自動車用のエンジンとして、非常に数多くの種類が生み出されてきた。


その理由は動力性能の追求、搭載性の都合、生産と設計の共通化など、さまざまである。


それらを踏まえ、現代まで生き残ったものがあり、消滅していったものがある。


ここでは各種のV型エンジンを、機械的な構成から紹介していこう。


第4回はV型8気筒だ。フラットプレーンとクロスプレーンについても解説する。


TEXT◎MFi ILLUSTRATION◎熊谷敏直(KUMAGAI Toshinao)

V型8気筒 バンク角は90度

 4ℓオーバーの大排気量マルチシリンダーにおける典型的形式。8気筒ともなると直列はありえないので、必然的にVとなる。バンク角は720÷8 の90 度がセオリーで、V4 やV6 のようなイレギュラーな角度はほとんど存在せず、ほぼ100%が90度。この角度だと吸排気レイアウトに無理がなく、搭載性もまずまずだからだ。180度スローと90度スローの2種があるが、市販車では90度スローが一般的である。

エンジンの性格によって使い分けるクランク形状

 V8のバンク角はほぼ例外なく90度に設定されるので、等間隔点火であり、振動面でも問題がないように見える。しかし、クランクシャフトの形状については大別して2 種類があり、それぞれに長所短所が存在する。一般的な市販車は90 度スローのクランクを使い、振動面ではこちらが有利。一方180 度スローのクランクは、振動面では不利だが、排気干渉がないため高回転仕様に向く。専らレーシングエンジンのための形状である。

180度スロー/フラットプレーン | 4気筒のクランク形状と変わらないように見えるが、実際機械的には4気筒×2。つまり180度スローである。違いはピンの幅が広く、2気筒分のコンロッドを共有するかどうかだけだ。レーシングエンジンと、フェラーリV8がこの形状を採用する。

RA808Eのクランクシャフト

90度スロー/クロスプレーン | 1&2番と3&4番のクランクアームが90度の位相になっている。バンク角とクランクスローが一致するので、V 型のセオリーからすれば正しい形状。だが振動対策でウェブやカウンターウェイトが大きくなり重量増になる。通常の市販車はこの形式を採る。

GM・LT1型のクランクシャフト

情報提供元: MotorFan
記事名:「 大排気量マルチシリンダーの典型 V8エンジン | 各種のエンジンの特質と動作を構造から考えてみる。V型エンジンの基礎知識④