過給機を大別すると3種に分けられる。排気タービン式、機械式、排気脈動式である。
排気タービン式がいわゆるターボチャージャーのグループ、機械式がスーパーチャージャーのグループである。今回は、この機械式スーパーチャージャーのことを「スーパーチャージャー」と呼ぶことにする。
耳慣れないかもしれない「排気脈動式」とは吸排気連通管を設け、排気圧力によって吸気側掃気を高める仕組みで、オペルやマツダが実用化している。「プレッシャーウェーブスーパーチャージャー」といえばご記憶の方もいらっしゃるかもしれない。
さてそのスーパーチャージャーとは、動力を得てローターを回転させ空気を送る装置である。「動力を得て」というのが機械式と言われる所以で、自動車用SCは大半がメインシャフトからベルトやチェーンなどを用いてローターシャフトを駆動する構造としている。
エンジンと連れ回りしていることからターボチャージャーに見られるような過給ラグ(過給が瞬間的に立ち上がらない遅れ)が生じないというのが何よりのメリットだが、装置が比較的大がかりなことからエンジン回転の上昇に伴って機械損失が増えていくというデメリットがある。逆にターボチャージャーはスーパーチャージャーに対して小型軽量化が可能であり、タービン/コンプレッサホイールが回転するまでのラグは避けられないものの、回り始めてさえすれば機械的強度の限界を迎えるまでは高回転側での性能に優れているという、ちょうどスーパーチャージャーとは逆の性質と考えればわかりやすいだろう。
【得手】SC ←(応答性)→ TC【不得手】
【得手】TC ←(高回転)→ SC【不得手】
さらにスーパーチャージャーの構造で種別化すると、ルーツ型、リショルム型、スクロール型が代表的なものとして挙げられる。
ルーツ型とは二組の2葉〜4葉のねじりローターを回転させて空気を送り込む構造。二組のうちの片側1本のシャフトがメインシャフトからの動力を受けて回転、もう片方はギヤによって駆動される。つまり、2本のシャフトは逆回転している。回転数は、イートン社の製品では14000〜24000rpm。ターボチャージャーに比べると1/10程度の回転域である。
先述の機械損失については、低減策として近年の製品ではクラッチを備えて適宜回転/停止を切り替える仕組みとしている。ご覧のように筐体が長く大きいことから、ケースとローターの間隔が大きい場所が生じてしまい、空気が逆流してしまうという悩みがある。これを避けるためにはクリアランスを極限まで詰めることが必要。工作精度の高さが求められる。
リショルム型は、自動車用としては1993年に登場した世界初のミラーサイクルエンジン・マツダ「KJ-ZEM」に搭載されたものが有名。ルーツ型と同様にメインシャフトからの動力を得て二組のローターを回転させる仕組みで、リショルム型では雄ローター/雌ローターと称する。
KJ-ZEMのリショルム型では雄ローターが3枚、雌ローターが5枚のねじれ羽根を持ち、回転すると雄ローターの羽が雌ローターの凹みに入り込む構造としている。3枚/5枚で挟まれた空間がケース出口にいくにつれて縮小し圧力が高まるのがリショルム型の最大の特徴。ルーツ型は二組のローターで送る容積は変わらないため内部圧縮はなく、それゆえ「ルーツブロワー」とも呼ばれる。
ちなみにターボチャージャーが圧縮機である理由はタービンハウジング容積が出口に近付くにつれて小さくなるため。つまり、ターボチャージャーもルーツ型と同様、タービンホイール自体では圧縮はしていない。
スクロール型の採用例は、フォルクスワーゲンが搭載した「Gラーダー」が有名。渦巻き型のハウジングを向かい合わせ、偏心軸で回転させる構造で、外周から導入された空気がハウジングの回転に伴って中心側に送られるとともに容積が小さくなることから圧縮される。過給機としてはその後の採用例が目立たないが、エアコン用のコンプレッサーとしては一般的な方式となった。