1:燃費性能の向上
2:環境性能の向上
3:コスト
だと思う。
3のコストについては、ロータリーエンジンを搭載するモデルが次期RX-7だけ、という状況では止むを得ないこと。高価なプライスダグを下げても一定数の顧客が存在することが条件になる。つまりマツダのブランド性が高級スポーツカーを売れるだけ向上していることが重要だ。
勝手に推測すれば、トヨタ・スープラRZ(3.0ℓ直6ターボ)が約700万円だから、次期RX-7は高くても800万円以下の価格におさめる必要があると思う。トヨタ(とBMW)ですら、単独ではビジネスとして成立させられないスポーツカー。マツダが次期RX-7で成功をおさめるにはかなり高いハードルを越えなくてはならない。
ちなみに、RX-7(初代・2代目・3代目)は25年間で81万1634台製造されている。平均すれば年間3万2500台だ。とはいえ、これはRX-7が北米で売れに売れていた時期も含めての数字。1992-2003年の3代目FD型は12年間で8万3184台だから6932台/年だった。次期RX-7は年産1万台×モデルライフ(8年間くらい?)=8万台くらいは売れる価格にしなければならない。
生産設備も新規で立ち上げなくてはならないロータリーエンジンが年産1万基ではコスト低減は難しい。
そこで関係してくるのが、レンジエクステンダー用のロータリーエンジンだ。
マツダはレンジエクステンダー(REX)の発電用にロータリーエンジを使うと明言している。
上の資料をみると、REX用ロータリーは1ローターだ。
このREX用のロータリーと次期RX-7が搭載するロータリーエンジンに共通はあるのだろうか?
マツダが2013年暮れにお披露目したREX用ロータリーエンジン(デミオEVのリヤにローターが水平になるように搭載)は、330ccだった。先行開発用のエンジンだからこれがそのまま次のREXに載るわけではないだろう。330cc×2ローターにしても660cc。軽自動車には最適だが、MAZDA2以上、さらにSUVもあるマツダの車両には小さすぎる。
となると、SKYACTIV-Rの元になるはずの「16X」ロータリーの単室容積800ccというのが浮上する。生産技術的に、2つのサイズ(REX用の小さなローターと次期RX-7用の800cc用のローター)のローターとハウジングを造るのが難しいかは素人にはわからないが、1種類の方がなにかと都合が良いはずだ。
REXの発電用ロータリー→800ccの1ローターSKYACTIV-Rエンジン
シリーズハイブリッドの発電用ロータリー→800ccの1ローターSKYACTIV-Rエンジン
次期RX-7用ロータリー パターン①→800cc×2ローター(1600cc)SKYACTIV-Rエンジン 300ps
次期RX-7用ロータリー パターン②→800cc×3ローター(2400cc)SKYACTIV-Rエンジン 430ps
というのは、どうだろう?
2ローターなら税制(×1.5する)1600cc×1.5で2400cc
3ローターなら2400cc×1.5で3600cc
扱いとなる。
出力は、RX-8の13B-RENESIS(MSP)が2ローター1308ccで235ps/216Nmだったから、2ローター1600cc(もちろん自然吸気で)で300ps、3ローターなら430psくらいにはなるだろう。
次期RX-7が搭載するSKYACTIV-Rは2ローターか2ローターか? 勝手な推測を続けるが、2ローターだと予想する。歴代RX-7で3ローターを積んだモデルはないし、技術課題1の燃費性能のためにも3ローターは難しい。軽量コンパクトでありながら比出力が高いというのがロータリーエンジンの魅力。フロント・ミッドシップにロータリーエンジンを搭載するRX-7は、スーパースポーツというよりライトミドル級スポーツだと思う。
となるとライバルは
BMW Z4(3.0ℓ直6ターボ 340ps 全長4335mm)
トヨタ・スープラ(3.0ℓ直6ターボ 387ps 全長4380mm)
ポルシェ・ケイマン(3.0ℓ水平対向6気筒ターボ)
日産フェアレディZ(3.7ℓV6 336ps 全長4260mm)
ジャガーFタイプ(3.0ℓV6+SC 340ps 全長4480mm)
になるはず(もっとも売れているのはフォード・マスタング
だが)。
SKYACTIV-Rのベースとなるのは、2007年の東京モーターショーで発表された「16X」だろう。当時の資料にも
「次世代 RENESIS では、繭形をしたローターハウジングのトロコイド形状を変更します。これは1967 年に初代10A(491cc×2)を導入し、その後7 年間にわたり13A(655cc×2)、12A(573cc×2)、現行13B(654cc×2)と最適なトロコイド形状を模索した黎明期以来の、エンジンの基本骨格のさらなる進化を意味します。ローターハウジング幅と厚さを縮小しながらトロコイド外形を大きくし、排気量を800cc×2 にしたにも関わらず、エンジン本体でRENESIS 同等の小型化を可能にしています」
では、次期RX-7は2ローターは、ロータリーエンジンだけで勝負するのか? そうはならないと予想する。少量生産のスポーツカーだからと言って、燃費性能(=CO2排出量)には目を瞑るという時代ではない。
これは、メルセデス・ベンツが使っているような48VのISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を組み込むことを想定している。メルセデス・ベンツSクラスの場合は3.0ℓ直6ターボに三菱電機製ISG(16kW/250Nm)を使っている。これなら、重量もさほどかさまず、燃費の向上が期待できる。ロータリーが苦手とする始動時の暖機や低回転での効率を改善できるのではないか。
ということで、本稿では次期RX-7の搭載パワーユニットは
800cc×2ローター/自然吸気/300ps/300Nm/PHEV(200ps/400Nmのモーターを搭載)
あるいは
800cc×2ローター/自然吸気/300ps/300Nm/M Hybrid(48V駆動のISGを搭載)
とする。
マツダは現在、ラージプラットフォーム向けに直列6気筒エンジン(ガソリンとディーゼル)を開発中だ。振動特性に優れる直列6気筒を開発しながら、まだロータリーを諦めないのはなぜか?
ひとつは、前述通りレンジエクステンダーの発電用エンジンとしての可能性があるからだろう。
もうひとつは、HCCIの実現に見通しが立っているから、ではないか。マツダはSKYACTIV-XのSPCCIで燃焼技術で新たな知見を得ている。ロータリーエンジンにHCCIを適用できれば、現在のガソリン燃料を使っても燃費の向上したエンジンができる。HCCIロータリー・エンジンはロータリーの燃費を劇的に改善してレシプロ・エンジンに匹敵する走行燃費を実現できる可能性があるのだ。
RX-8 ハイドロジェンRE主要諸元
エンジン:RENESIS 13B水素ロータリー
燃料:ガソリン(燃料タンク容量61 )および水素(燃料タンク容量110 / 35MPa)
最高出力:ガソリン使用時154kW( 210ps) 水素使用時80kW( 109ps)/7200rpm
最大トルク:ガソリン使用時222Nm( 22.6kgm) 水素使用時140Nm( 14.3kgm) /5000rpm
航続距離(10.15モード):ガソリン549km 水素100km
さらに、マツダがロータリー開発を諦めない理由は、「水素ロータリー」にある。水素を直接燃焼室で燃やす水素エンジンは、マツダやBMWが開発をしてきた。現在は、水素を使う燃料電池車に収斂した感があるが、水素の貯蔵方法が70MPaのタンクで規格が決まり、水素供給のインフラが整えば、ダイレクトに水素を燃焼室内で燃焼させる水素ロータリーが再び脚光を浴びる可能性がある。水素燃料とロータリーエンジンの相性はいい。
また、LPG(液化石油ガス)やCNG(圧縮天然ガス)などさまざまな燃料に対応できるのがロータリーの強みだ。
マツダがロータリーエンジンにこだわるのは、次期RX-7のためだけ、ではないのだ。
と、勝手に次期RX-7について推測してきたが、SKYACTIV-R搭載の次期RX-7の登場を心待ちにしたいと思う。