それにしてもである。「Chevrolet」と書いて「シボレー」はないだろう。まったく英語ってやつは、と思っていたら……
なんとシボレーは、フランス語由来だったのだ。
上の写真の人は、シボレーの共同創設者のひとり、スイス出身のルイ・シボレー(Louis Chevrolet)さんだ。ご存知の通りスイスは多言語国家だが、そのなかでフランス語話者が占める割合は高い。
そしてルイ・シボレーさん自身も、子供の頃にフランスに移住している。
その後、同じくフランス語圏のカナダはケベック州のモントリオールに移住し、レーシングドライバー兼メカニックとして活躍。ビュイックのドライバーに抜擢され、同社のオーナーであるウィリアム・デュラントさんとともにシボレーを創設することとなる。
というわけで、英語以上に難解なフランス語が由来だったというオチなのだが、実はフランス語の方が英語よりは規則性があるらしい、というのは知っていても損はない。
Chevroletを音節ごとにわけてみると、Cheはまさにフランス語の規則どおり「シェ」で、vroは「ヴ」の後にフランス語ならではの鼻にかけた「ホ」のような音が僅かに続き(ほとんど「ォ」しか聞こえない)、letは最後のtを発音せずに「レ」となる。tがなければ「ル」となる。
だからフランス語だと考えれば、Chevroletをシボレーと読むのはおかしいことでもなんでもないそうだ。正確には「シェヴォレ」がよりフランス語の発音に近いカタカナ表記となる。
さて疑問のもうひとつである「シェビー」という呼び方はいったいなんなのか?
これは単純に、多くのアメリカ人がフランス語由来のシボレーをうまく発音できないから、ということだそうで……。
自国を代表する名門ブランドの名前をうまく発音できず、愛称で呼んでしまうなんていかにもアメリカらしい話だ。ちなみにアメリカのブランド名や車名には意外とフランス語由来のものが少なくなく、有名なところではキャデラックが挙げられる。デトロイトを開拓したフランスの貴族出身の探検家であるアントワーヌ・カディヤック(Antoine Cadillac)さんにちなんで命名されたという。そういえばデトロイトという地名だってフランス語だ。
アメリカの自動車産業におけるフランス系移民の存在感の高さがうかがえるエピソードである。