真冬の北海道にズラリ揃った日産の最新モデル。4WDはもちろん、FF、FRも含め、さまざまな駆動方式、パワーユニットのモデルを雪上で試乗する機会を得た。Motor-Fan.jpでは、日産雪上試乗レポートを全3回に渡ってお届けする。最終回はスポーツカー編と題し、FRのスカイライン400RとフェアレディZ NISMO、そして4WDのGT-Rのインプレッションをレポートする。




REPORT●佐野弘宗(SANO Hiromune)

スリップやオーバーステアを許容するアグレッシブな設定

 今回の雪上試乗会には、国内で売られている日産車が最新のスタッドレスタイヤを履いて一堂に会していた。




 安全が確保されたクローズドの特設会場には、スラロームコース、定常円旋回、周回コースという大きく3種類のコースが用意されていたのだが、そのすべてにスポーティな後輪駆動車が用意されていたのは日産ならでは……といえる。




 その用意されていたクルマとは、具体的にはスカイラインGTタイプP(V6ターボ)、同400R、そしてフェアレディZニスモだ。そして、これら3台に加えて、FRではないが明らかに雪道が似合わなそうな“ラスボス!?”としてGT-Rも控えていた。




 国内市場の車種ラインナップ数から考えると、最近の日産は新型車発売の頻度が明らかに低い。しかも、例の事件でのイメージダウンも相まって「日本市場軽視」との批判の声は高まるばかりだ。




 ただ、発売ほやほやの新型車ではないとはいえ、これだけの高性能スポーツモデルを今なお揃えてくれている事実は、クルマ好きとして素直に感謝したい。

 雪上路面にハイパワー後輪駆動……ということで、スカイラインやZで走り出す際には、正直なところ「どんだけ走らないんだろう!?」という、怖いもの見たさの気持ちが強かった。




 実際、スラロームや定常円旋回でのスカイラインは、油断すると路面を掻きむしって進まくなったり、あるいはアッという間に横を向いてしまったり……と、私のような下手の横好きドライバーには手強いものだった。




 ただ、どんなに思いどおりにならなくても、こちらの操作に対して完全無反応になること決してなく、徹頭徹尾なにかしらのコントロールの余地が残されていたのは、当日の路面コンディション(ぐしゃぐしゃに溶けた雪)に加えて“ドライバーエリエンテッドVDCコンセプト”を謳うスタビリティコントロールシステム(日産での呼称はVDC)も効果的だったと思われる。




 これはスロットルやステアリング操作から「こいつは積極的に操ろうしている」とクルマが判断すると、これまで以上に駆動輪スリップやオーバーステアを許容するのだそうだ。なるほど、今回のスカイラインはVDCオンのままで良くも悪くも暴れてくれたのがありがたかった。一定以上の低ミュー路の場合は、タイヤをある程度の空転させてでも路面を掻かないと、クルマは進まなくなってしまうのだ。





■スカイライン400R


全長×全幅×全高:4860×1820×1440mm


ホイールベース:2850mm


車両重量:1760kg


エンジン形式:V型6気筒DOHCターボ


排気量:2997cc


ボア×ストローク:86.0×86.0mm


圧縮比:10.3


最高出力:298kw〈405ps〉/6400rpm


最大トルク:475Nm/1600-5200rpm


燃料タンク容量:80L


トランスミッション:7速AT


エンジン・駆動輪:F・RWD


サスペンション:Ⓕダブルウィッシュボーン Ⓡマルチリンク


ブレーキ:ⒻⓇベンチレーテッドディスク


タイヤサイズ:245/40R19


WLTCモード燃費:10.0km/L


市街地モード燃費:6.5km/L


郊外モード燃費:10.6km/L


高速道路モード燃費:12.5km/L


車両価格:562万5400円

シンクロレブコントロールが低ミュー路で活きる

 続いて、周回コースに用意されていたZニスモは、なんと6速MT車だった。しかし、現行ZのMTには“シンクロレブコントロール”がついていたことはなにより心強かった。




 同様のデバイスは最近もBMW、ホンダ、トヨタなどでも使われているが、クラッチペダルを蹴っ飛ばしてテキトーにレバーを放り込むだけで、エンジン回転がピタリと合ったショックレスの変速が完了する見事な所作は、初体験したときにはまさに目からウロコだった。




 変速にまつわるわずかなトラクション抜けや加減速ショックもグリップを失うキッカケになり得る低ミュー路では、変速はできるだけ避けたい。しかし、シンクロレブコントロール付きなら躊躇なく変速レバーに手が伸びる。

 また、現行ZのMTはかなりの手応え・脚応えのあるタイプだったはずだが、最新のものは発進から意外なほどイージーだった。聞けば、2017年7月に実施された一部改良(=2018モデルイヤー以降)で、クラッチペダル踏力を軽くするとともに、半クラッチのコントロール性も向上させた新型の高効率クラッチが採用されているのだという。




 こうして、おっかなびっくりとはいえ、意外に走る日産FRを楽しんだ後、最後にGT-Rに乗ったら、これがまさしく圧巻だったのだ。




(次ページへ)





■フェアレディZ NISMO


全長×全幅×全高:4330×1870×1315mm


ホイールベース:2550mm


車両重量:1540kg


エンジン形式:V型6気筒DOHC


排気量:3696cc


ボア×ストローク:95.5×86.0mm


圧縮比:11.0


最高出力:247kw〈336ps〉/7000rpm


最大トルク:365Nm/5200rpm


燃料タンク容量:72L


トランスミッション:6速MT


エンジン・駆動輪:F・RWD


サスペンション:Ⓕダブルウィッシュボーン Ⓡマルチリンク


ブレーキ:ⒻⓇベンチレーテッドディスク


タイヤサイズ:Ⓕ245/40R19 Ⓡ285/35R19


JC08モード燃費:9.1km/L


車両価格:640万9700円

圧倒的な基本フィジカルで雪道も制覇!

 日本が世界に誇るGT-Rは、570ps/637Nmという怪物級のエンジン性能を持つ。「まともにアクセルが踏めるのか!?」と思いきや、これがまた積極的にアクセルを開けても走行ラインは乱れず、しかもきっちりと推進力に転換してくれる。とにかく私程度のアマチュアでもガンガン踏めるのだ。




 このあたりはさすが4WDだが、ただの4WDではない。

 後輪駆動主体のアクティブ制御ということもあって、もともとが4WDらしいバツグンの安定感なのに、けっして安定一辺倒でなく、ちゃんと曲がる……といった舗装路の超高速でのGT-R本来の特性が、この極端に低ミューな雪道でもそのまま味わえるのがなにより素晴らしい。




 これは4WDシステムの優秀性だけでなく、優れた前後重量バランスと超低重心、そして4本のタイヤにきっちり荷重がかかるトランスアクスル・レイアウトなど、GT-Rの圧倒的な基本フィジカル能力のなせるワザだと思われる。





■GT-R プレミアムエディション


全長×全幅×全高:4710×1895×1370mm


ホイールベース:2780mm


車両重量:1770kg


エンジン形式:V型6気筒DOHCターボ


排気量:3799cc


ボア×ストローク:95.5×88.4mm


圧縮比:9.0


最高出力:419kw〈570ps〉/6800rpm


最大トルク:637Nm/3300-5800rpm


燃料タンク容量:74L


トランスミッション:6速DCT


エンジン・駆動輪:F・AWD


サスペンション:Ⓕダブルウィッシュボーン Ⓡマルチリンク


ブレーキ:ⒻⓇベンチレーテッドディスク


タイヤサイズ:Ⓕ255/40R20 Ⓡ285/35R20


WLTCモード燃費:7.8km/L


市街地モード燃費:5.2km/L


郊外モード燃費:8.4km/L


高速道路モード燃費:9.4km/L


車両価格:1232万9900円
情報提供元: MotorFan
記事名:「 後輪駆動やスポーツカーでスノードライブ! スカイライン400RとフェアレディZニスモ、そしてGT-Rで真冬の北海道を激走する〈日産雪上試乗会レポート3 of 3:スポーツカー編〉