昨秋の東京モーターショーでの次期型コンセプトの発表に続き、今年の東京オートサロンでは、STIスポーツのコンセプトモデルが御目見えしたスバル レヴォーグ。昨今の情勢を考えると、新型登場のタイミングが気になるところだが、それは現行型が成熟期になっていることを示すことでもある。そこで、最も身近なレヴォーグの「16GTアイサイト」に注目してみた。




REPORT&PHOTO 大音安弘(Yasuhiro Ohto)

 新型の動向も気になるレヴォーグだが、2014年の登場以来、1年ごとに改良が加えられ、着実な進化を続けてきた。最新の改良は、2019年5月に行われており、タイミング的には、そろそろ最終仕様が登場することも予想される。


 もちろん、プロトタイプが公開された新型の登場を心待ちにしている人も多いだろう。その一方で、熱心なファンを持つスバルだけに、熟成された現行型へ強い興味を頂いている人もいるはず。とはいえ、高性能なスポーツワゴンであるレヴォーグだけに、全体的な価格は高めなのも事実だ。そこで、最も手ごろなエントリーグレード「16GTアイサイト」に注目してみた。



 価格は、最廉価の291万5000円。最も高価な2.0STIスポーツアイサイトは、412万5000円だから、価格差は121万円にも上る。これだけ差があると、やはり装備もそれなりなんでしょと思ったら大間違い。意外と充実しているのだ。




 スバル自慢の先進安全運転支援機能「アイサイト」は当然ながら、アイサイトツーリングアシストを含めて標準装備。前後LEDヘッドライト、LEDフォグランプ、左右独立フルオートエアコン、運転席パワーシート、前後席のUSB電源、17インチアルミホイールなどを備えている。




 逆に、大きな装備でオプション扱いとなるのは、寒冷地仕様といえるコールドウェザーパックくらい。この他にも加飾の違いなどはあるものの、思ったよりも違いが小さく、装備もしっかりしているなと驚かされた。




 一方、インテリアに目を移すと、16GT系は、少しコンフォート寄りとなる。最大の違いは、シート形状が、スポーツタイプではなく、標準タイプとなること。ただ座面形状がゆったりとしているなどメリットもありそうだ。また手に触れるステアリングやシフトレバーはしっかりと本革巻きが奢られる。また細かい点だが、16GTアイサイトのみ、ペダル類も通常のゴム仕様に。しかし、外からは見えない部分であるし、操作性にも影響がない。この辺は、好み次第だろう。

LEDのヘッドライト&フォグランプも標準。フロントだとグリルとライトの加飾が16GTアイサイト専用となる

意外と広いリヤシートは3分割の可倒式。後席中央には、USBソケットも備わる
黒を基調とした標準タイプのフロントシート。華やかさには欠けるが、飽きの来ないシンプルさが良い


 パワートレインは、デビュー時から好評の1.6L水平対向4気筒ターボを搭載。最高出力170ps、最大トルク250Nmを発揮。これにCVTのリニアトロニックを組み合わせる。AWDは、1.6Lモデル共通の走行安定性を重視した前後トルク配分を60:40を基本としたアクティブトルクスプリッドAWDとなる。




 16GT系のみフロントブレーキディスクが1インチダウンの16インチ仕様となるが、キャリパーは、全車共通の2ポッドタイプとなる点は同様。さらにダンパーが非ビルシュタインとなるのも、16GTアイサイトの特徴のひとつ。こちらは、レヴォーグらしいスポーティさと快適性をバランスさせたセッティングとしている。







デビュー時は、圧倒的な人気を誇った1.6L水平対向直噴ターボエンジン。必要十分どころか、十分パワフルだ

 エントリーグレードといえど、パワートレインは、1.6Lモデル全て共通だけに、そのポテンシャルは高い。レスポンスが良く、ターボらしい力強い加速も味わえる。さすがは、2.0Lターボ不要論が持ち上がったこともあるエンジンだ。スペック的には、飛びぬけたものではないが、その分、日常でも、合流や追い越しなどの加速で、しっかりとアクセルを踏み込む領域も多い。水平対向ターボの魅力も堪能でき、しかもレギュラー仕様であることは、1.6Lエンジンの美点といえるだろう。




 足回りは、ご自慢のビルシュタイン製ダンパーではないものの、安定性と乗り心地のバンランスを図ったスポーツワゴンに相応しいもの。ただ決してヤワな足ではない。コーナリングなどもターボエンジンを活かしたシャープな走りを見せる。スポーティな走りを楽しむには、標準タイプのシートだと少し物足りないかもしれないが、そのシーンは限定的。日常ではゆったりとした形状が使いやすいと感じる人もいるはずだ。




 ワゴンとしては、レオーネ、レガシィと受け継がれてきた伝統もあり、使い勝手にも優れる。トノカバーを床下に収納できるので、シートアレンジも行いやすい。あれだけ人気だったツーリングワゴンが絶滅寸前となっているが、レヴォーグを見ていると、もっと市場が広がっても良いのではと思ってしまう。

これだけたっぷりの荷室を設けながら、走りも楽しめるのがレヴォーグの嬉しいところ。
スポーツセダンWRXと共通性の高いインテリアだけに、スポーツカー好きの心も擽るデザインだ


 エントリーグレードとなる16GTアイサイトだが、基本性能の高さと充実した装備もあり、不足は全く感じなかった。レヴォーグの走りの良さが十分味わえるし、性能面では1.6Lモデルでも十分以上のものがある。室内も、コンフォート寄りのスタイルとなる分、落ち着きある雰囲気であり、誰でも選びやすい。これなら、かつての自然吸気系のレガシィからの乗り換えにも違和感がないだろう。もちろん、性能面ではレヴォーグの方が上となる。




 ただ装備面でアイサイトの付加機能である「アイサイトセーフティプラス」をオプションで選ぶなら、300万3000円の特別仕様車「16GTアイサイトスマートエディション」にすべき。一部装備が異なるが、16GTアイサイトにオプション装着するよりも、全体的には装備も充実し、さらに価格が11万円も安いからだ。さらにどうしてもビル足が欲しいというならば、18インチアルミホイールやアイサイトセーフティプラスまで含めて、313万5000円という戦略的価格を掲げる。




 もちろん、スポーティさを前面に押し出したレヴォーグが欲しいとなれば、シートはスポーツタイプが欲しくなるだろうし、思い切って2.0Lモデルを狙うのも有りだろう。しかし、ファミリカーや実用ワゴンの探しながら、一人の時はスポーティな走りを楽しみたいと願う人には、16GTアイサイトは、狙い目といえる。




 良いクルマはスタンダードな仕様でも満足度が高いと言われるが、レヴォーグは、まさに、その一例だ。敢えてシックな16GTアイサイトを選び、スマートさを気取るにも面白い。予算を抑えても、レヴォーグを手にする喜びは、十分に堪能できるのだ。

マニアでない限り、レヴォーグ16GTアイサイトが最も安いレヴォーグとは気がつかない

スバル レヴォーグ 16GTアイサイト


全長×全幅×全高:4690×1780×1495mm


ホイールベース:2650mm


車両重量:1540kg


エンジン形式:水平対向4気筒DOHCターボ


排気量:1599cc


ボア×ストローク:78.8×82.0mm


圧縮比:11.0


最高出力:125w〈170ps〉/4800~5600rpm


最大トルク:250Nm/1800~4800rpm


燃料タンク容量:60L


トランスミッション:CVT


駆動方式(エンジン・駆動輪):フロント・4WD


サスペンション形式:Ⓕマクファーソンストラット Ⓡダブルウィッシュボーン


ブレーキ:Ⓕベンチレーテッドディスク Ⓡベンチレーテッドディスク


乗車定員:5名


タイヤサイズ:235/35R19


JC08モード燃費:16.0km/L


車両価格:291万5000円
情報提供元: MotorFan
記事名:「 すっぴんも悪くない!?最も身近なスバル レヴォーグ「16GTアイサイト」を再考