4月23日に初お披露目されたトヨタのBセグメントSUV、ヤリスクロス。2020年秋の日本発売までまだ少し時間があるが、現状で明らかになっている情報を基に、ライバルになると思われるSUVたちとボディサイズを中心に比較してみたい。

 ヤリスクロスの全長は4180mm。Aセグメントに属するライズ(全長3995mm)とCセグメント車であるC-HR(全長4385mm)のちょうど中間に位置しており、トヨタのSUVラインアップで空白だったゾーンを埋める存在になっている。

全長×全幅×全高:4180mm×1765mm×1560mm ホイールベース:2560mm

 2020年1月と2月の車名別販売台数ランキングでトップに立つなど、大ヒット作となったトヨタ・ライズは、ヤリスクロスの最大のライバルかもしれない。全長と全幅は一回りヤリスクロスよりも小さいものの、1620mmの全高が生かされており、室内・荷室ともに必要十分な広さ。1.0ℓ直3ターボエンジンも街中では過不足を感じさせないパワーを発揮する。そして価格もリーズナブルときたら、売れないわけがない。

全長×全幅×全高:3995mm×1695mm×1620mm ホイールベース:2525mm

 ライズのもうひとつの特徴は、スタイリングだ。洗練されたルックスのヤリスクロスに対して、ライズは「ミニRAV4」と言えるような無骨な雰囲気を漂わせる。アウトドア志向のファッションやライフスタイルが流行している最近の傾向を考えると、ヤリスクロスよりもライズのデザインを好む人は少なくなさそうだ。

 他メーカーに目を向けると、ヤリスクロスの競合筆頭となるのがホンダ・ヴェゼルだろう。ヤリスクロスよりも全長は150mm長く、全高も45mm高い。Bセグメント車(=フィット)がベースのSUVとしては大きめなボディを持つヴェゼルはその分スペースユーティリティに優れており、それが2013年発売から早7年が経過しようとしているにも関わらず、今でも安定したセールスを記録し続けているヴェゼルの人気の要因のひとつになっている。

全長×全幅×全高:4330mm×1770mm×1605mm ホイールベース:2610mm

 ヴェゼルのベースとなっているのは先代フィットだが、昨今のクロスオーバーSUVブームに合わせて、新型フィットにはクロスターというグレードが新設された。樹脂製のフェンダーアーチやロワガーニッシュなどの専用エクステリアが与えられ、最低地上高も他グレードより10mm高められているのが特徴だ。とはいえ、その変更範囲はコスメチューンといえる程度にとどまっており、ヤリスクロスと比べると、SUVらしさでは一歩譲っている感がある。

全長×全幅×全高:4740mm×1855mm×1660mm ホイールベース:2690mm

 間もなくの日本発売が噂されている日産キックスに関しては、北米仕様で比較してみる。ヤリスクロスよりも全長は115mm、ホイールベースも60mm長い。その分、写真で見比べた範囲では、後席や荷室はキックスの方がやや余裕がありそうだ。

全長×全幅×全高:4295mm×1760mm×1585mm ホイールベース:2620mm

 キックスがデビューしたのは、2014年のこと。オーソドックスなデザインで万人に受け入れられそうな佇まいだが、6年目を迎えるだけに新鮮味には欠ける。日本導入にあたっては内外装のリフレッシュも噂されているが、果たしてどうなるだろうか。

 ヤリスクロスとかなりボディサイズが近いのが、マツダCX-3だ。全長はCX-3の方が105mm長いのが目立つが、それ以外のディメンションはかなり似ている。ただ、CX-3のセールスは残念ながら好調とは言い難い。その要因として、「後席が狭い」「荷室が小さい」という意見が多く聞かれる。CX-3と全長以外のサイズが近似しているヤリスクロスは、後席や荷室のスペースがどれだけ確保されているのかが成否を分けることになるかもしれない。

全長×全幅×全高:4275mm×1765mm×1550mm ホイールベース:2570mm

 トヨタC-HR、マツダCX-30、スバルXVはCセグメントに属するため、Bセグメントのヤリスクロスよりもはっきりと大きい。ホイールベースは100mm前後長く、その分、居住空間にも余裕がある。多人数で出かける場面が多いユーザーは、ヤリスクロスよりもこちらのクラスの方が有力な選択肢となるかもしれない。

全長×全幅×全高:4385mm×1795mm×1550mm ホイールベース:2690mm ※4WD車の全高は1565mm

全長×全幅×全高:4395mm×1795mm×1540mm ホイールベース:2655mm

全長×全幅×全高:4465mm×1800mm×1550mm ホイールベース:2670mm

 続いて、各車のパワートレーンと価格帯をチェックしてみる。

 ヤリスクロスのパワートレーンは2種類で、1.5ℓ直列3気筒(M15A-FKS)+ダイレクトシフトCVTと、1.5ℓ直列3気筒(M15A-FXE)+THSIIが用意される。価格は未発表だが、同じパワートレーンを採用するヤリスはガソリンモデル(CVT)が159万8000円〜、ハイブリッドモデルが199万8000円となっている。ヤリスクロスは、そこからどれくらいの価格が上乗せされるか興味深い。

M15A-FKSエンジン
M15A-FXEエンジン


 フィット クロスターとヴェゼルはそれぞれ1.5ℓ直4ハイブリッドを用意するが、システムがそれぞれ異なる。先代フィットをベースとするヴェゼルは1モーター式(i-DCD)なのに対して、フィット クロスターは2モーター式(i-MMD改めe:HEV)を採用する。

ヴェゼルのi-DCDハイブリッドシステム
新型フィットのe:HEV(以前はi-MMDという名称だった)ハイブリッドシステム


 クロスターを含む新型フィットで注目なのは4WDシステムだ。ヤリスクロスのハイブリッド4WD(E-Four)では、電気モーターが後輪を駆動する。コンパクトカーではこのモーターアシスト式4WDの採用例が多いが、新型フィットではハイブリッドモデルでもプロペラシャフトを用いた本格的な4WDシステムを搭載している。電気モーターよりも大きなトルクを高い速度域でも後輪に伝達できるのがメリットとなる。

新型フィットのビスカスカップリング式4WDシステム
ヤリスはリヤサスに新開発2リンク・ダブルウィッシュボーンを採用し、E-Fourの搭載が可能になった。このシステムはヤリスクロスにも採用される


 ヴェゼルは2019年1月に1.5ℓ直噴VTECターボの搭載グレード「ツーリング」をラインナップに加えた。最高出力172psと最大トルク220Nmを発揮し、コンパクトSUVらしからぬスポーティな走りが楽しめる。ヤリスクロスを含む他のBセグSUVとは一線を画す1台だ。

ヴェゼルに搭載される1.5ℓVTECターボエンジン
ヴェゼル・ツーリングは18インチアルミホイールを履く。ヤリスクロスのホイールも18インチと思われ、BセグSUVの上級グレードはこのサイズが定番になりそう


 キックスの北米仕様は、1.6ℓ直4+CVTを搭載する。ライバルの多くがハイブリッドもラインアップに用意しているのと比べると、ガソリンエンジン1本槍では劣勢な感は否めない。日本導入にあたってはe-POWER(1.2ℓ直3+モーター)が搭載される噂があるが、それが実現すれば、ヤリスクロスもうかうかしていられないかもしれない。

北米をはじめ、ブラジルや中国などで多くの国で販売されているキックス
ノートe-POWERに搭載されている1.2ℓ(HR12DE型)直3+モーター


 パワートレーンに関しては、CX-3の独自性が際立つ。2015年のデビュー当初は1.5ℓディーゼルターボのみが搭載されていたが、その後、2.0ℓガソリンがラインナップに加わり、さらにディーゼルエンジンが1.8ℓ版に換装された。1.5ℓガソリンorハイブリッドが中心の他車よりも上級志向なので止むを得ないのだが、CX-3は価格競争面でも劣勢を強いられていた感が否めない。




 そうした苦境を打開すべく、マツダはこの4月に1.5ℓガソリン車を追加している。価格は189万2000円~。1.5ℓガソリンを積むヴェゼルのスターティングプライスが211万円台なのと比較すると、かなりパンチのある価格と言えるのではないだろうか。1.5ℓガソリン車の存在は、CX-3の購入層の裾野を広げる一助になりそうだ。

2015年に発売が開始されたCX-3。現在に至る魔ふぇ、大小の改良が多数施されている
4月に追加された1.5ℓガソリンエンジン(スカイアクティブG)


 C-HR、CX-30、XVといったCセグメントSUV勢は、エンジンの排気量も大きくなり1.6ℓ〜2.0ℓが中心だ。ただ価格帯を見てみると、CX-30以外はBセグメントSUV勢とオーバーラップしているのがわかる。




 となると、ヤリスクロスはBセグメントSUVに一応カテゴライズされるものの、C-HRやXVといったCセグメントSUVとの競合も避けられないだろう。今秋のヤリスクロスの登場によって、コンパクトSUV同士の戦いは激化の一途を辿りそうだ。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 トヨタ・ヤリスクロスとライバルを数値で比較。ホンダ・ヴェゼル/日産キックス/マツダCX-3のBセグSUV以外にも強敵多し!