ モーターサイクル ジャパン

マットアイアンストーン

トライアンフ・BONNEVILLE BOBBER BLACK.......1,815,600円

ジェットブラック.......1,789,100円

 トライアンフのホームページから引用すれば、「ダークさ、渋さ、力強さが一段とアップ」と記されている。BOBBERをベースに、さらに骨太感にこだわりを主張したスペシャルな仕上げで登場したのが同ブラック。何よりも注目すべきは前後16インチの極太タイヤの採用にある。しかもフロントフォークもφ47mmと太い。ちなみに装着タイヤはAVON製COBRAだ。


 エンジン回りを始め、全体的にブラックアウトされた仕上げは、どこかワイルドな雰囲気。BOBBER同様アルミ製のフローティングシングルシートを採用。基本的に一人乗りと割り切ったデザインも潔く、とても個性的である。


 一見クラシカルなリヤリジッドアクスルかと思えるフレームワークを見せるが、シート下にちょこんと覗くリヤショックにはリンク機構を持つモノショック・サスペンションを採用。


 クランクケースもブラックアウトされた1,200ccのバーチカルツインエンジンは、大きく立派に露出されて見え、堂々たる雰囲気を醸しだしている。基本的にはボンネビルT120と同じだが、最高出力は少し抑えられ、そのかわり最大トルクを向上。


 このスタイルにスポーツ性を求めるユーザーは稀な事だろうから、キャラクターに合わせた出力特性に、きちんとチューニングされているわけだ。


 電子制御系は他のモデルと同様に最新の技術が投入されていて、RORDとRAINが選択できるライディンブモードを備える。ABSと切替式トラクションコントロールの他、BOBBER BLACKにはクルーズコントロールも標準装備されている。

ボバーブラックの特徴的デザインであるファットフォルムを強調表現したイメージスケッチ。

貫き通す図太い乗り味をソロで楽しむ贅沢!

 着座位置の低い鞍型シートに腰を落ち着け両手足を前方に伸ばして跨がる感覚は、アメリカン・クルーザー的な雰囲気。足つき性の良さは抜群で、200kgを超える車体を支える上でも不安感はない。


 目線位置も低くめだが前方の空まで視界が大きく広がる乗り味は解放感に溢れている。周囲の美しい景観が自然と目に飛び込み、気分は何処か知らぬ土地をツーリングしているかの様に新鮮。そんな独自の雰囲気に包まれてくるのである。


 しかも骨太のマッシブなフォルムは、普通のバイクとは異なるセンスが漂い、如何にも個性的。同時に己(オーナー)の世界観を主張しながら、その心地よさを満喫する自由な乗り味が楽しめるのだ。


 ショーワ製のフロントフォークはφ47mmという太さ。これは巨漢の2.5Lモデル“ロケットⅢ”と同じサイズ。前後16インチホイールを採用し、まるで後輪タイヤを前輪に履かせてしまった様な極太タイヤを装着したスタイルはユニークかつドッシリと身構えた落ち着きがある。


 しかもタイヤのグリップ力に対する頼り甲斐のある乗り味も安心感がある。制動能力もレベルが高く、いざと言う時にはガツンと一気に力一杯かける事にも、まるで不安が無い。躊躇なく掛けやすいメリットは侮れない。


 


 エンジンはボンネビルT120とほぼ共通である。中低速を重視した出力特性が若干異なるが、6速トランスミッションや1次2次の減速比も共通。その出力特性は実用域で実にトルクフル。スロットルレスポンスも強力である。


 アイドリングは1,000rpm。ローギヤで5,000rpm回した時のスピードは62km/h。6速トップギヤで100km/hクルージング時のエンジン回転数は3,250rpmだった。


 実際はエンジンの回転数など気にも止まらず、どんな場面でも右手のスロットルをひと捻りすれば、いつも遅滞無く期待通りの逞しい加速力を発揮してくれる。コーナリングの立ち上がりでも、グイグイとダッシュできる気持ち良さがある。


 キャラクター的にあまり深く倒し込んでコーナーを攻める様な走りはしないことと、太いタイヤのグリップ感から得られる安心感からか、繊細なスロットルコントロールが要求されない雰囲気を覚え、それは扱いやすく気楽な乗り味に貢献している。


 サスペンションはストロークが少なめで、路面の荒れた所ではロードホールディグが不足気味。ドタバタとバネ下重量が重い感覚で跳ねてしまう事もあったが、それなりに速度を落とせば済む事だし、シートの座り心地はなかなか快適なものだった。


 ちなみにこのバイクは一人乗り。骨太なスタイリングと独特な乗り味に自分のこだわりを乗せて走るのも、ライダーの趣味としてはまた乙なもの。そんなユニークなキャラクターに贅沢な魅力が感じられた。

足つき性チェック(身長168cm)

低い位置にセットされたシングルシートは鞍型で座面後方がワイドで尻上がりなデザイン。シート高は690mm。ご覧の通り膝にも余裕をもって両足はベッタリと地面を捉えることができる。重量級バイクだが足つき性に不安はない。

ディテール解説

ショーワ製正立式フロントフォークはφ47mmと言う太さ。ヘッドランプとオレンジ色に光るウインカーはLED式だ。

16インチのフロントホイールにはAVON製Cobraの極太(130/90B)(MT90B)タイヤを履く。ダブルディスクブレーキは、φ310mmのリジッドマウントローターにBrembo製異径2ピストン・ピンスライド式油圧キャリパーが採用されている。

エキゾーストパイプもブラックアウトされた水冷バーチカルツインエンジン。シリンダーヘッドのフィンサイドは素材色をあらわに美しく磨き上げられている。

ほぼ水平にそして左右平行にレイアウトされたブラックマフラー。テールエンドは外側に向けてスラッシュカットされている。

フレームラインから続く(様に見える)リアアームは、リヤリジッド(ノーサス)風に見えるデザインだが、トラス形状のパイプスイングアームとシート下にモノショックが採用されている。
シート下にレイアウトされたKYB製モノショックのボトム側にはリンク機構を採用。ホイールトラベルは77mmだ。トップ側の調整リングで7段階プリロード調節が可能だが、その作業にはシートを取り外す必要がある。
リヤのシングルディスクブレーキには、φ255mmのローターをリジッドマウント、油圧キャリパーはNissin製1ピストンピンスライド式が採用されている。

ほぼフラットな黒いパイプバーハンドルにはバーエンドミラーが装備されている。前方に腕を伸ばすクルーザー的なライディングポジションだ。

ベストポジションにある赤いホーンボタンから順に、その上はウインカースイッチ、さらに上の丸いグレーはSCROLLボタンでメーター内液晶表示内容を切り替えられる。右側の丸ボタンはクルーズコントロールスイッチ。
ハンドル右側のスイッチは、上から順に赤いのがエンジンキルスイッチと始動用スタータースイッチ。中央がライディングモードのROADとRAINを切り替えられるグレーのMODEボタン、下がハザードランプスイッチだ。
取り付け位置の角度調節ができるシンプルなシングルメーターは200km/hスケールのアナログ式。モノクロ液晶ディスプレイは、オドやトリップ、燃料計やギヤポジションにデジタル回転計他、多彩な情報が表示される。

腰の落ち着きが良い鞍型のワイドシートは前後位置の調節ができる。どっかりと腰を下ろし、体重の全てを預けるライディングポジションでも座り心地は良かった。

イグニッションスイッチは右側のサイドカバー直前に位置している。手が届きやすく、扱いやすい。なお、ステアリングロックはステアリングヘッドパイプの脇でキー操作する。

薄くスッキリとデザインされたリヤフェンダー。テールエンドにマウントされたウインカーやテールランプ等はLED式だ。

きちっと平行水平に出されたツインマフラーと鞍型のシングルシートが印象的。

◼️主要諸元◼️

エンジン形式:水冷並列2気筒 SOHC 8バルブ/270°クランク


排気量:1200cc


ボア・ストローク:97.6×80mm


圧縮比:10.0:1


最高出力:77PS(57kW)/6,100rpm


最大トルク:106Nm/4,000rpm


吸気システム:マルチポイントシーケンシャル電子燃料噴射


排気システム:2 INTO 2 エグゾーストシステム(ブラックステンレススチール)


始動方式:セルモーター


潤滑方式:ウェットサンプ


駆動方式:Xリングチェーン


クラッチ:湿式多板/アシスト付


トランスミッション:6速


一次減速比:1,257(93/74)


二次減速比:2,750(44/16)


ギヤ比:


 1速:3,500(49/14)


 2速:2,500(45/18)


 3速:1,850(37/20)


 4速:1,480(37/25)


 5速:1,296(35/27)


 6速:1,172(34/29)


フレーム:スチールパイプ製クレードル


スイングアーム:スチールパイプ製両持ちタイプ


ホイール(前/後):32本ワイヤースポーク、16x2.5インチ / 16×3.5インチ


タイヤ(前/後):チューブレス130/90B MT90B-16 / 150/80R-16


サスペンション(前/後):ショウワ製φ47mmフォーク / KYB製モノショック・リンク付


トラベル量(前/後):90mm / 77mm


ブレーキ(前/後):φ310mmダブルディスク、Brembo製2ピストンフロティングキャリパー、ABS / φ255mm径シングルディスク、Nissin製1ピストンフローティングキャリパー、ABS




全幅:760mm


全高:1025mm (除くミラー)


シート高:690mm


ホイールベース:1510mm


キャスター:25.8 º


トレール:87.9mm


車両重量(乾燥):237.5kg(225kg)


燃料タンク容量:9L

⚫️試乗後の一言!

他とは異なる個性的な乗り味がクセになるかも。そのスタイルは自己主張するに相応しいアイテムになる。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 アレコレ黒い、限定色。|トライアンフ・ボンネビルボバー ブラックはタイヤもトルクも極太!