REPORT◉吉岡卓朗(YOSHIOKA Takuro)
PHOTO◉折原弘之(ORIHARA Hiroyuki)
※本記事は『GENROQ』2020年1月号の記事を再編集・再構成したものです。
EVスーパースポーツまで登場し、もはやレーシングカーを超えるタイムに達したニュルブルクリンクでのタイムアタック。SUVも参入するなど混沌としているが、その中で伝統の一戦ともいえるのがFWDホットハッチクラスだ。その現時点のチャンピオンがメガーヌR.S.トロフィーRである。今回試乗したのはその兄弟グレードとなるR.S.トロフィーで、トロフィーRがSタイヤやブレーキ強化、後席も無い過激なサーキット仕様なのに対して、トロフィーはウエットでも安心なポテンザS001を履き、後席を備える、普段使い可能な1台だ。
エンジンはベースのR.S.と同じ1.8ℓ直4ターボながら、最高出力21ps、最大トルク30Nmを上乗せした300ps、420Nmを誇る。足まわりもR.S.よりサーキット志向のシャシーカップを採用している。
ピットレーンに並ぶトロフィーに乗り込みホールド性の高いレカロシートを調整する。早速R.S.ドライブスイッチでスポーツモードに切り替えてコースイン。アクセルのつきがいい。素のR.S.に試乗することなく、いきなりトロフィーの試乗となったので比較はできないが、300psと420Nmは伊達ではないと感じさせる。バックストレートではスポーツエキゾーストが勇ましい音を奏で、最高速はメーターで180㎞/hに達した。6速DCTの変速は速い。6速MTも用意されるが速さならDCTだ。なおエキゾーストはアクティブバルブ付きでノーマルモードを選択すれば早朝の住宅街を静かに走行できる。
新型メガーヌといえば後輪操舵が如実に体感できるのが大きな特徴だ。60㎞/hまでの低速域では後輪が逆位相に最大約3度切れる。ESCが解除されるレースモードにすると100㎞/hから同位相に切り替わる設定だ。この後輪操舵が奏功したのか、このサーキット試乗では驚くほどオーバーステアを示した。先代メガーヌR.S.もFWDながら容易にオーバーステアに持ち込めたが、いかんせんヘリカルLSDの利きが弱く、内輪が空転しやすかった。ところが新型R.S.トロフィーに搭載されるジェイテクト製トルセンLSDはアクセルオンで斜めに立ち上がるラリーのような走りを楽しめてしまった。ただし、100㎞/hを超える最終コーナーでもわりとテールが流れやすかったので、慣れるまではスポーツモードでの走行をオススメする。
この日は多くのメディアが参加する試乗会なので、ブレーキを酷使しなかったが、心配ならばパッドをサーキット用に交換すれば問題ないだろう。久々にサーキットを心から楽しめるFWDに出会ってしまった。
SPECIFICATIONS ルノー・メガーヌR.S.トロフィーEDC〈MT〉
■ボディサイズ:全長4410×全幅1875×全高1435㎜
ホイールベース:2670㎜
■車両重量:1470〈1450〉㎏
■エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1798㏄
最高出力:221kW(300㎰)/6000rpm
最大トルク:420〈400〉Nm(42.8〈40.8〉㎏m)/3200rpm
■トランスミッション:6速DCT〈6速MT〉
■駆動方式:FWD
■サスペンション形式:Ⓕマクファーソンストラット Ⓡトーションビーム
■ブレーキ:Ⓕベンチレーテッドディスク Ⓡディスク
■タイヤサイズ:Ⓕ&Ⓡ245/35R19 ■パフォーマンス 0→100㎞/h加速:5.7秒
■車両本体価格:499万円〈489万円〉