生産能力削減やルノー・三菱とのアライアンス強化によって構造改革の実現を目指すが、ゴールまでの道のりは険しく、遠そうだ。しかし、暗いトンネルの先に明るい光が見えたような気がした。会見の最後を締めくくったイメージビデオに、サプライズが隠されていたのである。そう、次期型フェアレディZが(不鮮明ではあるが)姿を現したのだ!
日産が5月28日、オンライン会見で発表した2023年度までの4か年計画の中では、「今後18か月の間に少なくとも12の新型車を投入する」ことが謳われていた。これまでの日産は生産規模の拡大を追いかける一方で、新型車の投入で後手をとっていた。その遅れを一気に挽回する計画である。
6月中旬には、アメリカで小型SUVのローグを一新する。アメリカにおける日産の最量販車種であるだけに、新型ローグにかかる期待は小さくない。
そして、同じ6月には日本で新型キックスが日本でデビューする。キックス自体のデビューは2016年だが、日本に導入されるのは、先日タイで発表されたビッグマイナーチェンジモデル。日本仕様では、全車にe-POWERが搭載される。
7月には、クロスオーバーEVのアリアを発表する。2019年の東京モーターショーではコンセプトモデルが展示されていたが、その市販版だ。先進運転支援技術のプロパイロット2.0や最新のEVパワートレーンなど数々の最新技術が投入されて、新しい日産の顔としてブランドを牽引する役割も担う。また、投入時期はアナウンスされなかったが、インフィニティQX55も直近のラインナップに含まれていた。
オンライン会見の最後には、イメージビデオが流された。冒頭、「NISSAN NEXT」というタイトルが表示された後、今後18か月の間に投入される新型車と思われるシルエットが、車名のアルファベット順に映し出された。
「ARIYA(アリア)」
「ARMADA(アルマダ)」
「FRONTIER(フロンティア)」
「KICKS(キックス)」
「MURANO(ムラーノ)」
「NAVARA(ナバラ)」
「NOTE(ノート)」
「PATHFINDER(パスファインダー)」
「QASHQAI(キャシュカイ)」
「ROGUE(ローグ)」
「TERRA(テラ)」
...そして、「Z」!
不鮮明ではあるが、横からのスタイルはまさに初代フェアレディZ(S30型)をほうふつとさせるもの。1999年に発表された「Zコンセプト」もS30型を現代に蘇らせたようなデザインで好評だったが、それと似たシルエットにも見える。
もう少し、映像を見てみよう。
ルーフはなだらかにリヤエンドに向かって下降する。上部にはメタル調のガーニッシュがあしらわれており、なだらかなルーフの形状を強調しているようだ。
ロングノーズを印象づけるボンネットだが、中央部にパワーバルジが設けられているように見える。これもS30のオマージュだろうか。
そのほか、デイタイムランプの光り方やチンスポイラーのように前側に突き出したバンパー下部の形状もユニークだ。
イメージビデオの最後は、「Z」のエンブレムで締めくくられた。S30型の時代のデザインにそっくりではないか。次期型フェアレディZがS30型をモチーフにしているのは、「Z」のエンブレムからもうかがえる。
これらの映像はCGで、リヤデザインやディテールはわからないが、多くのZファンを納得させるデザインになっているのではないだろうか。
期待は高まるが、今回のオンライン会見で日産が投入を明言した新型車は前述の「ローグ」「キックス」「アリア」「インフィニティQX55」だけで、それ以外はイメージビデオ内でシルエットと車名が流されただけ。その存在が明言されたわけではない。
しかし、ここまで見せておいて「あれは市販車とは関係ない単なるイメージ映像でした」で終わらせるとは考えられない。
思えば、カルロス・ゴーン氏が1999年に日産のCOOに就任し、再生請負人として行った仕事の一つに、フェアレディZの存続があった。毀誉褒貶が相半ばするゴーン氏だが、Z33型の開発を再開させ、2002年の発売までこぎつけたことは、クルマ好きからすれば、氏の大きな功績と言えるのではないだろうか。
皮肉なことに、日産は近年、そのゴーン氏の逮捕によってブランドイメージに大きな傷がついた。次期型フェアレディZは、新生日産を象徴するイメージリーダーにも格好の存在となるのではないだろうか。日産ファン、そしてスポーツカーファンは、その一刻も早い登場を願うばかりである。