PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)
REPORT●モルツ
スポーツ性を前面に押し出したスタイルと機能を有するマジェスティS(以下マジェS)。生産国の台湾ではSMAXの車両名でリリースされており、マックスシリーズの名を冠している由緒正しきモデルだ。その後はNMAX155やPCX150が登場し、3台とも人気を博している。
そんなワンフィフティシーンの火付け役であるマジェSのカスタムを発売当初より手掛けているのがエムソウルの種市さんだ。
「マジェSとNMAXの大きな違いはチューニングの発展性にあります。良い意味でマジェSエンジンの基本設計の古さがパワーアップ向いていたのです。誤解のないように言っておくとマジェSはノーマルでも十分なポテンシャルに仕上がっています。そこからオーナーが〝もっとこうしたい〟と思った時にチューニングでカバーできる懐の深さを持っているとういうことです」。
では具体的にどのようなメニューが人気なのか?
「ボアアップや吸排気を真っ先に思い描くかもしれませんが、予算の問題もあり全員が行なうわけではありません。またマジェSはシート高が795mmと高く、足着きを改善したいという声がよく聞かれますが、単純にローダウンサスを組めば解決とはいきません。前後のバランスが崩れてしまいますし、シリンダーヘッドの角度が変わったり、タンデム時にフルボトムしてしまう弊害も。ライダーが乗車した状態で沈み込んで足が着きやすくなり、走行中も奥でしっかりと粘る〝良く働くサスペンション〟を選ぶことが重要です」。
確かに同社が今までに手掛けてきたカスタム車を鑑みると、エンジン以外に足周りにも注力されていた。
「ブレーキについてはロックしやすいという声もありますけど、これは制動力ではなく効かせ方(コントロール性)の問題。メッシュホースや社外パッドに替えるだけで済むことがほとんどです。もちろんバネ下の軽量化や安全性にもつながりますから余裕があれば変更したいですね」。
さて次はパワーユニットについてお伺いしてみよう。
「排気量をあげればトルク感が増して全域で余裕を持たせることができます。これを土台にしてストレスなく走れるように仕向けていくわけですね。弊社ではレベル10製の183㏄キットをラインナップし、モアパワーを求める人向けにビッグヘッドキットも用意しています。これらはビッグインジェクターの併用や点火系の強化を推奨しています。排気系も変えた方が当然良いですが音量が大きくなるため純正マフラーのままという人もいます。なおボアアップは最高速を伸ばすものではないので、トップスピードを求めるなら駆動系やカムシャフト、ハイギアでセットアップすることをお忘れなく」。
ここでポイントなのがボアアップキットの鍛造ピストンをあえて圧縮比を抑えたものにしている点。壊れるリスクを軽減し、耐久性や扱いやすさを求めた結果だという。また燃調についてもオリジナルマップをあらかじめ設定したサブコンを用意し、カプラーオンで済むようにしている。
他にもマジェSは縦方向へのフレームの〝しなり〟が強いためサブフレームを追加したり、バッテリー容量が少なめだからスターターハーネスを強化して冬場の始動性を改善したり、走りの面から利便性、ドレスアップまで幅広く対応している。
ここまで話を聞いて『とにかく手を掛けろ!』ではなく、まるでレーサーを作るかのように車体のマイナス面を消しつつ、乗り手のオーダーに応じて細かく調整してくれているのが良くわかる。これもマジェSの酸いも甘いも知り尽くしているからこそ成せることだろう。
「良くも悪くもマジェスティSはやった分だけ成果が顕著に出ます。だからとことんやりたくなっちゃう(笑)。がっつりイジりたい人も、予算内で仕上げたい人も一度ご相談ください!」