しかし、ミラージュは見事に復活を遂げることになる。それが、2012年に登場した現行型というわけだ。その翌年には、セダン仕様を投入。単にミラージュセダンと呼ぶのではなく、「アトラージュ」という専用ネーミングが与えられた。世界的にもアトラージュの名が使われているが、フィリピンでは「ミラージュG4」と名付けられるなど、地域差もあるようだ。
アトラージュは、ミラージュ同様の世界戦略車だが、その守備範囲は、やや異なる。ミラージュがタイ、欧州、米国をはじめとする世界約90カ国以上で販売されているのに対して、アトラージュはタイや米国を中心に約60カ国で展開されるなど、セダンニーズの高い市場を狙って投入されている。その性格はスタイルにも表れ、カジュアル&スポーティ路線のスタイルでデビューしたミラージュとは異なり、グリル付きのフォーマルな顔つきを採用。さらに後席の居住性を高めた上、トランクルームも追加するために、ボディにも手を加えており、ホイールベースを100mm、全長を450mm延長されているのも大きな特徴だ。
昨年デビューした改良型の進化のポイントにも触れておこう。三菱自動車のファミリーフェイスである「ダイナミックシールド」を取り入れることで、シャープかつ力強いフロントマスクに進化。これによりセダンとハッチバックのフロントマスクの共通性が高められた。変更点は、グリルとバンパーだけでなく、ヘッドライトのデザインにも及ぶ。シャープな形状とし、上位グレードではプロジェクターBi-LEDタイプに。さらにリヤテールランプは、形状変更と共に全車LED式へと改められている。この新デザインは、ミラージュとの全長差をさらに、10mm拡大。また15インチアルミホイールも新デザインとなり、ここもミラージュと差別化されている。
インテリアは、基本的には共通のデザインとなるが、上位グレードではシート表皮が変更することで、それぞれのキャラクター分けをしている。新型モデルでは、ミラージュがファブリックとフェイクレザーのコンビシートとなり、ファブリック部がチェック柄のスポーティなテイストとした。一方、アトラージュは、モノトーン仕立てのフェイクレザーシートとなり、上級感を演出している。また後席の格納式センターアームレストもアトラージュ専用アイテムである。
パワーユニットは、全グレード共通のガソリンエンジン1タイプのみ。全車に、自然吸気仕様の1.2L直列3気筒DOHCエンジンを搭載し、最高出力78ps/6000rpm、最大トルク100Nm/4000rpmを発揮する。エントリーグレードのみ5速MTが選択できるが、CVTがメインだ。
グレード構成も同じで、エントリーグレードの「GLX」、上位グレード「GLS」、仕様と装備を強化した最上級グレード「GLS LTD」の3タイプ。基本的な装備は、エントリーモデルから備わり、なんと7インチのディスプレイオーディオも全車標準化。こちらは、Apple CarPlayとandroidAutoに対応している便利なところ。
アトラージュの価格は、494000バーツ~624000バーツ。日本円だと、約180万円~約226万円(※1バーツ=3.62円換算)となる。ミラージュとの価格差は、GLXだと20000バーツ、GLS及びGLS LTDでは5000バーツ高めに設定。セダンの方が、少しサイズが大きいこともあり、ややポジションも上のようだ。
三菱自動車工業によると、タイでは、ミラージュ同様に経済性に優れたコンパクトカーとして支持されており、実用性を重視する人や家族で使う人たちに人気があるとのこと。新興国では、自動車が高級品ということもあり、セダンニーズが高い傾向にある。ただ元々ピックアップトラックのニーズも高いお国柄だけに、昨今は、SUVへの関心も高まっている。それだけにハッチバックやセダンは、若者を意識したスポーティさを強調する傾向がみられるようだ。今回の改良では、アトラージュは、セダンらしさはそのままに、ミラージュの持つ若々しさも活かすことで、更なる市場開拓を狙っているのだろう。ただ他車がダウンサイズターボを導入する動きもあり、スポーティさを強調した分、今後は現地の消費者たちの性能面の要求も高まっていくかもしれない。