WakuWakuは4ドアなのだが、後席エリアはマルチユーススペースとして、乗ることもできるがさまざまなスポーツギアの積載場所として使いやすいものとなっている。そのアイデアはルーフにも及び、フロント席側は大きなグラスルーフ、リヤ側は一体型のルーフボックスとなっている。後席以降は、人も荷物も心置きなく載せられる自由スペースという考え方だ。
ここから生まれた新型タフトだが、やはり特徴となるのがリヤウインドウを小さくしていることだ。これによって、フロント席とちょっと違うリヤエリアをイメージさせる。また全車標準装備でグラスルーフを採用するなど、前席はサンルームのような明るさに満たされる。さらにインテリアカラーも前席と後席で分けられていて、後席側の機能が前席とは異なることが主張されている。残念ながら、ビルトイン型のルーフボックスは装備されなかったが、そのぶん頭上空間はたっぷりととられた。
ボディは直線基調というだけでは、言葉が足りなそうだ。凝縮したかたまり感を示すのに、インゴット=鋳造からの削り出しという表現が使われることがある。しかし、それともちょっと違う印象だ。むしろ、押出し材のような硬さを感じたりする。そのベースボディに機能部品を組み付けることで仕立て上げられたような形だ。面質は極めてフラットに近いながらも、薄い鉄板のペナっとした感じがなく、しっかりとした厚みが感じられる。
もはや “車かくあるべし” のデザインではなく、精密機器を持ち運ぶためのPROTEXなどのような、プロテクター・ツールケースに駆動輪を付けたようなイメージに近い。新型タフトはかつてのネイキッドとよく比較されるが、本来の目的や質感などはまったく異なると感じられる。
コンセプトカーのWakuWakuは、2人乗り +〔2人+使い倒せる荷室〕というイメージ。リヤドアの印象を消すようなコンセプチュアルなスタイルだ。“頭でっかち” なこのままの形で登場すれば、かなり個性的なものとなったはず。新型タフトでは、この後席以降のコンパクト感がなくなり、ある程度明確な4座感も打ち出された。…とは、残念な思いにはなるが、遊びの単位として4人が均等に快適なエリアを確保できるのは、決して悪くない。
ちなみにハイラックスサーフも2代目以降は、ルーフもスチールの一体型となり、ドアも4ドアとなっている。それでもサーフとしての立ち位置を明確にし続けている。
ところで、競合といってすぐに思い出すのはスズキ・ハスラーだろう。ハスラーは、ライトSUV的存在として市場を大きく変えるほどの影響力を持つモデルだ。さらに、スズキの軽自動車にはオフロード界でも一目置かれるジムニーもある。
ダイハツとしては、軽自動車としてハスラーやジムニーなどのようなSUVカテゴリーがなく、よりごついモデルが欲しいところだ。そんな視点でいうと、ポジション的にはジムニーとハスラーの間くらいのモデルがタフトだといえそうだが、前述の通り前席より後ろはマルチスペースという考え方がある時点で、大きく異なる位置にいる。
ここまで読み進めていただければ、だんだんタフトの立ち位置が見えてくるのではないだろうか。
実際のところ、ハスラーとはフォルムや構成要素の扱いなどにも似ている点が結構あったりする。
前後フェンダーカバーの黒い樹脂が、前後に回り込む造形は同じ考え方だ。しかしそんなことがあっても、印象はまったく異なる。
それは、元々の発想の起点が異なるからだが、造形イメージもタフトは大切なものを守るプロテクター・ツールケースという道具箱に徹したものに感じられるからかもしれない。モノに徹した、頼れるギアという印象だ。
かつてのタフトは、完全なクロカン4駆だった。コンパクトでありながら行動範囲の広さが魅力だった。そんなヘビーさを、新型タフトは現代的にストリートダウンして見せた。新型にはそんな解釈もできる。
さらにわかりやすくいうならば、ハスラーは週末に家族で洗ってあげるのも似合う、新たなファミリーカー。そしてタフトは、キズも勲章になるような、ガンガン使い倒すヘビーツール、というところかもしれない。