REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
PHOTO●遠藤正賢/本田技研工業
そんな二代目N-BOXをベースとして、全高が115mm低く、車重も約50kg軽量(「L・ターボホンダセンシング」グレード同士での比較)に仕上げられている新型二代目N-WGNに、期待しない方が無理というもの。喜び勇んでテスト車両に対面すると、その第一印象は「良くも悪くもシンプルになっている」というものだった。
だがインテリアは、単純に質感がグレードダウンしている。二代目N-BOXと見比べても、メーターがN-VANに準じたものになった以外は、加飾パネルの面積やインパネ下部およびドアトリムの色使い程度にしか違いは見られない。だが、そのわずかな違いが確実に「N-BOXより安いクルマ」なのだという印象を、ショールームへ足を運んだユーザーに与えることだろう。
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その一方で乗降性は、劇的に進化した。特に後席は、初代N-WGNが後端上部を斜めに切り、わざわざ頭を入れにくくしていたのに対し、新型では最大限後ろまで伸ばしたスクエアな開口形状に。サイドシルとフロアの段差も限りなくゼロに近くなった。その結果、二代目N-BOXと比較しても、115mm低い全高の不利を補って余りあるほど乗り降りしやすいものに仕上がっている。なお、この印象は前席でも変わらず、腰痛持ちの筆者でも労なく座ることができた。
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一方で粗粒路を走った際のロードノイズは二代目N-BOXよりも大きく、良路から移行した際の変化も大きく感じられたのは気になる所。エアロモデルの「カスタム」にはルーフおよびボディ側面にインシュレーターが追加されるため、この点は大きく改善されている可能性が高いのだが、そもそもこうした差別化戦略は迷惑なことこの上ない。
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全グレードに標準装備(廉価グレードにはレスオプション設定あり)されるADAS(先進運転支援システム)「ホンダセンシング」は、二代目N-BOXよりもさらに進化。CMBS(衝突軽減ブレーキ)が横断自転車のほか街灯のない夜間での歩行者検知に対応し、ACC(アダプティブクルーズコントロール)は渋滞追従機能付きにグレードアップした。そして、車線中央の走行を維持するよう支援するLKASも、N-BOXと同様にNA・ターボ車問わず標準装備されている。
特にACCとLKASに関しては、スズキ、ダイハツはもちろん日産・三菱連合でさえ今なおターボ車やエアロモデル中心の展開(しかもオプションまたはグレード別設定)となっており、かつ車速・車間制御もラフさが目立つのに対し、新型N-WGNのものはその両面で大きなアドバンテージを持っている。それをホンダの宣伝・広報部門はもっと積極的に、分かりやすくユーザーにアピールすべきだ。こうしたイメージ戦略に関しては世界一巧みな日産の爪の垢を煎じて飲むべきであろう。
そんな新型N-WGN L・ターボホンダセンシングの車両本体価格は、税別139万円。N-BOX G・Lターボホンダセンシングの税別158万円と比較すると19万円安いのだが、もっと価格差が少なくてもおかしくないほど、両車の走りと機能、質感の差は少ないように感じられた。一言で言えば「これで充分」、コストパフォーマンスの高さでは現行モデル随一だ。もし筆者が実用的なクルマの購入を迫られたとしたら、その第一候補となるのがこの新型N-WGN L・ターボホンダセンシングである。
【Specifications】
<ホンダN-WGN L・ターボホンダセンシング(FF・CVT)>
全長×全幅×全高:3395×1475×1675mm ホイールベース:2520mm 車両重量:860kg エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ 排気量:658cc ボア×ストローク:60.0×77.6mm 圧縮比:9.8 最高出力:47kW(64ps)/6000rpm 最大トルク:104Nm(10.6kgm)/2600rpm WLTC総合モード燃費:22.0km/L 車両価格:152万9000円