TEXT:生江凪子(Naco NAMAE)
PHOTO:Motor-Fan.jp
新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るうなか、緊急事態宣言が出され、皆さまの生活も一変したことと思います。始めに、自らが感染危機にさらされながらもこの危機を収束させるために職務に就かれている、そして社会を維持するために出勤を余儀なくされているすべてのかたに、心からの感謝と敬意を。自粛を頑張っているすべてのかたに、エールを。
生活環境が突然制限され、いままでできていたことができなくなるストレスは想像を絶するものでした。自分が無症状感染者だったらと考えたら、怖くて誰にも会えません。「実家帰るの来週でいっか」「会社、行きたくね~」と思えていたことは、日々の小さな幸せだったのですね。
独り暮らしの私にとっては、誰とも会わない、話さないという状況はなかなかにしんどく、家族と一緒にいる人たちが羨ましくもあるのですが、家族と丸1日同じ空間にいなければならないというストレスもきっとあるのだろうと、ない物ねだりをする自分に嫌気もさしてくるのです。
さて、読者の皆さまには関係ない話で恐縮だが、もう少し私のストレスの話におつき合いください。最近引っ越しをしました。引っ越しをしてなにがストレスなんだよ、と思いますよね。が、家電製品がなにもない、と聞くとどうでしょう。冷蔵庫、テレビ、洗濯機……。買いに行こうと考えていた矢先のこの騒ぎで、ゆっくり家電を選びに、が叶わなくなりました。これ、想像を絶するストレスです。古い人間なので、大物家電をネットで買う、という選択肢もありません。
テレビをなにげなくつけて人の顔が見えてそれが動いて音が出ていたら気が紛れますが、部屋は無音。冷蔵庫を食材でいっぱいにして、こんなときだからと料理に精を出すこともできません(もともと大して作りませんがね)。洗濯(コインランドリーで済ませていた)は、まぁこの際どうでもいいやと割り切れば、なんとか(なってはいないとは思うが、お気になさらず)。
そんなわけで、私はいま、ストレスにまみれているのです。そしてふと考えた。この心の不健康さをどうにかしなければと。教育者であった祖父・ヨシオは常々「心の健康、身体の健康」を説いていました。いままさに、どちらも脅かされている……なんとかしなければ。そして考えついたのです。
こんなときだからこそ、楽しいことを考えようと思いついたことは、クルマを買うこと。御誂え向きにどうしても欲しいクルマがある。2007年のデビュー当時から13年にわたり片思いをしている、日産GT-Rだ。ちなみに、長年のGT-Rファンのかたがたから言わせると、私はおおよそファンと認められないと思う。なぜなら35がデビューするまで、GT-Rというものにまったく興味がなかったから。ちなみに、いままではスープラ70がナンバー1乗りたいクルマ、その次はフェアレディZ31、RX-7(FD)の順番。
デビューした35を見た瞬間、恋に落ちた。
その堂々とした佇まい、筋肉質な身体のライン、それでいてマッチョすぎない、クールな出で立ち。一歩車室内に足を踏み入れると、ストイック(むしろ古くさいという表現がぴったりで、そこがいい)なインテリアに「絶対に離さないからな」と抱きしめられているかのようなシート。もう理想の男性そのものだ……。これが恋に落ちずなんとしよう。
とはいえ、デビュー当時はまだ広報車を試乗させていただける身分でもなく、横に乗せてもらうだけでしたが、見ればキャーキャー、助手席に乗ればキャーキャー。走り出してガチャガチャいうトランスミッションにも、エンジン音にも狂喜。それ以来、35に乗ることを夢見て仕事に邁進したものです。もちろん、所有することは叶いませんから、街中で走っている35を見かければ、羨望と嫉妬を交えた眼で指を咥えてガン見してきました。世の35乗りの皆さまにこの場で謝ります。嫉妬8割の鋭い視線を送ってごめんなさい。
しかし! もう、いい大人になりました。愛車と涙の別れをして10年、いまなら、GT-Rと共に生きていくにふさわしくなっているはずと思い込み、購入に向け前進ッ! パラララッパラー。
コロナが猛威を振るい行動が制限される前に、最後のGT-R試乗が叶いました。GT-R NISMO。これで、GT-RプレミアムエディションとNISMOバージョンの両方の試乗を完了。
もちろん参考として、スカイラインの試乗も抜かりなく。2.0 プロパイロットを搭載するスカイライン GT Type SP(ハイブリッド)とスカイライン400R。300については同乗のみですが、親戚一同の試乗はコンプリート、ということで。
スカイラインもお顔が変更となって、私好み。しかもこれがまた「もしかしたら、スカイラインでいいかも」とか思えてしまう仕上がりの良さなのですよ。
とくに400Rは、現行のスカイラインシリーズのなかでは異端児で、こんなに愉しいクルマがこの値段で買えるなら、絶対に買い! と心からオススメしたいクルマでした。相当なじゃじゃ馬で、なんならGT-Rのほうが扱いやすい、と感じるくらいのぶっ飛んだクルマです。
腕に覚えのあるかた、力んで運転したくはないけれど愉しさは譲れないというかたには、400Rをオススメします。
400Rについては、試乗記も掲載していますので、ぜひ、あわせてご覧ください。
ここで親戚一同を比べてみよう。
だがしかしBUT、やはりGT-Rです。なぜか?
GT-R好き、運転好きな皆さまにはいまさらな話だが、「自分の思ったように操作できる」のがGT-Rの魅力であると私は思っている。その究極がGT-Rなのだ。NISMOに至っては2mmステアリングを切ったら、2mmぶん曲がるという感覚が得られる(あくまでも感覚ですよ)。いま、まさに、このクルマを自分が動かしている! と思えることは、運転の醍醐味ですよね。
スカイラインも素晴らしいクルマだと思うのですが、敢えてGT-Rと比べると、ステアリングがものすっごく軽い。別物のクルマなので当たり前ですが、この味つけは非力なワタクシでもとにかく軽い! 軽くて不安! できれば、ステアリングはパワーに合った重さにしてほしいなぁ、と思うのです……。腕に自信がないと、とくに。
さて、ステアリングの軽さは置いておいて、プロパイロット2.0の性能を体感すると感動します。自分で運転する愉しみ、という価値観ではなく、楽に運転したいという価値観をお持ちのかたには本当にオススメ。私は親に乗せたいな、と思いました。プロパイロット搭載スカイラインの記事もありますので、興味あるかたはご覧ください。
話をGT-Rに戻します。運転する愉しみを求めるかた、頑張って一緒にGT-Rに手を出しましょう。1232万円がなんだ! 2420万円どんとこい! という気持ちで、見積りを始めます。
まずはジャブ程度にGT-Rプレミアムエディションから。
む、むむむむむ。高いな。思いの外、高いな。フロアカーペット、諦めようかな……。いや、ここまできたら10万レベルの節約をしても焼け石に水だ。漢気を出して、このままクレジットシミュレーションを進めよう。
先に述べたとおり引っ越しを敢行したため、貧乏である。頭金と言われてもない袖は振れない。頑張って100万円をかき集める算段を立て、突っ込むことにする。支払い回数は漢の60回払いだ。クリーック!
チーン! 月々16万2700円也! これを5年間……。バスに乗らないで徒歩通勤にして、毎日カップラーメンで過ごせば……いい? イケる? いや、ここでくじけてる場合じゃない。目標はNISMOだ。おおいなる野望を胸に、NISMOバージョンの見積りシミュレーションに移行。
さて、心を落ち着けて、次はNISMOの見積りシミュレーションである。GT-Rとは金額が違うのはわかっておれど、頭金は同額の100万円(袖がない……)。
本当に、ごめんなさい。いや、もちろん考えればわかりますよ? でも欲しいんですもの……。くぅ~。NISMOは諦め、ターゲットをプレミアムエディションに絞るのがいいのか……とひとり狭い部屋のなかをグルグル徘徊。
そもそも、プレミアムエディションでも、エンジンビルダーの匠に会いに行かれるのだろうか。いや、匠はNISMOしか手がけないのでは?! では、GT-Rでは匠には会えないのか。工場見学はさせてもらえるのだろうか。無理をしてでも新車購入でとこだわっているのは、その工程を見たいから。それもGT-Rで叶わないのなら……やっぱりNISMO? いや、いやいや、間違いなく、住む場所がなくなり餓死する……。頑張ってGT-Rを購入するので、公開してはくれまいか……。
そんなとき先輩より朗報がもたらされた
「え、組み上げた人のネームプレートは全グレードのVR38DETTについているけど……」
ムムムッ!!!? マジ?
自身の不明を恥じるとともに、脳内の金銭感覚がかなり狂って、GT-Rなら買えるんじゃないか? と思い始めた。
さて、購入の目処を立てたところで(まったく立ってはいないが)、初期費用についてしっかり考えねばならない。
クルマを購入する際には、車両代金に加え、法定費用や諸費用が必要となる。また、購入後も税金や保険料、メインテナンス費用といった維持費、日々のガソリン代、駐車場代といったものもかかってくる。
法定費用は、前述の諸費用と触れている部分がそれに当たる。
■消費税:車両代金には法定費用としてもちろん、消費税の10%がかかる。
■環境性能割(2%):取得価額が50万円以上の場合、取得価額に対して0~3%かかる(購入車両の燃費性能で変動)
■自動車重量税:車両の重さによって決まる。エコカー減税はあるが、まったくもって関係ない。
■自賠責保険:正式には自動車損害責任保証。こちらはすべてのドライバーに加入義務がある「強制的」な保険。車種と契約年数によって決まるが、平均は月1000円ほど。
■自動車税(種別割):エンジンの排気量によって決まる。
■リサイクル費用:車種によって決まる。
そして上記以外にかかる諸費用は以下のとおり。金額はだいたいその範囲ということで記載する。
■登録費用:~3万円
■納車費用:1万円前後
■車庫証明費用:~1万円
■検査登録手続き費用:~1万円
■希望ナンバープレート代:5千円
諸費用に関しては自分で手続きすれば金額が安くなるとわかっているが、一切合切お任せしたい。もちろん、ナンバープレートは歴代の愛車同様、希望ナンバーが決まっている。
次に維持費。日常的にかかる維持費ではなく、まずは税金や保険料を見てみよう。
■自動車税:車種によって金額は変わるが、年間3万円~10万円。
■自動車重量税:こちらも車種重量によって変わり、年間1万円~2万円。
■保険代:前述の自賠責の強制保険ではなく、「任意」の保険。自賠責でカバーできない部分の補償のための保険。GT-Rの場合は保険もしっかりしなければならないだろう。
そして、維持費のなかにはもちろんこちらも含まれるのだが、まずは3年持ちこたえてから考えよう。うん。
■車検代:車検はいわずと知れた「自動車検査登録制度」の略。
■メインテナンス費
日常的には動けば動くだけ費用がかかるのは当たり前として、一番重要なのがクルマの家!
■駐車場代:月額3万円(そして敷金礼金がかかる)
なんともまぁ、書き出すだけで嫌になるくらいお金がかかる。これではクルマ離れが進むのもわかる気がする。高額なGT-Rに限らず、若い子なんて、カッコよくて欲しいクルマは手が出ない、金額ベースで考えると運転が愉しめないクルマになってしまう、そんなジレンマに陥るでしょう(かくいうワタクシもですが)。
でも、買わないことにはなにも始まらないので、まずは買っちゃうか、うん。そのあとのことはそれから考えよう……。うん。そうしよう。
【次回[ナコ、35を買う]に続く……かもしれない】
とはいえクルマを買って生活が立ちゆかなくなっては大変! 購入は計画的に!(by ナコム)
日産GT-R NISMO
■ボディサイズ:全長4690×全幅1895×全高1370㎜ ホイールベース:2780㎜
■車両重量:1720㎏
■エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ 総排気量:3799㏄ 最高出力:441kW(600㎰)/6800rpm 最大トルク:652Nm(66.5㎏m)/3600~5600rpm
■トランスミッション:6速DCT
■駆動方式:AWD
■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡマルチリンク
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク
■タイヤサイズ:Ⓕ255/40ZRF20 Ⓡ285/35ZRF20
■車両本体価格:2420万円