REPORT●隅本辰哉(SUMIMOTO Tatsuya)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●SiLVER BACK GARAGE
ベスパに詳しいファンにとっては基本情報として認知されている方も多いだろうが、記念すべき市販第1号モデル「ベスパ・98」のデビューが1946年。その後改良や進化とともに、さまざまなモデルを生み出しながら現在も存続し続けるブランドが「Vespa」である。ちなみに製造メーカーがピアッジオとなり、ベスパはメーカー名ではない。
そのベスパにおける記念碑的モデルである「ベスパ・98」だが、正式なデビュー日は1946年4月23日だった。じつはべスパがイタリア通産省に正式にパテント受理された日であり、この日を誕生日としているワケである。
さて、そんな記念すべきベスパのデビューイヤーから丸70年目となる2016年。ベスパの生誕70周年を記念する限定モデルが全世界に向けてリリースされた。今回撮影することができたのは、まさにその70周年スペシャルバージョンである。
ベースとなったのはプリマベーラ125ABSで、この当時のフラッグシップだった「ベスパ・946」のエレガントなフォルムを継承したスモールの主力モデルだ。一応ご存知ない方がいるかもしれないので触れておくが、スモールとはベスパにおける小型ボディを採用したシリーズのこと。
946の優美さを備えつつ巧みなプレスライン処理なども手伝って、ボディに反射する光までも操ったエレガントなたたずまいを見せるのがプリマベーラなのである。
それまでスモールのベストセラーとして君臨してきたLXの後継機種として登場したプリマベーラだけに、メーカーサイドの力の入れようも凄まじいものがあった。エンジンマウントやダンパーに手を入れ振動軽減に努め、タイヤサイズをLXの11(F)/10(R)から前後12インチに改め、快適性と走安性を格段に向上させることに成功。正直シートやハンドルといったライダーが敏感に感じ取りやすい箇所での振動軽減は、ダイレクトにその効果を実感できるため評価の高い部分でもある。
しかもLXに採用されていたリーダーエンジンおよび3Vエンジンよりも環境性能、燃費効率、排出ガス性能を高めたi-Get4ストローク・空冷単気筒/SOHC・3バルブエンジンを搭載。これにコンパクトで静粛性に優れるエキゾーストシステム、新型ドライブシャフト、エアーボックス、インジェクション効率の向上などを組み合わせてパワー&トルクがアップ。
さらにABSを標準採用して安全性も大きく向上させたうえ、収納力や乗降性といった日常面での使い勝手もこれまで以上に確保。液晶デジタルマルチファンクションパネルを採用してクラシックなデザインに落とし込んだメーター周りの処理、LEDポジションランプの採用など、装備面の充実も抜かりはない。
このようにどこを取ってもバツグンなアップデート感でオーナーを満足させてくれるプリマベーラ125ABSではあるが、70周年限定モデルということでいっそう目を引くルックスが与えられている点は大きな魅力だろう。
まず専用であるのは言うまでもないが、透明感漂う淡いブルーの「アズーロ70」をボディカラーとして採用。さらに専用のダーク色ホイールと、やはり専用のブラウンシートを組み合わせ、シックさと高級感を巧みに両立させた装いが記念モデルらしい特別感を煽る。しかもシートにはホワイトパイピングをあしらい、70周年記念エンブレムと同デザインの型押しが入れられ特別感が増しているのもポイントだ。
加えてリアキャリアと専用レザー製トップケースを組み合わせ、クラシカルなルックスとしている点も雰囲気があって◎だ。この専用レザー製トップケースにも70周年記念の型押しが入れられている。トドメはフロントコンパートメントの扉に設置された70周年記念エンブレムだろう。これだけでスタンダードモデルとは違うと言う主張を感じ取ることができる。
これほどのスペシャル感を上乗せした「ベスパ・プリマベーラ70周年アニバーサリー」は、日本国内に30台のみがデリバリーされた超レアモデル。目の前を走り抜ける際の背景に溶け込み風景の一部となるような視覚的静粛性が印象的でもあるし、止まったときの存在感は70年という歴史の重みすら感じさせるものがある。そんな特別な1台をコレクションに加えられるとしたら、それは大いなるロマンの達成となりそうだ。
全長/全幅/全高:1,852mm/680mm/ーーmm
軸間距離/最低地上高:1,334mm/ーーmm
シート高:790mm
車両重量:ーーkg
エンジン:i-Get4ストローク・空冷単気筒/SOHC・3バルブ
総排気量:124.5㎤
最高出力:7.9kW〈10.7PS〉/7,770rpm
最大トルク:10.4N・m〈1.06kgf・m〉/6,000rpm
燃料供給装置:電子制御燃料噴射システム(PFI)
始動方式:セルフ式
燃料タンク容量:9L
トランスミッション:自動無段階減変速(CVT)
クラッチ形式:自動遠心クラッチ
フレーム形式:スチールモノコック
ブレーキ形式(前/後):油圧式200mmシングルディスクABS/機械式140mmドラム
タイヤサイズ(前/後):110/70 - 12"、120/70 - 12"
乗車定員:2名