アナログ派自動車評論家・瀬在仁志(ヒトシ君)が助手の75(ナコ)とともに、話題のクルマに乗ってオイシイモノを食べに行くという食いしん坊企画の第6弾。道中、感じたことや気がついたことを言いたい放題しつつ、最終的にはオイシイモノにありつくという企画。今回は、気楽に使える高級車ということで、AクラスとCクラスの間で若干地味な印象を持つBクラスに乗り込みます。「ちょっと中途半端な感じなんだよね」という共通意見は払拭できるのか?!




講師:瀨在仁志(Hitoshi SEZAI)


助手:生江凪子(Naco NAMAE)

 今回のお題は、メルセデス・ベンツ Bクラス。現行Bクラスは、2019年にフルモデルチェンジを受けて3代目となった。プラットフォームはMFAでベースとなっているAクラスのトール版という位置づけは変わっていない。


 さて、本日の「言いたい放題本音インプレ」はいつもとちょっと違うスタートです。




 小雨降るなか、御殿場IC近くのビジネスホテルに宿泊中のヒトシ君を助手75が迎えにいくところから、試乗開始。



助手75: あのさぁ~、9時に来いとは! 御殿場で試乗スタートっていうから、5時起きで来たわよ。アタシ、早朝運転とか、マジ不安だから富士スピードウェイへ行く別取材チームと一緒に連れ立ってきたわよ。




「まったくさぁ~」と大騒ぎだが、東京からはるばる運転して来たのは取材チームの若手。かたや75が運転を開始したのはルートが分かれる御殿場のICから。大して運転していないのに、東京から運転してきたかのような大げささである。

早朝出動で、はや笑顔がひきつる助手75



ヒトシ君: ごめんごめん。どうしても東京に戻れなくてさぁ。でもさ、オレだって結構忙しいんだぞ、言わないけど。

助手75: 声に出てるけど。だだ漏れだけど。で、お持ちしたわ。ご依頼のBクラス、ガソリンエンジン搭載のB180。Bクラスって、AクラスとCクラスの間に挟まれてちょっと地味よね? なんでBクラスを指定したの?

ヒトシ君: うん。このBクラス、モデルチェンジしたばっかりなんだ。Bクラスって地味だと思うでしょ? でも、よく注意して見ていると、結構走っているんだよね。ちょっと調べてみたんだけどBクラスのメインの市場はたぶんヨーロッパなんだ。先代のBクラスは欧州で2012~2018年の7年間で約58万台売れてるの。同じ時期にAクラスは88万台だから、それぞれ年平均約8万3000台、約12万6000台も売れているんだよ。合わせると約21万台にもなるって結構な数字じゃない?

助手75: ヘェ~。Bクラスのライバルってなると、BMWの2シリーズのアクティブツアラー/グランツアラーってことになるのかしら。

ヒトシ君: そうだね。サイズ的にもそうなるね。ま、小雨も降ってるし、ホテルの前っていうのもなんだから、とにかく出かけようよ。まずはジャンケンしよう!




 ここからどこに行かれるのかもわからないが、とにかく脊髄反応でじゃんけんをするふたり。散々あいこを繰り返し、結果案の定というか、お約束というか、ヒトシ君の勝利。

小雨降るなか「あいこ〜で、ショッ!」の声が響く……



ヒトシ君: それにしても残念なことに雨になっちゃったね。このあとの天気、スマホで調べてみてよ。

助手75: ノンノン。このクルマにはMBUXが載っているのよ。例の「ハーイ、メルセデス!」ってやつね。メルセデスって呼びかけると反応してくれるんだから、携帯を使おうなんて野暮よ野暮。「ハーイ!メルセデス、今日の天気を教えて!」



メルセデス: ……

メルセデス! メルセデス! と言い過ぎたのか、MBUXは考え込んでしまった
一所懸命読解しようとしてくれている。頑張ってる。ぐるぐる……の部分拡大




ヒトシ君: ブハッ。なにも言わないけど。

助手75: ちょっと! どういうこと?

PH担当: あのさ、もっとピンポイントのほうがいいんじゃない?

助手75: だいたい、どこ向かってるのよ?

ヒトシ君: そうだなぁ、今日はこのまま北上して長野県茅野あたりへ行ってみようか。食べてみたいラーメン屋さんがあるんだよ、うむ。

助手75: 茅野ね。茅野! 美味しいジェラート屋さんがあるわよ!

PH担当: いつも思うんだけど……絶対に負けじと行きたいところ探すよね。じゃんけんする意味あるの?




 PH(カメラ)担当の身もふたもない発言は華麗にスルーして、MBUXに茅野の天気を聞くと、「曇りです!」。

次は成功。MBUX、慣れたらなかなか良き相棒になりそう?!



助手75: そもそもさぁ~

ヒトシ君: でた! 75のそもそもさぁ。な、なぁに?

助手75: Bクラスって、どんな人が買うの? Aクラスっていうコンパクト・メルセデスがあるわけでしょ? ちゃんとしたセダンならCクラスがあるわけだし。

ヒトシ君: あのね。Cクラスは、文字どおりクラスが違うの。このBクラスは、いわゆる「Cセグメント」でしょ。CクラスはDセグメントなの。

助手75: ビーがシーで、シーがディーね。Cクラスのエントリー(C180)が463万円。で、このB、いかほどかしら?(ごそごそと広報車の仕様書を見始める)車両本体価格は392万円ですって。ん? ぬあぁああああ、この広報車、オプションがたっぷりついていて526万9000円って書いてある!

ヒトシ君: Cクラス、買えるじゃん。いやいや、違うな。金額だけじゃないよ。うん。この全長4425mm、最小回転半径5.0mというコンパクトさがいいんだよ。

助手75: Bクラスは、なんていうカテゴリーなの? ハッチバックでもないし、ワゴン?

ヒトシ君: そうだね。これは「都市型ユーティリティワゴン」っていう呼び方がいいんじゃないかな。

助手75: なるほどね。ちょっと背が高いから、なんだか見晴らしもよくて気持ちいいわね。乗り降りもしやすいし。そういえば、ワタシの友だちも、後席にチャイルドシートをつけて使うことを考えてBクラスを買った人がいるわ。子どもがいると、車高は高いほうがラクってことなのかしら。ところでこのクルマ、ちょっとエンジンがボーボーいってない? エンジンはどんなの?

形式:1.3ℓ直列4気筒DOHCターボ/排気量:1331cc/ボア×ストローク:72.2×81.3mm/圧縮比:10.6/最高出力:136ps(100kW)/5500pm/最大トルク:200Nm/1460-4000rpm



ヒトシ君: 1.3ℓの直4直噴ターボ。いわゆるダウンサイジング過給エンジンだね。136ps/200Nmだからそんなにパワフルじゃないけど、元気よく走ってる。トランスミッションは7速DCT。デュアルクラッチだからシフトにダイレクト感があっていいかなと思ったけど、市街地の微速の発進停止はちょっとギクシャクするかな。乗り心地はどう?

ふたりを乗せたB180は、国道138号線を北上。富士五湖道路を通って中央高速へ



助手75: うーん、長く座っていたら、お尻が痛くなってきた。本革シートで、お尻が滑るのがちょっと気になるかな。後席の乗り心地もあんまりいいとは言えないわねぇ。

ヒトシ君: そう? 前型よりも相当改善されていると思うけど……前型はリヤがトーションビームアクスルで、これがいまひとつだったんだよ。

助手75: (カタログを見ながら)新型もリヤはトーションビームアクスルですよ。

ヒトシ君: そうか。マルチリンクじゃないんだね。確かにちょっとドタドタするけど、ずいぶんよくなったよ。

ヒトシ君! 峠の釜めし屋さんです!(助手75)
うむ。とりあえず、ピットインだな(ヒトシ君)





 Bクラスは目的地に向かって諏訪ICを降りると、デデンとそびえる「峠の釜めし」の看板に吸い込まれるように駐車場へ。「峠の釜めし・諏訪店」である。この人たちはちゃんとクルマのインプレッションをしているのだろうか、と一抹の不安を抱えるカメラ担当をよそに、ふたりはキャッキャ言いながら店内へ吸い込まれていった(昼食のラーメン屋さんへ向かっているにもかかわらず、75は「今日の夕食~」と嬉々として釜めしを購入して戻ってきた。胃の構造に疑問しか湧かない)。




 そして峠の釜めし・諏訪店を出発して20分ほどで、ようやく本日の真の目的地「麺屋蔵人」へ到着。

この趣のある建物が「麺屋蔵人」さん。車高低めなクルマは駐車場の段差注意です
ヒトシ君は、順番を抜かれる! 撮影している場合じゃない! と気が急いています




ヒトシ君: お、ついたついた。混んでるかな~。

助手75: 麺屋蔵人。茅野で人気の味噌ラーメン屋さんですね。

ヒトシ君: おっ、さすが詳しいね。

助手75: 来たことないけどね。さ、クルマを駐めま……けっこう混んでますね。

ヒトシ君: ここはさ、むかし味噌とか醤油の原料のマメを貯蔵していた蔵をリノベーションしたお店なんだよ。味噌ラーメン、楽しみだなぁ~。




 さすが人気店だけあってお昼の時間をずらしているのになかなかの盛況ぶり。運良く1台分のスペースを発見し駐車して趣のある店内へ向かう。店内に入ると、これまたラッキーなことにそんなに待たずに席に案内された。


 早速、極上葱味噌らーめんとタケヤ信州味噌らーめん(各々もちろんトッピング追加)を注文。ラーメン好きヒトシ君はいわずもがなだが、75も文句をいうワリに毎回しっかり堪能している。このコンビ、仕事だって認識、あるのかな。

ヒトシ君チョイスの、京都産の九条葱をふんだんに使った1日20食限定の「極上葱味噌らーめん」
75の選んだ「タケヤ信州味噌らーめん」は期間限定。こちらも九条ネギが入る、大満足の一杯




助手75: ぷは。美味しかった~。さ、河岸を変えますか!

ヒトシ君: もう一回来たいけど、この連載だと2回目がないんだよなぁ。

ふたりで: 残念だよねぇ。




 いや、もう勝手に個人で来てください……と突っ込みたくなる会話を繰り広げながら、次の目的地へ向かって出発するふたり。県道188号・グリーンライン・県道17号を経由し市街地を抜けると、ゴルフ場もあるのどかな別荘地帯へ差しかかった。



ヒトシ君: こうやって高原の別荘地帯を流していると、Bクラス、いい感じじゃない? Aクラスだと、背が低くて荷物もあんまり詰めなさそうだけど、Bクラスだとリラックスして座れる。荷物も結構詰めそうだし。

別荘地帯を流していると、サイズ感がちょうどいいことに気づく



助手75: そうね、アリな気がしてきた。ラゲッジもだいぶ大きいわね。Aクラスだと370ℓでシートを倒して1210ℓなのに対してBクラスは455ℓ、1540ℓだからだいぶ違うわよ。別荘に滞在するために荷物を積んでくる、なんてときにいいかも。とはいえ、Bクラスがあるなら、ガレージにはもう一台、Eクラスとかあってほしいなぁ。

ヒトシ君: 75はアタマの中がバブルだよねぇ。Bクラスはさ、Aクラスはかっこいいけど車高が低すぎて乗り降りがしにくい、Cクラスはちょっとお高いし大きい、SUVは仰々しくていや、もちろんミニバンも違うというニッチな層にアピールするんだよ。

ラゲッジルームは1540ℓという大容量。この広さはうれしい。ゲートが足で開閉できて至れり尽くせり

片側を倒すと長モノもOKのスペースが出現。日常使いにも活躍しそう
通常でも455ℓ。Aクラスの370ℓに対して、選ぶ基準にもなる満足な容量




助手75: なるほど。で、ライバルがBMW2シリーズってこと? でもメルセデスがほしい人はBMWとは比べないよね。

ヒトシ君: メルセデスのラインアップで、ちょうどうまい具合に隙間を埋めてくれてるのがBクラスなんだよ。確かに目立たないけど、使い勝手はいい。変に目立たないところがかえっていいのかもしれないよ。

助手75: ワタシはメルセデスならSLがよいです。

ヒトシ君: バブル75の意見はもはやどうでもいいんだけどさ、なんかデザート食べるって言ってなかったっけ?

店内は販売のみですが、テラス席があります。真冬以外は、気持ちいいですよ
お店の位置が少し奥なので、ご来店の際は看板を見落としなきよう、ご注意を




助手75: そうそう! 本日のオヤツは美味しいジェラートです。この先の尖石の湯へ向かってください。

ヒトシ君: 温泉があるんだ。いい場所だねぇ。

助手75: 今日は残念ながら入れませんがね。はい、そちらです。




 到着したのは「グラスリーぺぱん」さん。75に言わせると、このエリアに来てここを押さえないのはモグリだとか。こじんまりしているので看板を覚えておかないと通過してしまいそうだ。店内に入ると美味しそうなジェラートが並んでいる。



助手75: なんか、よくわからないんですけど、デザートは75の自腹でご馳走することになってしまっているので、どうぞお選びください。あ、領収書ください、ナマエ、で。はい。

ヒトシ君: いつも悪いね~ぇ。ひっひっひ。

ヒトシ君は、いちごみるく/ジンジャー&みかん、75は、すりおろしりんご/ジンジャー&みかんをチョイス。「えごま」なるお味もありましたが、つねに冒険しないツマラナイふたり



ヒトシ君: おごりだと倍、美味しいわ。ごちそうさま。さて、75も運転しなよ。

助手75: 朝ちょっと運転しましたけどね。じつはBクラスを運転したの、今回が初めてなんですよ。乗り心地はかなり軽めで、ヒトシ君が言うように、国産からの乗り換えでもすんなり移行できそう。さすがって思うのは、「ただただ厚みがあって頑丈」ではなくて、軽やかなのに剛性感があるところ。でも、乗り味はザ・メルセデスという印象ではないけど。まぁ、だからこそライト版なのね、きっと。友だちじゃないけど、子どもができたら、乗りたいわね。

ヒトシ君: 子どもっていうか、そもそも独……さ、そろそろ帰ろうか。陽もとっぷり暮れたしね。

コンパクトサイズなので運転しやすいのはもとより、安心感があるところはメルセデスならでは



ヒトシ君: ところで、この細いライトいいねぇ。

助手75: アンヴィエントライトね。色も明るさもいろいろ変えられるのよ。なんだかムーディにもできるし。いやいや、そこじゃなくてアダプティブハイビーム、あ、正式にはアダプティブハイビームアシスト・プラスっていうらしいんですが、それがパッケージオプションってところに反応してくださいよ。片側18個のLEDっていうのは、このクラスにしては上出来ですよ! 上位クラスの技術をライト版にも惜しみなく投入するクルマ作りは素直に素晴らしいと思う。ウン。Bクラス、いいかも。シートの不満足感を差し引いても、アリ。

アンヴィエントライトで、車室空間のデザインが自分好みにできる。なかなかムーディ
やはりあるとないとでは雲泥の差。ハイビームアシストがパッケージオプションとはうれしい




ヒトシ君: じゃあこのまま東京へ帰るかな。ちなみに100km/h巡航時のエンジン回転数は1800rpm。まぁまぁダインサイジングターボ+7速DCTだから普通かな。車重が1480kgと結構重いから1.3ℓターボの200Nmだと余裕たっぷりとはいかないけど、過不足はないね。

助手75: 街乗りメインで使うなら、充分じゃない?



助手75: こうやって高速道路を走っていても、よく見ているとBクラスって結構走っているのね。これまで気づかなかったけど、このカテゴリー、結構ニッチだけど人気があるんだ。あ、渋滞になっちゃったね。ワタシ、ちょっと寝るね。




 そういうや否や、がっつりシートを倒してヨダレをたらさんばかりに寝始めた……。

【本日のルート情報】


御殿場IC近くのホテル出発〜国道138号線を北上〜富士五湖道路を通って中央高速〜諏訪IC〜御柱道にて麺屋蔵人〜188号、17号と経由して縄文の道(戻ってきてグラスリーぺぱんへ行く)〜ゴルフコースのある別荘地帯。帰路は、来た道を戻って諏訪ICから東京へ。




【本日のオイシイモノ情報】


麺屋 蔵人(めんや くろうど)


長野県 茅野市 玉川 4147-1


0266-82-3335


11:30~22:00


無休




グラスリー ぺぱん


長野県茅野市豊平4734-253


0266-71-6171


10:00~18:00


夏期10:00~19:00


冬期10:00~17:00


火曜定休(8月は無休)※冬期:月・火曜定休




※営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください



メルセデス・ベンツ B180




全長×全幅×全高:4430mm×1795mm×1550mm


ホイールベース:2730mm


車重:1490kg 前前軸重:890kg 後後軸重:600kg


サスペンション:F マクファーソンストラット R トレーディングアーム


タイヤサイズ:225/45R18


ラゲッジスペース:455~1540ℓ(VDA方式)




エンジン


形式:1.3ℓ直列4気筒DOHCターボ


型式:M282


排気量:1331cc


ボア×ストローク:72.2×81.3mm


圧縮比:10.6


最高出力:136ps(100kW)/5500pm


最大トルク:200Nm/1460-4000rpm




トランスミッション:7速DCT




燃料:プレミアム


燃料タンク:43ℓ


燃費:WLTCモード 15.0km/ℓ


   市街地モード 11.2km/ℓ


   郊外モード 15.4km/ℓ


   高速道路モード17.3km/ℓ


最小半径:5.0m




車両本体価格:392万円


試乗車両価格(オプション込):549万4500円
apparel(75)|Down vest:Max Mara/tops:Joseph/pants:Mother/shoes:New Balance
情報提供元: MotorFan
記事名:「 【連載】クルマに乗って「オイシイモノ」を食べに行こう! ⑥メルセデス・ベンツ Bクラス