TEXT&PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
2代目となるアウディA1スポーツバックが発表された。潜在カスタマーとのコミュニケーション手法(広告やカタログのつくり)を見ると、「若者をターゲットにしている?」と感じてしまうが、購買層のメインは先代と同様、50代にかなり近い40代後半より上になるだろう。販売側もそう予想しているようだ。広告宣伝は「若い人にも買ってもらいたい」思いの現れである。
当然のことながら、2代目は初代の弱点を消しにかかってきた。最大の弱点は後席の居住性だったが、そこに手を打ってきたのだ。ホイールベースは95mm延ばして2560mmにした。その結果、全長も伸びて4mを超え、4040mmになった。ただし、従来比55mm増に抑えている。ひとまわり大きくなったとはいえ、数字上も見た目の印象も相変わらずコンパクトだ。全幅は初代と同じ1740mm、全高は1435mmである。
相変わらずコンパクトだが、存在感はある。2代目A1スポーツバックはA8/A7に続き、A6やQ8も採用したアウディの新しいデザインフィロソフィーを受け継いでいる。競技で活躍したアウディ・スポーツ・クワトロ(1984年)のエッセンスを引用しているのが特徴だ。
先代A1は後席に人を招き入れる際に申し訳ない気分になるほどのスペースだったが、新型はそうしたシチュエーションでの申し訳なさがだいぶ減る気がする。新型は、「もうちょっと広いほうがいいけど、我慢できないほどではない」という印象。注釈をつけておくと、前席に身長184cmの筆者が座った際の後席スペースについて論じている(ので、たぶん辛口)。
後席を重視した設計ではない証拠にも感じられるのは、エアコンの吹き出し口がなく、スマホの充電に便利なUSBポートもないことだ。スマホを入れておくのに便利な、シートバックのポケットもない。アウディのラインアップにおけるA1の位置づけを考えれば無理もないが、基本的には、従来型同様に前席重視の設計といっていいだろう。だいぶ、過ごしやすくはなっているが。
ラゲッジルームは先代比で容量が65ℓ増え、標準時で335ℓある。ゲートを開けて覗き込んだ第一印象でいうと、ひとクラス上のCセグメントも顔負けの広さといった印象。開口部下端は充分に低く、使いやすそうだ。乗員スペースとラゲッジスペースの面では、車両サイズの大きなクルマから小さなクルマへの「ダウンサイジング」を受け止めるのに充分なスペースを確保しているといえる。
アウディの上位モデルのように、エアコンの操作パネルまでタッチ式にはなっていないが、新型A1スポーツバックはシームレスかつデジタルなダッシュボードを構成している。センターにはダッシュパネルと一体化した10.1インチのタッチスクリーンが収まっているが、これ、ナビゲーションパッケージとしてセットオプションになっている点に注意が必要だ。
A1スポーツバック35 TFSIアドバンストの車両本体価格は365万円。MMIナビゲーションシステムとバーチャルコクピット(フル液晶のメーター)をセットしたオプション価格は31万円である。この時点で396万円。スマホをワイヤレスチャージングできるのは便利だが、これはスマートフォンインターフェイスとセットで12万円だ。見栄えも機能も「いいもの」を選んでいくと 400万円オーバーになる。
エンジンのスタート/ストップがボタン式なのは当然として、パーキングブレーキが電動(EPB)ではなく手動なのは実質400万円台のクルマらしからぬ装備である(プラットフォームを共有するVWポロも同様に手動式)。手動で困るかというと特段困らないが、軽自動車ですらEPBを装備するご時世なので、先進的な周囲の装備や見た目とのミスマッチを感じる人がいるかもしれない。
アウディA1 Sportback 35 TFSI advanced
全長×全幅×全高:4040mm×740mm×1435mm
ホイールベース:2560mm
車重:1220kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビームアクスル式
駆動方式:FF
エンジン
形式:直列4気筒DOHCターボ
型式:EA211(DAD)
排気量:1497cc
ボア×ストローク:74.5mm×85.9mm
圧縮比:10.5
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000pm
最大トルク:250Nm/1500-3500rpm
燃料供給:筒内燃料直接噴射
燃料:無鉛プレミアム
燃料タンク:40ℓ
燃費:WLTCモード 15.6km/ℓ
市街地モード 11.7km/ℓ
郊外モード 15.8km/ℓ
高速道路モード 18.1km/ℓ
トランスミッション:7速DCT
車両本体価格:365万円
試乗車はオプション込みで468万円