で、レギュラーガソリンではどうかというと、これが思った以上に変わった。高速道路ではなく一般道での走行でもはっきりと分かる。トルクの線が細くなったというか、アクセル開度に対するレスポンスがまったりするというか、ぐっとおとなしい印象のエンジンに。
センターディスプレイに表示できる燃焼状態を見ると、SPCCIに入る頻度やその持続時間はあまり変わらない。しかし、SI時、SPCCI時どちらも印象は同じ。このおとなしくなる印象は、高速巡航にアクセルオンで加速しようとするとより顕著に感じられるが、一般道でも違いは大きい。ハイオクとレギュラーの違いは高負荷/高回転域で出ると考え、停止からの発進→低速走行という市街地ではハイオクとあまり変わらないのでは、と予想していたのだが……。
もちろんレギュラーガソリン使用も考慮された制御なので、エンジン回転上昇がスムーズでなくなるとか、異音や振動が出るといった不具合はまったくない。がしかし、エンジン回転数は滑らかに上がっていくのに、どうも車速の上昇が少し鈍いというような不思議な感覚なのである。CVTではなく、エンジン回転数と車速がリンクする有段式ATなのに、だ。
一般的な走行モード切り替えは、シフトタイミングの変更を主にしているものが多い。コンパクトカーやミニバンに多いエコ運転支援モードは、アクセルレスポンスを意識的にダルにして踏みすぎても車速を上げすぎないようにしている。SKYACTIV-Xにレギュラーを入れると、これらと微妙に異なる、不思議な印象だった。
上の記事で、マツダのエンジニアはこういっている。
「いや、本当にレギュラーでいく心意気だったのです」と髙松氏は頭を掻く。「夏にヨーロッパで現地のジャーナリストに乗っていただいたときに、『ハイオク仕様のほうがいい』というフィードバックをもらいました。当時、レギュラーで充分にできていないこともあって、葛藤があったのです。高回転や高負荷を使わない普通の乗り方であればレギュラーで充分です。でも、『走りたい』となったときに、レギュラーではなかなか応えることができない部分がありまして、ハイオク推奨という形で追加開発することに決めました」
エンジニアは「あえてレギュラーに合わせて圧縮比15.0で適合した」と言っていた。
編集部数人が、ハイオクガソリンとレギュラーガソリンで乗り比べたが、全員がすぐに違いに気づいた。ハイオクガソリンのときに感じた特別感はレギュラーガソリンにすると非常に薄〜くなってしまう。
たとえ、レギュラーを入れても問題なくエンジンは回るとしても、たとえ燃費もそんなに落ちないとしても、せっかく革新的燃焼方法のSKYACTIV-Xエンジン搭載モデルを(通常のSKYACTIV-Gよりだいぶ高価)大枚払って買ったオーナーが、レギュラーを入れた時のフィーリングを受け入れるか? もちろん、燃料代は下がるとしても、だ。
販売政策上、「国内仕様でレギュラー非対応、ハイオク指定は販売上あり得ない」ということなのかもしれないが、レギュラーガソリンを入れてドライブした我々モーターファン・イラストレーテッド編集部としては、「Xの良さが体感できならレギュラーは入れない。ハイオク指定で圧縮比16.3(かそれ以上。欧州のRON95に対して国内はRON100でいけるのだから)のエンジンにしてほしかった」と思ったのだった。