TEXT●安藤眞(ANDO Makoto)
僕がクルマに求めているのは、道具としての優秀性。人の能力を低下させる安楽装置は、必要ないと思っている。そんなクルマの原初的性能に特化した(というより、誕生した1977年から変わっていない)のが、ロシア・アウトヴァーズ社製のラーダ・ニーヴァだ。
モノコックボディのSUVながら、フルタイム4WDのトランスファーにはローレンジとセンターデフロックが付いており、悪路走破性はバッチリ。サスペンションはフロントが独立懸架なので、日常での乗り心地も悪くない。エンジン縦置きなので重量バランスは良いし、5MTもある。ボディサイズは5ナンバー枠に収まるので、日常の足としても使いやすい。
心配なのは、いつ生産中止になってもおかしくないところ。無くなる前に、ぜひ所有してみたい。
地球温暖化で気象災害が多発したり、近いうちに必ず来る巨大地震で大規模停電した場合に備えて、「電源車」としてのハイブリッド車(HV)を所有していると安心できそうだから。EVも電源車にはなるけど、電池を使い切ってしまったらおしまい。2019年に千葉県を襲った台風被害のように、送電網の復旧に数週間を要するような場合、HVなら救援物資でガソリンさえ届けば発電を続けられる。PHVは電池が重くハンドリングが軽快でないし、戸建て住まいでないと自宅充電できないから、普通のHVのほうがいい。
そういう理由なのでHVなら何でも良いのだけれど、災害で荒れた路面をもっとも安心して走れそうなのはRAV4だ。
かつてJA22型〜JB23型とジムニーを乗り継いだが、豪雨や豪雪の際にも、すごく安心感が高かった。狭い林道を走るのも安心だし、ちょっとスペースがあればUターンもできる。アウトドア遊びが大好きな自分のライフスタイルには、ジムニーがベストだ。しかも2WD時は後輪駆動なので、オンロードではFR感覚でドライビングも楽しめる。JB64型になってからは車中泊もしやすくなったから、「終のクルマ」はJB64型に決めている(たぶん10年後もフルモデルチェンジしていないはず)。
このクルマで乗降性がしんどくなったり、MTの操作がおぼつかなくなったりしたら、免許を返納するつもり。
■安藤眞(あんどう・まこと)
国産自動車会社のシャシー設計部門に約5年間勤務の後、退職。建具屋の修行や地域新聞記者を経て、自動車ジャーナリストとなる。メーカー在職中はSUVの担当だったことから、車歴は最初の2台を除いてSUVかMPV。UBS55型ビッグホーン(いすゞ)のパッケージングとサイズを現代の技術で蘇らせたら、絶対買おうと思っている。
あとどれだけクルマに乗れるだろうか。一度きりの人生ならば、好きなクルマのアクセルを全開にしてから死にたいもの。ということで、『乗らずに後悔したくない! 人生最後に乗るならこの3台』と題して、現行モデルのなかから3台を、これから毎日、自動車評論家・業界関係者の方々に選んでいただく。明日の更新もお楽しみに。(モーターファン.jp編集部より)