ただし、この設計ではボアを拡大して排気量を増やすことが難しい。排気量の増減はピストンストロークで調節することになる。また、ボアピッチはシリンダーブロックとシリンダーヘッドを締結するボルト穴の位置を大きく左右する。何本のボルトで留めるか、どの場所で留めるかという要件は1気筒あたりの最大燃焼圧力に左右され、充分な冷却を行なうための冷却水路設計からの影響も受ける。近年のディーゼルエンジンでは吸排気系の理想的な取り回しがボルト位置よりも優先される場合もある。要件は複雑だ。したがって、ボアピッチの決定はエンジンの素性を決定するといっても差し支えない。だからエンジン設計の「最初の一歩」なのである。
シリンダーライナーとボアピッチ | 冷却水路が露出するオープンデッキ構造の中に気筒が接したシリンダーライナーがある。よく見ると鋼製のライナー(ピストンとの摺動面になる円筒)の外側にアルミ合金のケースがある。シリンダーブロックが鋼製だった時代はこうした鋳込みライナーは不要だったが、アルミ合金製のブロックにはいまのところライナーが必要。冷却水路は対称にしたい | シリンダーライナーの外側にある冷却水路はほぼ均等に設計される。しかし、熱効率を突き詰めると「冷やしたくない部分」がでてくる。そこで、水路は吸気側と排気側で均等に設計し、冷やしたくない側に左の写真のようなスペーサーを埋め込む例が多くなった。