REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO⚫️山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力⚫️株式会社ホンダモーターサイクルジャパン/ヤマハ発動機株式会社
両車共にフルフェアリングを装備し、段付きのセパレートシートを持つスーパースポーツ。如何にも精悍なフォルムが印象的。かつてのレーサーレプリカ系ほどの過激さではないものの、それに匹敵するエネルギッシュな印象が漂ってくる。
車格としてはほぼ同等だが、全体が低くシャープな尻上がりデザインでフィニッシュするCBRはより若々しいイメージ。一方のYZFは外板のデザインが優しい印象で全体のフォルムも少しソフト。車体も僅差ながらボリュームがあり落ち着いた印象を受ける。
搭載エンジンはいずれも水冷DOHC 8バルブ並列 2気筒の249 cc。注目のボア・ストロークはCBRが62×41.3mm、YZFが60×44.1mmというショートストロークタイプである。
パワー競争をするなら、ビッグボアのCBRが有利で、事実最高出力も優勢。しかしYZFも負けていないのは、同じトルクをCBRより1,000rpm低い10,000rpmで発生している点にある。
簡単に言うと高回転高出力型エンジンのフルパワーを豪快に絞り出した時に、CBR優勢は間違いない。しかし、柔軟なトルク特性に優位性があるYZF の扱いやすさと、そこから発揮される乗り味は、これはこれで侮れない魅力となるわけだ。
事実、両車の総合減速比を比較するとCBR はローギヤで26,64。YZFは24,91。トップギヤでもCBRは8,696、YZFは8,597。つまりCBRは低めのギヤでエンジンを沢山回して走るタイプ。仮にエンジンが同じ物だと仮定すると、スロットルレスポンスに優れる俊敏な走りが楽しめるのはCBR 。あくまで傾向論ではあるが、逆に落ち着きのある乗り味に貢献するのはYZFと言える。
むしろ商品力として見逃せないのは、CBRにはクラス唯一の電子制御式スロットルが採用されている点にある。インジェクションによる燃料供給制御が緻密に行われ、あらゆる場面でのベストな性能発揮に貢献。燃料消費率でも優位に立っている。さらに任意の切り換えで、Sport、Sport+、Comfortの選択ができる。ライダーの好みや使い方に応じた出力特性を選べるのである。
ラップタイム計測できるメーターは表示パターンも4種からチョイスできる。価格的に約20万円もの差があるが、ライバルに無い装備や先端技術が奢られている事は間違いなく、各部に見られる上質な仕上がり具合もプレミアムモデルに相応しい価値を秘めている。
CBRのタイヤには、前後17インチサイズのダンロップ製SPORTMAX GPRラジアルタイヤを標準装備しているのもうれしい特徴。
YZFはマイナーチェンジで上質な倒立フォークを採用し、トータルで真摯に熟成度が高められた魅力は侮れない。ライディングポジションもCBRに少し近づけてきた。
一方CBRはこれから投入予定の2020年モデルではエンジンのパワーアップやスリッパークラッチの装備。そしてオプション設定ながらアップ/ダウンともに機能するクイックシフターが装備されると言う。このクラスのツインエンジン最高峰の座を堅持すべく、さらに磨きをかけてくる模様である。
まずCBRはYZFよりもいくらかコンパクトに感じられるが、タンク周りやテールのデザイン等はガッチリとマッシブで如何にもアスリートをイメージさせられる。跨がると、シート前方からタンクに掛けてくびれのあるラインがシュッと細くデザインされ、ニーグリップを効かせた乗車姿勢をとるとマンマシンの一体感も高い。しかも左右へ大胆な体重移動をする時、膝や内股のグリップ具合が秀逸。
やや低めのハンドル位置とバックステップは、それがピュアなスポーツバイクであることを主張し、乗り手の気分もシャキッと引き締められる感じ。下半身の筋力を生かして自然とスポーツする気分になってくる。峠道やサーキットでの積極的な体重移動がしやすく、思いのままに楽しめるのだ。
一方YZFも洗練されたフォルムで精悍なイメージ。ただ、アクティブなスポーツ道具としてのトーンは、あえて適度に控えられている雰囲気が伝わってくる。ホイールベースこそCBRより10mm短いが、全体的な寸法は大きくタンク幅もボリューム感がある。
跨がるとライディングポジションはスマートに決まり、足つき性は互角。跨がった雰囲気と乗車姿勢は通常走行やツーリングでの快適性にピントが合っている。旧モデルよりはハンドル位置とタンク上面位置が低くなった分が、峠道での快適性と操縦性に貢献し一体感のある走りが楽しめる。それでもストリートスポーツ車としてのわきまえのある仕上がりである。
CBRの軽やかに噴き上がるエンジンは3500回転からモリモリとトルクを増す。その出力特性は実に柔軟でメリハリがあり、その気になれば簡単に14,000rpmからのレッドゾーンに飛び込んでいく。REVインジケーターは10,500回転から点灯してシフトアップを促す。
振動が少なくいかにも精度の高いエンジン回転は、6,000、そして8,000rpmを超えると実に小気味く、そのパンチ力は侮れない。
一方YZFは、低速域からよく粘ってくれる。住宅街の徹底徐行でも扱いやすい。どの回転域でもスロットルレスポンスが良く、ライダーの意志通りスムーズに加速を始める乗り味は生き生きと気分が良い。
右手を全開にすれば14,000rpmからのレッドゾーンへも難なく届く。ただCBRと比較すると回転の上昇は、10,000rpmを超えると勢いが衰えるので、実際はスポーツ走行でも回転を欲張らず、10,000rpm付近で早めにシフトアップするのが自然だった。ここに両者のキャラクターの違いが大きく現れている。
トルクは5,000rpmあたりからもりもりと力強さを増し、7,500rpm前後が一番頼れるが、全般的に守備範囲の広い扱い易さがある。それ故、落ち着いた気分で快適に走れる楽な乗り味がまた魅力的なのである。
ステージをワインディングロードへ移すとCBRの走りは俄然輝きだす。前後サスペンションは固くシッカリした剛性がある。作動性の良いサスペンションは、乗り心地をスポイルしない巧みなフットワークを発揮。操舵レスポンスは素直でとても扱いやすい。コーナーで思い通りに旋回ラインが決められる安定性も抜群。バイク自体が常に綺麗なラインを描いてくれる点に感心させられた。
YZFも倒立式フロントフォークが奢られた進化は侮れない。カチッと確かな操舵レスポンスを発揮し、誰にでも素直に親しめるグッドハンドリングは好印象。直進安定性に優れた乗り味は快適で、エンジンのフィーリングも含めて落ち着きがあり、ロングランも快適にこなせるのである。
既にご理解頂けたと思うが、スポーツ性という意味で尖ったポテンシャルを求めるユーザーなら、CBRは価格差に見合う高性能とエキサイティングな乗り味を発揮してくれることは間違いない。
その一方で、YZFはオールマイティな賢い選択となるのもまた事実なのである。
元モト・ライダー誌の創刊スタッフ編集部員を経てフリーランスに。約36年の時を経てモーターファン バイクスのライターへ。ツーリングも含め、常にオーナー気分でじっくりと乗り込んだ上での記事作成に努めている。