本当なら筑波サーキットあたりでガンガンに攻め込んでみたいのだけれど、今回編集部からのオーダーは、あくまでもストリートでのインプレ。しかも市街地がメインだという。「どのくらいフラストレーション溜めないで走ることが出来るんだろうか」というのが試乗前に考えたこと。
案の定、エンジンを始動してみれば、素晴らしいレスポンスで吹け上がる。クラッチをつないでスロットルを開ければ軽やかに……というよりもドンと飛び出していく。散歩に行きたくてしかたない大型犬が突然走り出したような感じだ。
このエンジン、何しろ中速トルクが太い。マルチのように回転が上がってくるのを待たなきゃいけないようなもどかしさがなく、普通に走っているところからでもシフトダウンなどせずにスロットルを開ければ、即パワーバンドという感じで加速していく。その結果、ストリートを軽く流しているつもりなのに元気いっぱいで走ることになってしまう。
全開にし続ければ頭打ちが来てしまうけれど、「これ以上はストリートじゃ無理」というあたりでちょうどレブリミットに到達するから、逆にちょうど良い感じ。ストリートをキビキビ走りたいライダーにとってはある意味理想的な性格なのである。
こんな性格だから、ノンビリ走ろうとすると、どうも落ち着かない。フライホイールマスも少なくて、低回転で走ろうとするとギクシャクしてしまう。パワーモードをレインに切り替えれば、トルクの太さはそのまま、レスポンスが穏やかになって、ずいぶん乗りやすくなるのだけれど、それが面白いかと聞かれたら別問題。暴れん坊を無理やり大人しくさせているようなもので、本来の楽しさはない。
良くできているなあ、と思ったのがシフター。ノンビリ走っていても元気に走っていても気持ちよくシフトアップ・ダウンができる。2000rpmぐらいの低回転でも気持ちよくスコンという感じで変速できるから、回転数などでかなり細かく制御されているのだろう。ミッションのタッチも軽くて節度があり、シフトペダル操作が楽しくなるようなフィーリングだ。
このバイクを思い切り楽しみたいのであればワインディング、できることならサーキットに持ち込むべきだろう。このバイクの特性なら日本各地にある小さめのサーキットでも十分に楽しむことができるはずである。
「ストリートしか走らないし、そんなに飛ばしたりしませんよ」っていうライダーには790デュークを積極的にオススメしようとは思わない。でも「まだビギナーだけどライディングを楽しみたい」というのであれば話は別。最初はモードセレクターで乗りやすくして慣れていけばいい。このバイクの機敏さや節度のある操作系のフィーリングは、ペースを上げなくても楽しむことができる。そうやって少しずつテクニックを磨きながらスポーツライディングを楽しむことができるだろう。
排気量:799 cm³
最高出力:77 kW
最大トルク:87 Nm
エンジン:2シリンダー、4ストローク、並列二気筒
ボア:88 mm
ストローク:65.7 mm
スターター:セルスターター
潤滑方式:2ポンプ式オイル圧送潤滑
トランスミッション:6速
冷却システム:水冷
クラッチ:PASC™ アンチホッピングクラッチ、機械操作式
EMS:Bosch製 EMS ライドバイワイヤー
CO2 EMISSIONS:103 g/km
消費燃料:4.4 L/100 km
フレームタイプ:クロムモリブデン鋼製フレーム(パウダーコーティング)
フロントサスペンション:WP APEX 43
リアサスペンション:WP APEX Monoshock
サスペンションストローク (フロント):140 mm
サスペンションストローク (リア):150 mm
フロントブレーキ:2x ラジアルマウント4ピストンキャリパー
リアブレーキ:2ピストンキャリパー、ブレーキディスク
フロントブレーキディスク径:300 mm
リアブレーキディスク径:240 mm
ABS:BOSCH製デュアル・チャンネル 9.1 MP ABS(作動解除可能の、コーナリング ABSとSupermotoモード搭載)
チェーン:520 X-Ring
キャスター角:66 °
最低地上高:186 mm
シート高:825 mm
燃料タンク容量 (約):14L
乾燥重量:169 kg