マセラティが驚くべき新エンジンを開発、発表した。「マセラティ ネットゥーノ (Nettuno)」と名付けられた3.0ℓV6ツインターボエンジンのハイライトは、現代F1エンジンのキー技術である「プレチャンバー」を採用していることだ。ほかにも注目すべき技術が満載されている。

プレチャンバー技術を採用した革新的エンジン登場

フロントに縦置きされるV6ネットゥーノ (Nettuno)エンジンをバルクヘッド側から見る。

反対側から見る。バルブ駆動はDOHC、吸排気に可変システムがつく。

 まずはスペックから見ていこう。




エンジン形式:90°V型6気筒DOHCターボ


排気量:3.0ℓ


ボア×ストローク:88mm×82mm


圧縮比:11.0


点火順序:1-6-3-4-2-5


最高出力:630ps/7500rpm


最大トルク:730Nm/3000-5500rpm


過給機:電動ウェイストゲート付きターボチャージャー


点火システム:パッシブプレチャンバー+ツインスパーク


オイルシステム:可変容量式オイルポンプ+ドライサンプ


燃料供給:PDI(DI+PFI)


エンジン幅:1000mm


エンジン高:650mm


エンジン長:600mm


エンジン重量(DIN)220kg未満


エミッション:Euro6d/China 68/Ulev 70

 マセラティが開発した3.0ℓ90°V6DOHCツインターボは、「マセラティ ネットゥーノ (Nettuno)」と名付けられた「100%マセラティ、100%メイド・イン・モデナ」のエンジンだ。マセラティ技術陣が開発した未来型エンジンで数々の国際免許を取得しているという。

エンジン上面視。サイズはエンジン幅:1000mm エンジン高:650mm エンジン長:600mm エンジン重量(DIN)220kg未満

 開発は、旧マセラティ・コルセ拠点に設けられたワークショップ(Via Delle Nazioni)、そしてマセラティ本社に隣接するエンジン・ハブ(Viale Ciro Menotti)で開発され、モデナ工場で生産される。

広報写真としては珍しい図面。インジェクターが各気筒2本ずつあるのが確認できる。ドライサンプだから底部のオイルパンが非常に薄いことがわかる。

従来のスパークプラグがある位置がかなり独特だ。これでもきれいに燃焼するということは、ポート噴射を併用するシステムゆえだろうか。

 エンジンの技術的ハイライトは、なんと言っても「プレチャンバー」を採用したこと。プレチャンバーとはセントラル電極と従来の燃焼室の間に燃焼室を設けて、これを連結する。この間には特殊形状の複数の孔で繋がっている。プレスリリースには、「セントラル電極」と「従来型スパークプラグ」という表現をしている。




 エンジンがプレチャンバーを必要としない(リーンバーン領域でない通常の燃焼領域)では、プレチャンバー用のセントラル電極は作動せずに横置きのスパークプラグで点火するという。


 図版を見る限り、通常のスパークプラグの位置はかなりシリンダー壁に近いところにある。

図版を拡大してみた。燃焼室トップの直噴インジェクター(Max350bar)の周りがプレチャンバーなのだろうか。カムはラッシュアジャスター付きローラーフィンガーフォロワー式。

 燃料供給は、PDIとなっていて直噴(DI)+ポート噴射(PFI)を併用するシステムだ。つまりトヨタのD-4Sのようなシステムだ。最大燃料噴射圧はDIが350bar、PFIが6barだ。DIの最大燃料噴射圧の350barは現在のガソリンエンジン用DIシステムでは高い方だ(例外はマツダSKYACTIV-Xの700bar)。

ターボチャージャーはバンク外側に2基つり下がるカタチだ。

ターボチャージャーは電動ウェイストゲート付。

オイル潤滑はドライサンプ方式を採る。

 V6エンジンでVバンク角が90度というのは、リリースには「伝統的な」と表現してあるrが、90度V6という選択は90度が理論値のV8エンジンから2気筒を除いて仕立てたユニットであることが多い(V6の理論値は120度)。




 このマセラティ ネットゥーノ (Nettuno)は90度を選択したうえで、ターボをバンク内に納めずにサイドに吊り下げている。スーパースポーツのフロントエンジンコンパートメントに余裕がある表れだろう。

 このエンジンは、マセラティの新型スーパースポーツカー、MC20に搭載される。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 「マセラティ ネットゥーノ (Nettuno)」プレチャンバー技術採用の超弩級エンジン登場