車名の「MC20」とは、“Maserati Corse (マセラティ・レーシングの意)2020”を意味し、同ブランドが再びレースシーンに復帰することを祝う意味合いが込められている。同時に、2004年、37年ぶりにレースへの復帰を示した「MC12」の進化版でもある。
今回、MC20とともに登場した2台のマセラティは、それぞれマセラティにとって意味深いモデルである。
マセラティ・エルドラドは、 1958年のモンツァでデビューしたシングルシーターのレーシングカーで、 MC20のプロトタイプはこのモデルをデザインモチーフとしている。
次は、マセラティ250F。 5月13日は、1956年のF1モナコGPでマセラティ250Fを駆ったスターリング・モスが、 彼のレーシング人生の中でも屈指の素晴らしい勝利を挙げた記念すべき日だ。 F1屈指の難コース、モナコの公道コースの100周を、 モスはポール・トゥ・ウィンで勝利を収めたのだ。
モスはF1世界選手権で66のグランプリに参戦、 16勝を挙げ、 4度の2位、 3度の3位と世界王者に最も近いながらもタイトル獲得が叶わなかった「無冠の帝王」だ。1956年シーズンおよび1957年のいくつかのレースでは、 後年に”お気に入りのマシン”として語っているマセラティ 250Fを駆り、 ファン・マヌエル・ファンジオだけに敗れている。 そしてそのファンジオは250Fで1957年の世界タイトルを獲得しており、 マセラティのマシンの信頼性と優位性が示された結果だった。
世界のモータースポーツ史に名を残す偉大な人物の一人であり、 マセラティのレース史で最も輝かしい歴史を刻んだ人物のひとりであるスターリング・モス卿へのオマージュとして、 今回MC20のボディにスターリング・モスの"サイン"を記している。
MC20の登場は、 モデナを拠とするマセラティにとって非常に重要な意味を持っている。 2010年にMC12でGT1世界選手権を制して以来のレース界へのカムバックというだけでなく、 マセラティが100%自社設計・開発・生産をする新しいエンジンを初めて採用するマシンだからだ。