先にデビューした401との違いなども含め、都会の街で試乗してみた印象をお届けしたい。
REPORT●ケニー佐川(SAGAWA Kentaro)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
SVARTPILEN 250のコンセプトは「BACKROAD EXPLORER」。直訳すると“裏道の冒険者”、アスファルトジャングルを縦横無尽に走り回って新たなルートを開拓する都会派スクランブラー。そんな感じだろう。701、401に続くシリーズ最小排気量モデルとして今年の4月に投入され注目を集めている。
現在KTMグループ傘下のブランドになっているハスクバーナでは、KTMとプラットフォームの共有化を進めている。SVARTPILENシリーズに関しても、よりオンロード指向のVITPILENシリーズも含め、KTMのDUKEシリーズが開発ベースとなっている。簡単に言うと「SVARTPILEN 250」は、走りのパフォーマンスとバランスの良さで高い評価を得ている250DUKEと同じエンジンとフレームを持ったマシンである。つまり、血統書付きというわけだ。
だが見た目は独創的だ。むき出しの鉄フレームや武骨なホイールがクラシカルで道具的な雰囲気を醸し出すとともに、丸目なのにLEDのヘッドライトや滑らかな一体成型ボディが近未来的でもある。スウェーデンというお国柄か、クールで知的な美しさが漂っていて、いつ見ても不思議な世界に誘われそうな北欧デザインの妙である。
エンジンは250DUKE譲りの最高出力31psを発揮する水冷単気筒DOHC250ccで、同様に高強度なクロモリ鋼管をヤグラ状に組んだトレリスフレームに搭載。足まわりにはWP製の倒立フォークと直押しタイプのモノショックに、Bosch製ABSシステムを標準装備したByBre製の前後ディスクブレーキを組み合わせるなど充実。ちなみにサスペンションのセッティングを含む足まわりについては、250DUKEとは異なる仕様になっている。
跨った瞬間、そして走り出した途端、マシンのすべてがすっと自分の体に入ってくるような感覚。カタチからくる印象とはいい意味でまったく違う、馴染みやすさを持ったマシンだ。
まずエンジンがいい。鼓動感があって低中速から力強く、その気になれば1万rpm以上まで回ってくれる伸びもある。バランサー装備なのでシングルの割に振動が少ないのも良い。だから、単気筒らしくトコトコと街を流すのも気持ちいいし、パワーバンドに入れてギンギンに引っ張ってもまた楽しい。元気いっぱい歯切れのよいエンジンだが、馬力がありすぎない分安心してスロットルを開けられる。そこが250ccならでは。フラストレーションさよならだ。
エンジン以外はほぼ共通の車体を持ったSVARTPILEN 401にも以前乗ったが、こちらは排気量も馬力もトルクも約1.5倍もあるので、街中ではそうそう開けられなかった記憶がある。401はたしかにエキサイティングだが、その分気を遣うところもあるのだ。
ライポジもしっくりくる。シートは極端に低いわけではないが、スリムな車体と沈み込む前後サスのおかげで足着きも良好。ハンドル位置も高めなので上半身も楽だ。
車体に関してはフレームががっちりしていて、前後サスが柔らかめな印象。401のパワーに対応した設計なので当たり前ではあるが、剛性感のある車体のおかげでハンドリングは軽快かつビシッと安定している。一方で路面のギャップに対してはストローク量(前後とも142㎜)をたっぷりとったサスペンションがしなやかに追従してくれるので乗り心地も良く、路面の荒れなどあまり気にせずにぐんぐんペースアップできてしまう。そこで、あらためて都会のスクランブラーなんだと実感。BYBRE製ブレーキも確実なタッチで、特にフロントのラジアル4ピストンは軽い車体を瞬時に減速させてくれるし、ABSもレースタイプのように握り込んだ奥で効くタイプなのでスポーティな走りも楽しめる。気に入ったのがインドのブランドMRF製のタイヤで、デュアルパーパスタイプだがオンロードでもしっとりとしたグリップ感で乗り心地も良かった。
ちなみに401はもっと厳ついブロックタイヤでホイールもワイヤースポーク仕様だったことを考えると、250のほうがさらにオンロード重視の想定だろう。
他の何にも似ていない個性的なスタイリングはそれだけでカッコよく、実際に街中でも目を惹くし、装着されているパーツもクオリティも高いので所有感を満たしてくれるはず。そして、走りの良さは前述のとおりだ。「SVARTPILEN 250」はニーゴーでも威張れる本格的な外車なのである。