REPORT●川島秀俊
まずはミーハーなポイントとしてスタイリングから。双方とも剛管トラス形状のフレームにフルカウルというスーパースポーツらしいルックスで、正直言って甲乙はつけがたい。カウル正面にライン発光するLEDライトを仕込んだCBR250RRは、ホンダらしい先鋭的なデザインでクールな魅力を備えている。対するNinja ZX-25Rは、アッパーカウル中央に『伝家の宝刀』ラムエアダクトを装備。リヤタイヤにはCBR250RRよりワンサイズ太い150幅をセットし、無骨なまでに機能美を追い求める。図らずもメーカーごとのイメージを具現化したフォルムは、人それぞれの好みに合致する方を選べばいいだろう。
次に注目したいのは、やはりエンジンだ。とことん2気筒でのパフォーマンスを追求したCBR250RRは、Ninja ZX-25Rを迎え撃つためにピストン変更などの改良を施し、40ps超え仕様が間もなくデビュー(現モデルは38PS)する見通し。クラス最高出力の45psを発揮するNinja ZX-25Rは胸のすく高回転型の並列4気筒エンジンを搭載しており。エンジンフィールや実馬力を見ればNinja ZX-25Rが確実に一枚上手といえる。ただ、実際にサーキットを走ってどちらが速いのかというのは別問題で、車重が約18kgも軽く、中速トルクの特性に優れるCBR250RRは、新たにクイックシフターを採用(オプション扱いという情報)することで優れたコーナリング性能を伸ばす見込み。Ninja ZX-25Rの走行インプレッションがまだという現状では、早計な優劣は判断しづらい状況といえよう。ただ、興味深いのはNinja ZX-25Rがサーキットで完全にCBR250RRを凌駕した場合だ。もしもそのような結果が出れば、ホンダも250ccに4気筒エンジンを投入する可能性が出てくる。ファンとしてはヤマハやスズキも巻き込み、往年のレプリカブームが再燃するような盛り上がりを期待したい。
シャーシについては、先述した通り両車とも剛管トラス形状のフレームを採用し、コンセプトとしては似た方向性となっている。スイングアームも「への字」形状で、スーパースポーツとして行き着いたレイアウトだ。ただ、細かな部分では違いがあり、CBR250RRのスイングアームはバネ下重量の軽減とマスの集中化を狙ってアルミ製を採用。Ninja ZX-25Rはスチール製として適度な「しなり」を操安性に活かしている。
フロントサスはどちらもφ37mm倒立式フロントフォークで似た印象だが、後発のNinja ZX-25Rはショーワ最先端のSFF-BP(セパレートファンクションフロントフォーク-ビッグピストン)を採用。フロントブレーキも同じφ310mmシングルディスクだが、Ninja ZX-25Rはラジアルマウントのモノブロック4ポットキャリパー装備でワンランク上のスペックを誇っている。リヤサスはそれぞれ定評のある装備で、CBR250RRはホンダ伝統のプロリンクを採用。Ninja ZX-25Rはホリゾンタルバックリンクリヤサスペンションを250ccで初採用し、Ninja ZX-10R譲りの高次元な走りを実現する。
ほかにもライバルとして拮抗する装備が数々あり、Ninja ZX-25Rが装備するアシスト&スリッパークラッチに対抗して新型CBR250RRも同様のクラッチを新採用する見込み。両車とも電子スロットルの特性を生かして走行モードの選択ができるが、CBR250RRがシンプルな3パターンのライディングモードなのに対し、Ninja ZX-25Rは2種類のパワーモードと3種類のトラクションコントロールを組み合わせ、より多彩なシチュエーションに対応可能だ。
電子制御の進化は後発のNinja ZX-25Rに軍配があがるが、かねてからリッタークラスに匹敵する装備は価格の高騰材料として懸念されていた。しかし、正式発表されたNinja ZX-25Rの価格はスタンダードモデルが82万5000円と意外に安く、CBR250RR(ABS付き)が82万1700円なのに対してかなりのお得感をアピールする。次世代のCBR250RRは一部では上位モデルが88万円程度と予測されているが、それに比べればNinja ZX-25RのSEモデル(上位グレード)が91万3000円なのは、クラス最高価格とはいえ相当に攻めたプライスと言えるだろう。2021年モデルのNinja ZX-25Rは、国内で5000台という強気の販売目標で投入されるが、それでもバックオーダーが発生するのは必至! リッターバイクの扱いに疲れ、ダウンサイジングしたいベテランライダーからも注目されている。今、250ccスーパースポーツを買うなら、注目度も性能も間違いなくNinja ZX-25Rが優位!! 250ccで直4エンジンが楽しめるというアドバンテージは、CBR250RRには真似できない領域なのだ。