そのキーマンとなったのが、ホンダで知的財産に関わる業務に携わっている森 隆将さん。ホンダでは自社の技術を他社と共同で活用するオープンイノベーション活動を行っているが、その一環が内田洋行との取り組みであり、内田洋行との架け橋役を努めたのが森さんだったのである。
内田洋行がオフィスチェアにおいて、自動車メーカーとタッグを組むのはもちろん初めてのこと。内田洋行の門元英憲さんによると「ホンダさんも内田洋行も、人が中心の物づくりをしているという共通点がある」と語る。2018年末にホンダから提案があった時期は、ちょうどインフルエンザが流行しつつある時期でもあり、「ちょうど良いものが来た(門元さん)」という感じだったそうだ。
内田洋行が今回発売する、アレルクリーンプラスを採用した椅子は5種類。オフィスチェアが2タイプあり5万8900円〜10万5700円、ミーティングチェアは3タイプで4万2000円〜7万9500円(価格はいずれも税別)となっている。通常の生地を使ったモデルより、だいたい2割くらい価格はアップしているという。
生地は、ホンダの軽自動車Nシリーズに使われているものとまったく同じもの。ただ、クルマのシートは立体縫製なのに対してオフィスチェアは一枚張りという違いがあるほか、生地のロールを載せる設備がクルマ業界とオフィス業界では異なるため、生産できる設備を持っている工場を探すのが大変だったという。そのため、商品化には1年半くらいと通常よりも少し長い時間を要したそうだ。
「開発をしているときは自動車用のシート表皮としてしか使用しない前提だったので、オフィスチェアに採用してもらえると聞いて驚きました」とアレルクリーンプラスを開発したホンダの林里恵さん。「ホンダの技術が自動車だけでなく、そのほかの分野でも活用していただけるチャンスがあることが今回の取り組みで分かりました。今後はすべてのお客様に便利だと思っていただける商品を開発していきたい」と、抱負を語ってくれた。
ちなみに、今話題の新型コロナウイルスに関しては、試験をするところがないため効果があるかどうかは確認できていない。今後、試験方法が確立できれば、生地の実力を検証したいと考えているそうだ。