排気をスムーズに流せば出力向上が見込める。そのためにはなるべく数ある気筒の状態をそろえたい。しかし狭いエンジンルームのこと、それがなかなか見込めない。あちらを立てればこちらが立たず。排気干渉を考える。

 排気バルブが開いて排ガスが流れている時、排気管内の圧力は平均的には正圧である。圧力振動があるので負圧になるときもある。複数の排気管が集合されると正圧の排ガス流は圧力の低い方へ流れ込もうとする。そのときに排気バルブが開くと、逆流したガスに圧されてシリンダーからの排気がスムーズに出ていかない——。これが排気干渉と呼ばれる現象の基本的な理屈である。




 排気は圧力波でもあり、「波」と言うだけあってそれは周期をともなう間欠的な振動エネルギー(脈動)の一種だ。振動があるということは排気管の圧力はプラスとマイナスがあり、周波数はエンジン回転数に関係なく排気管の長さと排ガス温度で決まる。そこで最高出力を発揮する回転数で発生する排気の周波数を割り出し、排気管長を調整して別の排気管に入り込んだ圧力波が排気バルブが開く時期に負圧になるように設定すれば、今度は排気をマイナスの圧力で引き出すことができる。そのためには管長をある程度確保すると同時に、排気の順序に併せて管を集合させる必要がある。

一般的なクロスプレーンV8の排気管。不等長の形状だけでなくクランク位相の問題で片バンクずつの集合では排気干渉が避けられない。90度クランクのまま排気干渉を起こさないようにするとすれば異常に複雑な排気管を作る必要があり、普通のエンジンルームに収まらない。

排気管長を短くして4気筒を一度に集合させるのは、ターボチャージャーに排気エネルギーを多く送るためや、冷間時の触媒早期活性化には役立つ。しかし圧力波のピークがバルブオーバーラップ時に集中してしまうため、多気筒の排気が邪魔して掃気の邪魔になる。SKYACTIVエンジンはノッキングの抑止に積極的にオーバーラップの換気効果を利用することから、4-2-1排気管を採用した。もちろんコストはかかるし場所も取るのだが。

 マツダのSKYACTIVエンジンでは、排気脈動を高回転出力の向上より掃気によるノッキング抑制のために使い、そのために排気干渉が起こりにくい4-2-1排気管を採用した。ターボエンジンでは排気エネルギーを最大限利用するために、排気効率を無視しても短い排気管を使う。当然排気干渉が発生するわけだが、やはりマツダの2.5l直4ターボエンジンでは、180度位相となる#1と#2をまとめつつ管長を短くするために、4-3-1というユニークな排気システムを開発し、ターボのネックとなるノッキングを回避する掃気効果を狙っている。

SKYACTIV-G2.5Tの排気レイアウト。ダイナミック・プレッシャー・ターボと称する技術で排気干渉を抑え、過給効率を向上させた。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 内燃機関超基礎講座 | 排気干渉とはなにか? 排ガスの気持ちになって考えてみると……