『ランデブー』は、恋人に会うために早朝のパリを疾走するクルマのオンボード映像が収められた約8分30秒のショートフィルムだ。ストーリーはほぼ皆無だが、フェラーリ275GTBの全開エンジンサウンドをバックに、ノンストップ(赤信号はすべて無視)でパリの街中を縦横無尽に駆け抜けていく様子は、一見の価値があるだろう。凱旋門やコンコルド広場など名所も登場するが、撮影は道路を封鎖することなくゲリラで行われたというのだから驚きだ。
今回、ルルーシュ監督が手がけた『Le Grand Rendez-Vous』は、その名作『ランデブー』から着想を得た作品だ。本作の撮影の舞台はモナコ。当初の予定では、5月24日(日)にはF1モナコグランプリの決勝が行われていたはずだった。残念ながら新型コロナウイルスの影響により2020年のモナコグランプリは中止となってしまったのだが、その代わりにルルーシュ監督が撮影を行ったというわけだ。
本作でルルーシュ監督がカメラを載せたのは、フェラーリSF90ストラダーレだ。4.0ℓV8ツインターボと3基のモーターを搭載し、システム出力は1000psを誇るハイパーカーである。
量産モデルとしては最高峰に位置するフェラーリのステアリングを握るのは、フェラーリF1ドライバーであるシャルル・ルクレール。ルクレールはモナコ人ということもあり、本作の主役にはピッタリ。『ランデブー』のときとは異なり、本作では撮影のために道路が封鎖されたが、狭いモンテカルロの道路を、ルクレールがドライブするSF90はときに240km/hで駆け抜けた。
映画にはモナコ公国のアルベール2 世公殿下も短時間の出演を果たしたほか、フェラーリ会長ジョン・エルカン、モナコ公室のアンドレア・カシラギ、ピエール・カシラギとその妻ベアトリーチェ・ボロメオも撮影現場を訪れた。
フェラーリは新型コロナウイルスの感染拡大阻止に関する取り組みとして、マラネッロ工場における人工呼吸器用バルブの生産などを行うほか、新しい肺換気装置「FI5」を設計するにあたっての技術移転も表明している。今回の撮影は、ロックダウン後のフランスで初めて行われたもので、パンデミック後の「new normal(新しい日常)」に向けた歩みの一環でもある。
巨匠ルルーシュ監督は、ルクレールが操るSF90ストラダーレをどのようにフィルムに収めたのだろうか。『ランデブー』と同様、クルマ好きの琴線に触れる作品になっていることを期待しつつ、『Le Grand Rendez-Vous』の6月13日の公開を楽しみに待ちたい。