トヨタは、中国における燃料電池車両(FCV)普及に向けて志を同じくする6社(詳細下記)が新会社「連合燃料電池システム研究開発(北京)有限会社」の設立に向け、合弁契約を締結したと発表した。

 新会社の名称は、連合燃料電池システム研究開発(北京)有限会社。主な業務内容は、中国におけるクリーンなモビリティ社会に貢献する商用車用の燃料電池システムの開発である。

• 中国第一汽車股份有限公司(以下、一汽)


• 東風汽車集団有限公司(以下、東風)


• 広州汽車集団股份有限公司(以下、広汽)


• 北京汽車集団有限公司(以下、北汽)


• 北京億華通科技股份有限公司(以下、億華通)


• トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)




 一汽、東風、広汽、北汽は、中国の大手商用車メーカー(もちろん乗用車も生産している)。一汽と広汽はトヨタが合弁を結んでいる。東風は中国の中大型商用車では最大手。北汽は二番手メーカーだ。商用車メーカー大手で今回の新会社に加わっていないのは、長安汽車、上海汽車、江淮汽車くらいだろう。


 また、北京億華通科技股份有限公司(SinoHytec)は、中国の燃料電池システムメーカーで水素燃料電池のスタックを製造している会社だ。




 新会社の出資比率を見ると、あくまでもトヨタ主導であることがわかる。


出資比率:トヨタ65%、億華通15%、一汽5%、東風5%、広汽5%、北汽5%

 中国では2016年に公表された「中国国家省エネ車及び新エネ車ロードマップ」に基づき、グローバルでも類を見ないスピードで商用車を中心にFCV市場が拡大しつつある。この変化の激しい中国市場においてFCVを普及、定着させるには個社で取り組むのではなく、従来にないオープンな体制で、業界を挙げてFCV普及の基盤づくりに取り組むことが不可欠とトヨタは考え、志を同じくする6社連合で研究開発会社を設立することになったという。


 


 中国はBEV(電気自動車)、FCEV(水素燃料電池車)の普及を図っている。そのうちのFCEVについては、水素燃料電池についての技術的な基盤が弱い。つまり技術に自信がないのだ。一方、FCEVの普及に欠かせない水素インフラを国を挙げて作り上げるのは中国の得意とするところだ。


 トヨタはFCEVに関する知見については世界最先端である。今回の新会社は中国がトヨタに「水素燃料電池の技術・ノウハウ」を提供してほしいという意図のもとに組み上げられた枠組みなのだと推測する。トヨタの出資比率65%というのは、そういう意味だろう。




トヨタのプレスリリースには、こう書いてある。

北京億華通科技股份有限公司(SinoHytec)の燃料電池

トヨタの燃料電池バス「SORA」
トヨタと日野が共同開発する燃料電池トラック
商用車開発ノウハウや市場経験が豊かな中国を代表する完成車メーカーと、FCシステム開発の経験、及び市場での実績を有する億華通とトヨタがFCV普及に向けた“仲間”として手を組むことで、競争力があり、中国における各種規制にも適合した燃料電池システムを開発することが可能となると考えています。具体的には、6社協議で商品を企画し、中国での性能ニーズを満たす「FCスタック等のコンポーネント」、それを支える「FCシステム制御」、そして「車両搭載」までの一連の技術開発を一気通貫で行います。これにより、開発から製品化までのリードタイムを大幅短縮し、中国の商用車市場におけるFCV普及を各段にスピードアップさせることができると考えています。FCV普及に不可欠な動力性能・燃費・耐久性など商品力に優れ、低コストで競争力ある燃料電池システム及び主要コンポーネントの開発にチャレンジしていきます。


新会社では、中国における水素社会の実現に向けたFCVの普及に努め、またそれらを進化・発展させることにより、CO2排出量の削減、大気汚染の低減などの環境問題解決に貢献し、中国のよりよいモビリティ社会に向けてお役に立つべく、取り組んでまいります。

名称:日本語 連合燃料電池システム研究開発(北京)有限会社


中国語 联合燃料电池系统研发(北京)有限公司


英語 United Fuel Cell System R&D (Beijing) Co., Ltd.


所在地:中国 北京市


面積:約19,000m2(予定)


代表:董事長:董長征、総経理:秋田隆(予定)ともにトヨタ自動車投資有限会社から


従業員数:約50名(2023年までに段階的に約100人にまで増やす計画)


総投資額:約50億1900万円


出資比率:トヨタ65%、億華通15%、一汽5%、東風5%、広汽5%、北汽5%

トヨタの寺師茂樹 執行役員


「新会社は、トヨタのグローバルにおけるFCV戦略上、大きな意義を持っています。これほどのスピード感のある自動車市場は中国をおいて他になく、FCV普及という共通の目標に対して、共に協力し合う“仲間”を得ることができ、非常に心強く思います。常々申し上げているように、電動化推進には「仲間づくり」が重要で、中国における商用車市場で大きな影響力を持つ各社と、さらに確かな技術力を持つ億華通と一緒に取り組むことにより、中国におけるFCV普及の足掛かりができると考えています。トヨタは中国におけるFCVの発展・促進に向け、パートナー各社とのオープンな協業関係を通じ、取り組みを深化させていきます」




一汽集団の王国強 副総経理


「中国一汽は、“地球環境を最大限に保全する”という理念の下、燃料電池技術を発展させると共に、志を同じくするパートナーと連携し、すべての関係者が利するWin-Winの関係を目指しております。各社力を合わせてリソーセスを共有することで、互いの優位性を生かせる燃料電池開発基盤を構築し、共に環境に優しいクルマ社会を作り上げることを切に期待しております」


東風集団の尤峥 副総経理


「FCVの開発は、今、まさに新しい時代を迎えようとしています。FCVの発展・普及において、多くの人と理念を分かち合い、産業の成熟までの様々な困難を共に乗り越えていくことこそが水素社会実現の鍵だと考えます。今回、東風・一汽・北汽・広汽・億華通・トヨタが共同で新会社を立ち上げ、商用車用の燃料電池システムの研究開発に専念し、FC産業発展の基盤づくりに取り組むことは、自動車産業の歴史においても、前例のない新しい試みと言えます。東風は、よりオープンで、より合理的かつ現実的なビジョンを持った上で、環境に優しく低炭素な環境車開発の新たな道をパートナー各社と共に模索していきます。長く険しい道ですが、水素社会を実現するには、業界をあげてのさらなる努力が不可欠との信念のもと、新会社は、新しい局面を打開することにチャレンジしてまいります」




広汽集団の馮興亜 総経理


「広汽集団は、他のパートナーと共に合弁会社を設立し、中国におけるFCV普及に取り組めることを大変光栄に思っています。新会社では中国市場で必要とされる各種技術開発を通じて、競争力のある燃料電池システムをタイムリーに開発し、中国商用車市場におけるFCV普及を加速させ、中国におけるFCV産業の発展を推進、ひいてはより良いモビリティ社会の実現に貢献できることを信じています。広汽集団は、引き続き各種イノベーション活動を通じて社会の発展を促進することを目的に、新エネ車分野に注力し、パートナーと共に中国における燃料電池産業の発展を推進して参りたいと考えております」




北汽集団の張夕勇 総経理


「中国はFCV発展のスピードが最も速い国のひとつであり、燃料電池技術が発展期を迎えようとしている中、商業分野での運用も一部地域で展開が始まっています。北京汽車集団は、新エネ変革の積極的な担い手として、グローバルでの戦略的ビジョンを持つパートナーと共に、中国自動車産業が直面する課題への対策を検討し、水素技術の革新と研究開発分野での協業を強化していきます。今回の新会社は、オープンで協力的な研究開発プラットフォームを目指しており、トヨタの先進的な水素燃料電池技術、億華通のシステムインテグレート分野での実力及び各完成車メーカーの製造・マーケットでのノウハウを集結できると考えています。各社のリソーセスの共有及び技術革新努力により、近い将来の水素社会の実現や中国ひいてはグローバルのクリーンエネルギー革命に共に貢献できると信じています」




億華通の張国強 董事長


「水素産業が省エネ・CO2低減の促進、エネルギー転換の重要手段であることはすでにグローバルの共通認識となっています。自動車分野においても、燃料電池システムはクルマのゼロエミッションを実現するための重要なソリューションとされており、今後のマーケット競争の中核になってくると考えられています。中国では、水素に転換できる各種エネルギー資源が豊富であることに加え、市場も大きいので、関連政策の整備に伴い、水素産業の発展が益々期待できます。今回の新会社が、よりオープンで・協力・共有できる水素エネルギー産業の構築や、水素利用及び産業の発展につながり、中国国内の水素社会の基礎づくりとなることを信じています」

情報提供元: MotorFan
記事名:「 トヨタと中国の本気 中国における水素社会の実現に向け、6社連合で商用車用の燃料電池システムの研究開発会社を設立