「鈴鹿でやるタイムアタック用のセットアップに来るということで、僕はルノーがどのようにクルマを仕上げるのか、その様子を見られるというのがとても楽しみで行ったんです。ところが行ってみると、(テストドライバーの)ウルゴンさんは比較的乗らず、『タニグチどうぞ乗ってください』みたいな感じで乗らされたんです。好きなようにセットアップしてくれ、みたいに言われてセットアップしていったんですけど、どうやら本来ルノーがベストじゃないと思う状態で渡されて、タニグチがどう仕上げていくかを見ていたようなんですね」
要は試された格好だった。しかし谷口選手が思うとおりのセットアップを進めていったところ、結局は「やはりそういう方向だろう」という結果となり、そのクルマは非公式ながらルノーが想像する鈴鹿のベストタイムを大幅に縮めることとなった。
ルノーがこの結果に満足しないはずがない。昨年11月に開催した鈴鹿のタイムアタックにおいても谷口選手は招かれる。その際のクルマはオドメータ1500kmしか刻んでいないコンディションだったにもかかわらず、ウルゴン氏が2分25秒454という記録を叩き出すに至った。先代が28秒台だったことを考えると猛烈な進歩である。
後日、谷口選手はトロフィーRで筑波サーキットでのタイムアタックに臨む。1分3秒591。参考までに「ドイツ製の国産車」が3秒台だったというから、その実力がいかほどか想像できるだろう。ルノー・ジャポンが持ってきたツルシの状態でタイヤはそのまま、撮影を兼ねた周回で「気が向いたらタイムアタックを始めてください」という状況下での記録だった。さらに言えば「いま、慣らしを終えたクルマで新しいタイヤに履き替えたなら、もっとタイムを縮められる自信があります」という。
「僕くらい腕がある運転手になると(笑)、このクルマは抜群にいい。楽しい。1000万という価格はアリだと思います」
開発ドライバーのウルゴンさんはドライビングがアグレッシブ。たとえばクルマが斜めになったときにブレーキをかけてヨーを発生させ、積極的に曲げていくようなテクニックを用いる。一方の谷口選手はとにかくていねいな操作を心がけるドライビングスタイル。極端に運転の仕方が異なるプロドライバーふたりがかかわったにもかかわらず(のおかげで?)、メガーヌR.S.トロフィーRは抜群の仕上がりとなった。
すでにアナウンスされているとおり、トロフィーRは全世界で500台限り、そのうちの30台のみが「カーボン・セラミックパッケージ」仕様として生産される。日本への割り当てはトロフィーRが47台/カーボン・セラミックパッケージはわずか4台。谷口選手も「アリ」というこのクルマを手に入れられるのはいったい誰か?