ピストンピンには非常に大きな力がかかる。例えばボア径85mmのエンジンで最大ガス圧力が55kgf/cm²の場合、ピンには3120kgfもの力がかかる。従ってピン径はなるべく太くしたいところだが、重量とコンロッド小端部の寸法的制約があるので、強度とのバランスが求められる。ピン穴への固定方法は、両端をスナップリングで固定するフルフローティング式と、コンロッドブッシュに圧入する方式があり、現在ではほとんどがフルフローティング式である。
コンロッドには、大小端円周には引っ張り、大端肩部には引っ張りと曲げ、棹部には引っ張りと圧縮、さらに捻りという複雑な応力がかかる。そのため小端と大端をつなぐ棹部は両端を左右二本でつなぐのが理想だが、ビッグボアでないとシリンダー下部に当たってしまうため、通常は一本で支える。一般的なのは上から見た断面がI形状のもの。ただし金型による鍛造が必須となるため、切削加工が可能なH断面のものもあるが、形状としては理想的ではない。
大端部には排気→吸気行程の上死点で慣性によって大端部が引っ張られるクローズインという現象が起き、焼き付きの原因となる。大端下部(キャップ部)と棹部の剛性が影響すると同時に、分割された大端部を締結するボルトの材質・締結方法が重要となる。コンロッドボルトの締結は、トルク管理、角度管理の他に、ボルトを弾性域内で締めるか、塑性域まで締めるか、メーカーや用途によって様々なノウハウがある。材料はクロームモリブデン鋼が多い。一部にはアルミ合金鍛造やチタン合金、焼結素材も見受けられる。
棹部の長さはそのまま運転中のコンロッドの傾きに現れる。棹部が短いと傾きが大きくなり、ピストンスラップとフリクション増大を招く。回転数が高いほどその影響が多いため、高回転エンジンほどストローク長に対するコンロッド長が大きい。両者の比率を連棹比と呼び、エンジン性能のひとつの指標になっている。