TEXT◎牧野茂雄(MAKINO Shigeo)
高性能エンジンはコンサバティブ
レクサスLFAだけに搭載されたトヨタ初のV10エンジン。高回転高出力を売りにするエンジンには、奇をてらった設計は不向きである。したがって、このクランクシャフトは古典的な外観をしている。ひとつのクランクピンで左右バンクのピストンをひとつずつ抱く。愛知製鋼によれば「とても苦労しコストもかかった完全バランスのクランクシャフト」とのことだ。搭載車両が高価だけにNV性能への配慮は必須であり、エンジン回転の上昇側だけでなく「落ち」側にも配慮している。これより気筒数の多いクランクシャフトはセンチュリー用のV12だが、こうしたマルチシリンダーエンジンは一度廃止するとノウハウが途絶えてしまう。生産継続を望みたいエンジンだった。