クランクウェブの厚さもやはり剛性確保には影響が大きい。ウェブ部にはカウンターウェイトが取り付くため重量が大きく、ボアピッチの制約がここにも反映されるので、厚くすればよいというものでもない。ウェブ厚が泣き所となるのは水平対向エンジンで、対向するシリンダーのオフセットを小さくするため(エンジン長と偶力の発生に影響する)他の形式より薄くしなければならない。従ってクランク単体で見れば全長こそ短いものの水平対向のクランク剛性は低くなる。それを補うためにジャーナル&ピン径は大きくし、強固なクランクケースで両側から挟み込んで支持剛性を上げる必要がある。
V型エンジンでは対向するシリンダーのコンロッド大端部をひとつのピンで共有する。V型のなかでもV6は理論的なバンク角である120°バンクを搭載条件から成立させることが難しいため、共有するピンをオフセットさせる。60°バンクはオフセット量が60°と大きいのでピン間にウェブを挟む。90°バンク(30°オフセット)ならばピンなしでも可能。前者はクランク長が長くなり、後者は剛性面で不利。いずれにせよV6のクランクには構造上の無理が多い。
カウンターウェイトはピストンの上下に伴う一次の慣性振動をキャンセルすると同時に、ジャーナルにかかる上下慣性力で微視的にクランクが曲がりメタルが外側に片当たりすることを防止する役割を持つ。また、市販用エンジンでは低周波の加振力を低減して静粛性を上げる目的もある。理論的には慣性力とウェイトが釣り合うように両者のバランス率を100%にすべきだが、そうすると重量が増えるため、典型的な直4エンジンでは50~70%とすることが多い。不足分は他の気筒の加振力を利用して充当することになるので、多気筒エンジンの方がバランス率については有利となる。ただし高回転を多用するレーシングエンジンではバランス率をもっと高める必要性がある。
ウェイトの効果を高めるためにはクランク中心から離れた位置に配置して遠心力を利用する方が効果が高い。最も負荷のかかるピンとジャーナルには応力が集中し、破損のリスクを内包するため、ピン&ジャーナルとウェブの境目には隅Rを付けるほか、R部に加圧ローラーを押しつけて局所的に塑性変形させ圧縮残留応力を付加するフィレットロール加工が施される。
ピンとジャーナルにはオイルを供給するための孔が開けられる。ピンとジャーナルを一直線に貫通するストレートドリル式と油圧低下を防ぐためにT字型ドリル式があり、後者が一般的である。